ハッブル宇宙望遠鏡とは? わかりやすく解説

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ハッブル‐うちゅうぼうえんきょう〔‐ウチウバウヱンキヤウ〕【ハッブル宇宙望遠鏡】

読み方:はっぶるうちゅうぼうえんきょう

宇宙観測するために、1990年米国スペースシャトル使って高度610キロ地球周回軌道打ち上げた口径2.4メートル反射望遠鏡。名称は天文学者E=Pハッブルにちなむ。HSTHubble Space Telescope)。

ハッブル宇宙望遠鏡の画像
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた渦巻銀河NASA
ハッブル宇宙望遠鏡の画像

ハッブル宇宙望遠鏡 Hubble Space Telescope(HST)


ハッブル宇宙望遠鏡

大気や天気に左右されない宇宙空間で活躍

望遠鏡発明により、天文学飛躍的な発展をとげました。しかし、いかに望遠鏡サイズ大きくしても、地上あるかぎり地球の大気制約天候の影響を受けるので、決し理想的な観測を行うことはできません。そこで、地球大気の外に望遠鏡設置すれば、これまでにない天体像を得られるではないかという構想のもとにつくられたのが「ハッブル宇宙望遠鏡」です。この宇宙望遠鏡は、「宇宙膨張している」ことを発見したアメリカ天文学者ハッブルにちなみ「ハッブル宇宙望遠鏡」と名づけられ、1990年4月24日スペースシャトル・ディスカバリー号によって宇宙設置されました。ハッブル宇宙望遠鏡は現在も運用されており、私たち宇宙さまざまな発見驚きもたらしてくれています。


重さ11t、主鏡の直径2.4mの巨大な宇宙天文台

ハッブル宇宙望遠鏡はアメリカ1990年地球周回軌道上に運んだ光学望遠鏡です。形態は、長さ13.1m、 重さ11t、 主鏡直径2.4mで、宇宙に浮かぶ巨大な天文台いえます。この望遠鏡97分で地球を1周し、寿命15年とされています。このハッブル宇宙望遠鏡との通信は、人工衛星を介しておこなわれています。ハッブル宇宙望遠鏡によって得られデータは、観測提案者がいる場合にはその提案者渡され、ほかの科学者1年間はそれを使えませんが、1年後には世界中科学者利用できるように公表されます。ハッブル宇宙望遠鏡は世界で唯一の宇宙望遠鏡であり、その成果は、地球上すべての人々のためにあるという理念のもとに運用されているのです。


シャトル飛行による修理など多くのトラブルを克服

ハッブル宇宙望遠鏡は1986年夏に飛び立つ予定でしたが、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故により延期され4年後の1990年にようやく打ち上げられました。ところが、当初、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像ピンぼけで、地上大望遠鏡を使って撮影した天体の姿と大差なく、期待大きく裏切るものでした。その後太陽電池パネルデータ記録装置故障するなどのアクシデント見舞われ災難続きました。しかし、1990年ピンぼけ修正するソフトの開発によって画像処理ができるようになり、続いて1993年には、スペースシャトル・エンデバー号の飛行士たちが、宇宙空間での船外活動により望遠鏡修理成功させました1994年1月13日修理後送られてきた画像は、それまでに目にしたことのない鮮明な画像でした。以後、この望遠鏡とらえたものの多く新たな発見をよび、遠方宇宙に浮かぶ新し種類銀河発見することもできました。いまでもハッブル宇宙望遠鏡はすばらし映像届けてくれています。
ハッブル宇宙望遠鏡は2003年までに4回の修理ミッションが行われ、5回目修理ミッション予定されいました。ところがコロンビア号事故のために、そのミッションキャンセルされました。しかしその後科学界などからの強い要望があり、NASA2008年5回目修理ミッションを行うことを決定しました。この修理成功すれば2013年まで観測可能になります


数々の業績を支える観測機器

NASAESA共同プロジェクトであるハッブル宇宙望遠鏡の活躍により、地上からでは観測できない多く天体発見されています。その能力の高さは、搭載され数々観測機器によって支えられています。ハッブル宇宙望遠鏡の主な観測機器は、広角/惑星カメラ2、宇宙望遠鏡撮像分光器近赤外カメラ天体分光器微光天体カメラなどです。

サービスミッションにより、最新の機器が取り付けられる

広角/惑星カメラ2(WF/PC2)は、1993年12月スペースシャトルによるサービスミッションで、打ち上げ当初から搭載されていたWF/PC1と交換したもので、3つの広角カメラ1つ惑星カメラ構成されており、近赤外から遠紫外領域精密なイメージを得ることができますまた、このカメラは、アメリカのパロマー山にあるヘール望遠鏡より、100倍も暗い銀河天体をも観測することができます
宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)は、1997年2月のサービスミッション時に新しく取り付けられスペクトル観測装置で、天体化学的成分温度視線速度回転速度地場などといった特性調べることができます
近赤外カメラ天体分光器(NICMOS)も1997年2月のサービスミッション時に新しく取り付けられ赤外線観測装置で、3つのカメラから構成されています。この装置は非常に低い温度維持する必要があるため、液体窒素によって冷却されます。しかし、その液体窒素打ち上げ時に予想以上に膨張しカメラ1つ所定位置から押し出してしまっており、観測されイメージピンボケの状態となってしまいましたその後2002年3月冷却装置交換され観測再開しました
微光天体カメラ(FOC)は、非常に暗い天体観測することができます観測した光より10万明るイメージ作り出すことができますが、非常に高感度なため、正確に観測できるのは通常21等級それより明る天体減光させるためのフィルター通して20等級までです。
2002年3月には新しく掃天観測用高性能カメラ(ACS)をとりつけました。WFPC2(Wide Field Planetary Camera 2)と比べ視野が2倍、解像度が2倍、感度は4倍です。波長域は紫外線から可視光線近赤外線一部までと広範囲わたってます。2007年1月電気系統異常によって、停止してます。
2008年スペースシャトル行われる予定修理ミッションでは新しく紫外線分光器(COS)とワイドフィールドカメラ3(WFC3)をとりつけます。WFC3近紫外線から可視光近赤外線までの広範囲での観測が可能で、解像度飛躍的に向上する予定です。

木星と土星のオーロラ

1997年9月には、木星土星オーロラをとらえました。この画像は、新たに取り付けられSTIS(宇宙望遠鏡撮像分光器)を使って紫外線光を撮影したもので、両極の上空でリング状のオーロラを見ることができます

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた木星のオーロラ
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた木星オーロラ

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた土星のオーロラ
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた土星オーロラ

星の最期

1997年12月には、星の最期様子をとらえました。それによると、星雲状のガスその最後輝き見せるとき、さまざまな形をとることがわかりました。さらに1998年3月には、太陽同じくらいの質量をもつ様子恒星最期様子鮮明な画像送ってきています。この恒星(NGC7027)は地球から約3,000光年離れたはくちょう座方向にあり、画像では星から水素ヘリウム宇宙空間放出される様子と、中心に死んでいく星が白く輝く点として見えてます。

ハッブル宇宙望遠鏡が1998年3月にとらえたNGC7027
ハッブル宇宙望遠鏡が1998年3月とらえたNGC7027

巨大なブラックホール

1998年5月には、地球から約1,000万光離れたところにある巨大な銀河ケンタウルスA」の姿をとらえました。この銀河のもっとも明るく輝いている中心部には、太陽10億倍もの質量をもつブラックホールがあると考えられ生まれたばかりの無数の青白く輝く星がそのまわりガスチリオレンジ色輝かせています。

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた「ケンタウルスA」
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたケンタウルスA」


ハッブル宇宙望遠鏡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/06 02:01 UTC 版)

ハッブル宇宙望遠鏡(ハッブルうちゅうぼうえんきょう、: Hubble Space Telescope、略称:HST)は、グレートオブザバトリー計画の一環として1990年4月24日に打ち上げられた、地上約600km上空の軌道上を周回する宇宙望遠鏡である。名称は、宇宙の膨張を発見した天文学者エドウィン・ハッブルに因む。長さ13.1メートル、重さ11トンの筒型で、内側に反射望遠鏡を収めており、主鏡は直径2.4メートルである。地球の大気や天候による影響を受けないため、地上からでは困難な高い精度での天体観測が可能。


注釈

  1. ^ 地上での画像・情報解析技術は向上している。

出典

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「ハッブル宇宙望遠鏡」の続きの解説一覧

ハッブル宇宙望遠鏡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 04:13 UTC 版)

Orbiter」の記事における「ハッブル宇宙望遠鏡」の解説

現実ハッブル望遠鏡模したモデルであり、Orbiterではスペースシャトル「アトランティス」とともに用いられる

※この「ハッブル宇宙望遠鏡」の解説は、「Orbiter」の解説の一部です。
「ハッブル宇宙望遠鏡」を含む「Orbiter」の記事については、「Orbiter」の概要を参照ください。

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