【SY-1】(えすわいいち)
NATOコード:CSS-N-1 スクラブブルッシュ
中国が1959年に旧ソ連から供与されたP-15「テルミート(telmit)」をコピーして開発された対艦ミサイル。
上游1や飛龍1(FL-1)とも呼ばれる。
誘導方式はアクティブレーダー誘導で、主に江滬級フリゲートや小型ミサイル艇などのほか、陸上車両(牽引式の発射機)に搭載される。
また、様々な派生型が開発された。
現在では、後継のYJ-8などに更新されているため、搭載する艦艇は少数となっている。
主な搭載艦艇
黄蜂型(21型)ミサイル艇
旅大型(52型)駆逐艦
江滬I型(053H/H1/HE型)フリゲート
江滬II型(053H1Q型)フリゲート
江滬V型(053H1G型)フリゲート(改装前)
スペックデータ
- SY-1
全長:5.8m
直径:76cm
翼幅:2.4m
重量:2,300kg(ブースター付き)
射程:50km
最大速度:マッハ0.85
推進装置:液体燃料ロケットモーター
弾頭:HE(510kg)
誘導方式:アクティブレーダー誘導(終末時)
- HY-1
全長:6.6m
直径:76cm
重量:2,300kg
射程:85km
最大速度:マッハ0.8
推進装置:液体燃料ロケットモーター
弾頭:HE(513kg)
誘導方式:アクティブレーダー誘導(終末時)
- SY-2
全長:6m
直径:54cm
重量:1,720kg
射程:50km
最大速度:マッハ0.9
推進装置:固体燃料ロケットモーター
弾頭:HE(365kg)
誘導方式:アクティブレーダー誘導(終末時)
- HY-2
全長:7.36m
直径:76cm
重量:3,000kg
射程:95km
最大速度:マッハ0.9
推進装置:固体燃料ロケットモーター
弾頭:HE(513kg)
誘導方式:アクティブレーダー誘導(終末時)
- HY-4/XW-41
全長:7.36m
直径:76cm
重量:2,000kg
射程:220km/300km
最大速度:マッハ0.83
推進装置:ターボジェット
弾頭:HE(513kg)
誘導方式:アクティブレーダー誘導(終末時)
誘導装置:高周波アクティブレーダーシーカー
- FL-7
全長:6.6m
直径:54cm
重量:1,800kg
射程:32km
最大速度:マッハ1.4
推進装置:液体燃料ロケットモーター
弾頭:HE(365kg)
誘導方式:アクティブ・レーダー誘導(終末時)
派生型
- 上游1A/甲(SY-1A)
SY-1の改良型。
- 海鷹1(HY-1)
1981年から開発が始まったSY-1の改良型。
飽和攻撃能力を有しているほか、SY-1よりも低い海面上15mの高度を巡航する事が出来る。
NATOコードではCSS-C-2 シルクワームと呼ばれ、西側諸国ではこちらの名称が有名である。
主に旅大型駆逐艦に装備されたが、現在はYJ-8への置き換えが進行中でSY-1は徐々に退役が進んでいる。
- HY-1A
HY-1の改良型。
- 上游2(SY-2)
SY-1の改良型として開発された対艦ミサイル。
輸出型は飛龍2(FL-2)と呼ばれ、NATOコードではCSS-N-3 Seersuckerと呼ばれる。
推進装置が液体ロケットエンジンから固体ロケットエンジンに変更されている。
終末誘導にはIバンド・アクティブレーダー誘導または赤外線誘導を使用する。
1990年代中頃には射程距離が130kmまで延び、ターボジェット・エンジンを装備したSY-2Aが開発されている。
- 海鷹2(HY-2)
SY-2の改良型。
輸出型はC-201と呼ばれ、NATOコードではCSS-N-5 Sabotと呼ばれる。
胴体を延長して燃料搭載量を増やし、射程がSY-1より若干延びている。
実戦では1987年10月にイラクが輸出型であるC-201を発射し、アメリカ国籍のタンカー2隻が撃破されている。
- HY-2A
HY-2の赤外線誘導型。
- 海鷹4(HY-4)
海鷹2をベースに開発された対艦ミサイル。陸上発射型のみ。
輸出型はC-401と呼ばれ、NATOコードではCSS-C-7 Sadsackと呼ばれる。
推進装置をターボジェットエンジンに換装した他、新型の高周波アクティブレーダーシーカーを装備した。
改良型として射程距離が300kmまで延伸し、GPSを装備して誘導精度を高めたXW-41が開発されている。
- 飛龍7(FL-7)
上游2(SY-2)の発展型として開発された超音速対艦ミサイル。
1999年の北京軍事パレードで初めて公開された。
HY-3と比べるとかなり小型化・洗練化されている。
最高速度はマッハ1.4で射程距離は約30km、主に地上の発射器で運用される。
- 鷹撃6(YJ-6)
HY-2の空中発射型。
輸出型はC-601と呼ばれ、NATOコードではCAS-1 Krakenと呼ばれる。
主にH-6爆撃機の翼下に搭載される。
- C-611
YJ-6の射程延伸型。
- 空地63(KD-63)
YJ-6をベースに開発された空対地ミサイル。
射程200km。H-6爆撃機の翼下に搭載される。
20-デオキシサリノマイシン
P-15 (ミサイル)
種類 | 短距離対艦ミサイル |
---|---|
製造国 | ソビエト連邦 |
性能諸元 | |
ミサイル直径 | 0.75m |
ミサイル全長 | 5.8m(P-15) 6.5m(P-15M) |
ミサイル翼幅 | 2.75m |
ミサイル重量 | 2,125kg(P-15) 2,573kg(P-15M) |
弾頭 | 454kg HE |
射程 | 46 km (25 nmi)(P-15) 80 km (43 nmi)(P-15M) |
推進方式 | ブースター: 固体燃料ロケット サステナー:液体燃料ロケット |
誘導方式 | 中途航程:オートパイロット 終末航程:ARH |
飛翔速度 | マッハ0.9 (298 m/s) |
P-15 テルミート(ロシア語: П-15 «Термит»)は、1950年代にソビエト連邦で開発された短距離対艦ミサイル。愛称はロシア語で「白蟻」や「テルミット」の意味。
GRAUインデックスは4K40。西側諸国においては、アメリカ国防総省(DoD)識別番号としてはSS-N-2、NATOコードネームとしては「スティクス」と呼ばれた。
概要
開発は、小型艦艇に対してミサイルによる対水上火力を付与する要請に従って1955年より第155設計局(OKB-155)において着手され、1957年には第2-155設計局(OKB-2-155)の独立に伴ってこちらに引き継がれた。また、ロケットの専門家であるイサエフ設計官も作業に加わった。同年10月には最初の試射が行われ、1959年には183R型小型ミサイル艇(コマール型)、1960年には205型大型ミサイル艇(オーサ型)に搭載されて配備が開始された。同年、ソ連海軍は正式にミサイルを受領した[1]。
動力としては、発射時に用いるブースターとしては固体燃料ロケットが、巡航時に用いるサステナーとしては液体燃料ロケットが用いられる。ミサイル発射機は4S30と称されており、発射時には15度の仰角をとる。発射後、ミサイルはブースターによって45度の角度で約450フィート (140 m)まで上昇する。その後、高度400メートルで巡航に入る。計画段階ではこの航程において指令誘導を受ける計画であったが、これは実現しなかった。なお、巡航高度は100、150、200、250、300メートルから選ぶことができるが、気圧高度計によって調節されるため、シースキミング飛行は不可能である。その後、目標の予定座標から6海里 (11 km)のところでアクティブ・レーダー・ホーミング誘導装置が作動を開始する。事前に設定された6パターンの周波数のうち1つで捜索を行い、もっともレーダー反射断面積が大きい目標に対して突入する。少なくとも、初期のモデルにおいては移動目標と固定目標の識別は不可能であった。上記の通り、本機はシースキマーではないため、終末航程はダイブのみである[1]。
その後、1961年には改良型のP-15U(SS-N-2B)が実用化された。これは、翼を折りたたみ式にするとともに誘導装置に改良を加えており、のちには赤外線誘導にも対応した。これらはP-20として輸出にも供された。1970年には、更に改良されたP-15M テルミートM(SS-N-2C)も登場した。これは、高度計を電波高度計にすることで巡航高度を25-50メートルに低空化するとともに、射程を80kmに延伸した。こちらはP-21またはP-22として輸出された。また、1970年代末には、沿岸砲兵用として、P-15Mから派生した「ルベーシュ」(SS-C-3)も開発された[1]。
なお、艦上に配置される射撃指揮システムとしては、当初はXバンドのMR-331 ラングアウト(ロシア語: МР-331 «Рангоут»; NATOコードネーム:スクエア・タイ)レーダーを採用したKLON システムが採用されており、その後、P-15Uにおいては、「ガルプン」(ロシア語: «Гарпун»; NATOコードネーム:プランク・シェイブ)を用いるコレルによって更新された[1]。
配備
実戦運用
ソ連製P-15の主な使用は以下の通りである。
- 1967年10月21日:エジプトがイスラエルに対して発射。アレキサンドリア港外にてエジプト海軍205号計画型(NATOコードネーム:オーサ型)ミサイル艇が、イスラエル海軍駆逐艦「エイラート」を撃沈(エイラート事件)。
- 1971年:インドがパキスタンに対して発射。
- 1973年10月7日:シリアがイスラエルに対して発射(ラタキア沖海戦)。
- 1980年-1988年:イランがイラクに対して発射。
中国製に関しては、イラン・イラク戦争において全種類使用されている。
運用国
- ソビエト連邦海軍
- ロシア海軍
- ウクライナ海軍
- アルジェリア海軍
- アンゴラ海軍
- ブルガリア海軍
- 中国人民解放軍海軍
- キューバ海軍
- インド海軍
- イラク海軍
- リビア海軍
- 朝鮮人民軍海軍
- ポーランド海軍
- ルーマニア海軍
- ソマリア海軍
- シリア海軍
- ベトナム人民海軍
- イエメン海軍
- エジプト海軍
中国での発展
中国は、1958年にソ連からの供与を受け、少なくとも4種の派生型を開発した。そのうち、中国で生産された艦船発射型はNATOコードネームでCSS-N-1 ScrubbrushやCSS-N-2と区別された。一方、その派生型であるHY-1とHY-2は沿岸防衛用として運用された。このタイプのミサイルの他の名前としては、SY-1、FL-1などがある。中国による命名の特色として、仕様が同じでも国内用と輸出用とで名称が異なっている。
参考文献
- ^ a b c d Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. pp. 534-536. ISBN 9781557502629
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