心
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 07:33 UTC 版)
多義的用法
"心"の広がりは、深く、広く、 感じるままに、思うがままに、 哲学の海、心理の森を旅する。 広辞苑は以下のようなものを挙げている。
概説
歴史概観
古代中国では、心は心臓、腹部、胸部に宿っていると考えられていた[1]。 旧約聖書では心に相当する語としてはヘブライ語lebが用いられ、旧約がギリシャ語に翻訳されることになった時、ギリシャ語で心臓を意味する「kardia」が選ばれ[1]、それは広まった。 古代ギリシャのアリストテレスは自著『ペリ・プシュケース』において[注釈 2]プシュケー、すなわちこころや魂や命について論じた。心をモノのひとつの性質・態と考え「モノの第一の"エンテレケイア"」と呼び、こころとからだはひとつであり、分離できるようなものではない、とした。
東洋では陸象山が「宇宙は便ち是れ吾が心、吾が心は即ちこれ宇宙」また「心は即ち理なり」として、「心即理」の宇宙の理やそれと一体化した吾が本心を内観によって把握しようとした。天台宗は、心には地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界があるとした。これを十界論と言う。(→東洋における心の理解)
17世紀の自然哲学者デカルトは「心は心で物は物」と完全に分断する論法(「デカルト二元論」)を展開した。(→心の哲学で参照可)
また主として存在論的な観点については、現在でも「心の哲学」という分野で様々な議論が行われており、様々な立場がある。(詳細については心の哲学を参照のこと。)
現代でも世界の人々の大半は「心」と言う場合、人間を人間らしく振舞わせる事を可能にしている何か、を想定している。
西洋における心の理解
聖書
聖書(旧約聖書)におけるleb[注釈 3](eの音が長く、レーブ)というヘブライ語は、日本語の「心」に一致している点が多い[1]。イスラエル人にとっても、lebは心臓を意味するだけでなく、感情、記憶[2]、考え、判断[3]などの座とされた。旧約聖書がギリシャ語に翻訳されることになった時、このlebの訳語に、ギリシャ語で心臓を意味する「kardia」が当てられた[1]。こうして、kardiaはヘブライ語lebの意味も担いつつ 新約聖書で広い意味を与えられることになった[1]。心は容姿などと対比される人間の内面性全てを含み、人格全体を表したり、特に人間の良心、あるいは、神が人間と関わる場、人間の宗教的態度の決まる場[4]、として登場する[1]。なお、救いは旧約の『エゼキエル書』において「新しい心」の授与として約束されていた[5][1]とされる。
西洋哲学
西洋哲学でも心を扱ってきた。
ギリシャ語のpsyche プシュケーはもともとは息を意味している[1]。そのpsycheがやがて心や魂も意味するようになり、また《動く力》や《生命力》なども意味するようになった[1]。
「心はどこにあるのか」という疑問について言えば、バビロニアでは肝臓にあるとする説があり、ヒポクラテスは心は脳にあるとし、プラトンは脳と脊髄にこころが宿っていると考えた[1]。アリストテレスは心臓にそれを求め、その考えは中世に至るまで人々に影響を与えた[1]。その後こころは脳室にあると考えられるようになり17世紀まで人々から支持されるようになったという[1]。
カントやメルロ・ポンティによる現象学、またヴィトゲンシュタインの言語分析などが、心と身体に関する哲学的な新領域を開拓した[1]。また、ロックやヒュームやコンディヤックらの哲学的考察が、時代を経て、やがて《心の学》としての心理学へとつながってゆくことになった[1]。
最近でも心を巡ってさかんに哲学的な議論は行われている。その領域を心の哲学という。
心理学
現代において、人の心の働きを研究する学問のひとつに心理学があり、初期は内観から始まった。古典的な説をいくつか紹介すると、ジークムント・フロイトは「心では抑圧された願望が意識のなかに持ち込まれないように様々な心理機制の働きを借りようとしている」ととらえ、心の範囲を無意識にまで拡大し、自由連想法を体系化し、彼の治療法を精神分析と名付けた[1]。カール・グスタフ・ユングは個人的無意識と集団的無意識があるとし、後者は全ての人間に共通のものとして人々の人格の基礎に伝わるものだ、とした[1]。こうして人間の心は次第に多層的に理解されるようになった[1]。現代の心理学では、以上のような古典的な説とは異なった観点で、人の反応を厳密な統計的手法で解析してもいる。様々な手法がある。
注釈
- ^ 他人の心情や身の上などに心を配ることやその気持ちを指すこと
- ^ 翻訳としては、アリストテレス著、桑子敏雄訳『心とは何か』 講談社学術文庫、1999年 ISBN 978-4061593633 など。
- ^ 発音を正しく表記するにはeの上に横棒を書く
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 『新カトリック大事典 第2巻』研究社、2002年。
- ^ 『申命記』 4:9
- ^ 『ヨシュア記』14:7
- ^ 『ローマ人への手紙』10:9-10
- ^ 『エゼキエル書』 36:25-26
- ^ 並川孝儀『スッタニパータ ―仏教最古の世界』岩波書店、ISBN 4000282859
- ^ 中村元『ブッダのことば―スッタニパータ』岩波文庫、1958、ISBN 4003330110
- ^ アントニオ・ダマシオ『生存する脳―心と脳と身体の神秘』講談社、2000。など
- ^ a b モーガン・フリーマン 時空を超えて 第2回「死後の世界はあるのか?」
- ^ ダニエル・ゴールマン『EQ こころの知能指数』講談社、1998
- ^ http://www-formal.stanford.edu/jmc/whatisai/whatisai.html
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