動力方式
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列車は鉄道車両と呼ばれる旅客または貨物、あるいはその両方を輸送することができる車両から編成される。 列車は伝統的に機関車によって牽引される。これを動力が機関車に集約されていることから動力集中方式という。これは、列車の前部に1両以上の動力付き車両が配置されるもので、列車の全重量を牽引するのに十分な牽引力を発揮する。この形態は貨物列車では依然として支配的な方式となっており、旅客列車でもよく使われている。日本では寝台特急の廃止が相次ぎ動力集中方式の旅客列車は姿を消しつつある。また、機関車を2両以上連結して列車を牽引する重連運転も動力集中式となる。この方式では折り返しの際に機関車を反対側に付け替える機回しが必要であるため折り返しに時間が掛かっており、この欠点を解消し折り返し時間の短縮を図る目的で列車の前後に機関車を配置するプッシュプル方式が存在している。プッシュプル方式は準動力集中方式とも呼ばれ、ヨーロッパではHSTやICE 1などの高速列車でこの方式が採用されている。日本では旅客列車でプッシュプル方式を採用しているのは大井川鐵道井川線を除くと奥出雲おろち号や嵯峨野観光鉄道などの観光鉄道に限られている。 動力集中方式に対し、編成内の複数の車両に動力を持つ列車のことを動力分散方式と呼ぶ。これには電車や気動車が含まれる。動力分散方式の列車では電動機やディーゼルエンジンなどの動力を持つ車両を電動車あるいは動力車 (M、Motorの略)、持たない車両を付随車 (T、Trailerの略) と呼ぶ。編成における動力車と付随車の比率をMT比と言い、動力車1両・付随車2両の3両編成なら1:2あるいは1M2Tというように表される。基本的に動力分散方式では編成の前後に運転台があり動力集中方式の欠点である機回しの必要が無いほか、動力集中方式の列車よりも起動加速度を高くすることができ、各駅停車などの加減速を頻繁に行う列車では所要時間の大幅な短縮が可能となる。しかしながら、モーターやエンジンを客室の真下に積むことから騒音や振動によって乗り心地を損なったり、動力の搭載数が多いことから製造費・維持費が動力集中方式に比べ高いなどの欠点も存在する。動力分散方式は海外では主に高速列車に使用される方式であるが、日本ではほとんどの旅客列車が動力分散方式を採用している。また、貨物列車でも動力分散方式を採用している列車が少数ながら存在し、日本ではJR貨物のM250系が動力分散方式の貨物列車となっている。
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動力方式
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「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の記事における「動力方式」の解説
使用される車両には動力分散方式が採用されている。編成は、10両編成のうち動力車を1・5・6・10号車とし、4M6Tとなっている。ディーゼル発電機にて発電した電力と、蓄電池の電力とを組み合わせて、三相誘導電動機をVVVFインバータ制御により駆動させるシリーズ式ハイブリッドシステムである。このハイブリッドシステム(主変換装置および主電動機、2、4、9号車の走行用リチウムイオン蓄電池)は東芝が製作したものである。 主回路の構成は、最初にディーゼル発電機からの交流440 V・60 Hzは整流装置で直流600 Vに変換する。その後はIGBT素子により、2レベル三相電圧形PWM制御インバータ装置によるVVVFインバータ制御により三相交流に変換して、センサレスベクトル制御により三相誘導電動機を駆動させる方式としている。また、整流装置とインバータ装置との間に、直流電圧600 V・容量40 Ahの主回路用リチウムイオン蓄電池が接続されており、インバータ装置には主回路蓄電池の充電用にチョッパ制御機能が付いている。主回路の制御装置はインバータ装置1基で電動機1基を制御する1C1M構成を1群とし、それを2群としたユニットを2つ搭載している。三相誘導電動機は1両に4台搭載されている。主回路の制御装置の素子の冷却方式は、走行風自冷方式から水冷方式に変更されている。これにより、装置自体の外形寸法が体積比で92 %の削減となり、大幅に小形軽量化された。また、それに付属するフィルタ回路も同様に水冷方式に変更することで、装置全体の小形化が図られている。このため、制御装置を空調装置と並べて屋根上に搭載することが可能となった。また、ディーゼル発電機と主回路用蓄電池には、自動消火装置を設置して火災に備えている。 ディーゼル発電機は、JR西日本の気動車で既に実績がある、電子式燃料噴射制御のSA6D140HE-3形ディーゼルエンジンに出力400 kVAのWDM115形発電機を直結させている。エンジン回転数1,800 rpm(毎分1,800回転)で、発電機からの出力電圧と周波数は交流440 V・60 Hzの一定となっている。これを、床下の車体中央部に、2つのエンジン冷却装置とともに燃料タンクを挟んで2台搭載している。2台は並列運転され、動力車の駆動に必要な電力に加え、列車の空調装置や照明装置などの負荷に供給する電力も供給している。そのため、サービス電源の発電セットは搭載されていない。 これらの動力装置類を、1・10号車となる展望室車のキイテ87、6号車となる食堂車のキシ86、5号車となるラウンジ車のキラ86の4両の動力車に集中配置させており、客室に寝室がある付随車にこれらの動力装置類を配置しないことで、車内の静粛性を図っている。 リチウムイオン蓄電池は、万が一の発火などを考慮して、動力車の隣に連結された付随車のキサイネ86の床下に搭載されており、力行時での電力アシストやエンジン発電機停止中の力行用の電源として使用可能である。また、この蓄電池は回生ブレーキ時での回生電力による充電のほか、惰行時にはエンジン発電機からの電力を充電することが可能となっている。また、蓄電池の冷却方式にはヒートパイプ式を採用している。 主電動機は、直流600 V用として、内部の清掃などを大幅に低減できる、全閉式の三相かご形誘導電動機のWMT108形であり、出力は130 kWである。車両に搭載するぎ装時での寸法の制約から、省スペース化を図るため固定子の磁極のコイルの巻き数を低減させている。また、固定子の極数を4極から6極にすることで、必要な性能を確保している。 ブレーキ方式は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用している。応荷重制御、遅れ込め制御、車輪の滑走を検知して再粘着させる滑走制御のほか、直通予備・救援・耐雪・抑速ブレーキを備えている。電空ブレンディング制御により、停止するまで回生ブレーキによる電気ブレーキでの制動が可能である。また、基礎ブレーキで使用される、ブレーキシリンダーの圧力制御や、車輪の滑走による滑走再粘着制御は、軸単位ではなく台車単位で行われる。 車両の制御回路は、最新の伝送線による伝送制御ではエンジン制御や発電制御などに新規に開発する必要があるため、従来の指令線を使用している。そこに、機器状態の表示や、運転士・車掌支援・検修支援、サービス機器を操作できる、モニター装置を取付けた構成としている。
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