フロンテ
車名はスズキのフロンティア精神を表すとともに、機構のフロントエンジン、フロントドライブにちなむ。初代モデルは1962年3月の発売、スズライト・フロンテTLAといった。59年7月に生産を開始したライトバンTLをベースにした2ドアセダンで、エンジンは強制空冷2ストローク2気筒、360cc・21ps(5500rpm)を搭載。3速MTを介して85km/hが可能とされた。FF駆動、車重500kg、定員4名。東京店頭渡し価格は38万円だった。
63年5月、マイナーチェンジ、FEAへと発展した。エンジンオイルがガソリン混合ではなく、セルミックスと呼ぶ分離型になった。インレットマニホールドにオイルを送り込む方式だった。ミッションも4速MTに進化した。65年4月、オイルの潤滑方式がクランク注油潤滑になり、10月にはCCI(シリンダークランクインジェクション)へと変わり、車名もFEA-Ⅱになった。エンジン出力は22ps/5000rpmにアップ。
67年6月、フルモデルチェンジ、2代目はいわゆるコークボトル・ラインに生まれ変わった。25psの2ストローク空冷直列3気筒356ccエンジンをリヤに搭載、4速MTにより110km/hを公称した。2ドアで、スーパーデラックス(東京店頭渡し価格37万7000円)。デラックス(同34万7000円)、スタンダード(同32万2000円)の3タイプがあった。
68年11月、スポーティなSSを発売。最高出力36ps/7000rpm、最大トルク3.7kg-m/6500rpmの高性能エンジンを積み、最高速度125km/h、0→400m加速19.95秒と発表した。東京店頭渡し価格は38万7000円。69年7月、S、SSスタンダードを追加。Sは25psエンジン、SSスタンダードは36psエンジンを載せ、東京店頭渡し価格はそれぞれ37万7000円と34万2000円。このとき、エステートも発売。ライトバンを乗用車化したもので2ドア。37万2000円だった。
70年4月、マイナーチェンジとともに最強モデルSSSを発売した。36psエンジン搭載で、価格は39万3000円。同時に標準エンジンを31ps/34ps仕様にアップ、燃料タンク容量を23Lから28Lに拡大した。6月にはバン・ベースのFR車、カスタムを追加した。フロンテのワゴン版ともいえるモデルだった。
70年11月、“71”にチェンジした。リヤエンジン方式に変更はなかったが、一転して角張ったスタイルとなり、角型2灯ヘッドランプに変わった。ホイールベースが2010mmと長くなった(コークボトル型フロンテのホイールベースは1960mmだった)。エンジンは旧型と同じ31ps仕様を載せた。3代目。
71年5月、エンジンを水冷化した。車種としては71GT-W、71GL-Wがあり、前者は37ps、後者は34psエンジンを搭載。東京店頭渡し価格は、43万3000円と42万1000円。11月、マイナーチェンジ。ラジエーターグリルが2分割となり、72シリーズと呼ぶようになった。ビジネス、ゴージャス、スポーツの3シリーズに分化した。
72年10月、大幅マイナーチェンジで、フードをノーズアップし、ヘッドランプを角から丸に変更、3角窓を廃した。標準タイプの最上級車GC-Wやスポーツタイプの高性能車GT-WタイプHを設定した。
73年7月、フルモデルチェンジ、4代目に進んだ。2ドア車のほか、初めて4ドア車を加えた。丸っこいスタイルで、リヤにガラスハッチがあった。水冷・2ストローク3気筒・356ccエンジンをリヤに積み、ノーマル版の最高出力は34psだが、FTとGTタイプⅡには37psエンジンを載せた。GTタイプⅡの東京店頭渡し価格は46万7000円(2ドア)、4ドアFTは47万5000円だった。75年型として、いったんガラスハッチを廃止するが、76年型のマイナーチェンジで復活した。
360cc時代最後のフロンテの寸法は、ホイールベース2030mm、全長2995mm、全幅1295mm、全高1280(GT系)/1300mmだった。
76年6月、エンジン排気量が550ccとなる新軽規格に対応するモデルとして、フロンテ7-Sシリーズを発売した。5代目。リヤにマウントしたエンジンは2ストローク3気筒の443ccで、全タイプ26ps仕様だった。寸法ではホイールベース2030mmは変わらず、全長3190mm、全幅1395mm、全高1300mmとなった。ボディは基本的に旧型と同じ。2ドアと4ドア車があり、ガラスハッチを備えていた。
77年5月、2ストロークエンジンでは難しいとされていた昭和53年排ガス規制に適合した。6月、51年排ガス規制適合の新規格エンジン、4ストローク2気筒547ccエンジンを積んだモデルを発売。型式名がAB10となっており、ダイハツ製だった。それは、76年1月、鈴木自動車(当時)がトヨタと業務提携し、独自の排ガス対策エンジンが間に合わない場合、ダイハツがつくる希薄燃焼550ccエンジンの供給を受けられる、という契約によるものだった。この時点でフロンテ7-Sは、2ストローク3気筒443ccエンジンと4ストローク2気筒547cc・28psのダイハツ製エンジンを併売することになった。10月、マイナーチェンジ。4ドア車のサイドスクリーンを拡大した。
79年5月、フルモデルチェンジで6代目へ進化。初代と同じFF車に変わったことが最大の変更点だった。このとき商用車アルトも発売、スタイリングは同じだが、フロンテは4ドア車、アルトは2ドア車と差別化をはかった。アルトは初代モデルだが、47万円という低価格で注目を集めた。
6代目のボディは5ドアハッチバックスタイルで、エンジンは4ストローク3気筒・SOHCの543cc・31ps(新開発)と2ストローク3気筒539cc・28psの2機種があった。ミッションは4速MTで、東京標準価格はFS(4ストローク)、FX(2ストローク)で同一の56万8000円。
81年10月、電子制御の2速AT車を発売し、82年2月にはサンルーフ仕様を追加した。
84年9月、7代目に変わった。スタイリングは旧型を丸っこくしたような形になり、5ドアハッチバック車で、リヤクォーター・ウインドウのあることが新型の目印だった。水冷4ストロークSOHC・3気筒543cc・31psエンジンを積み、ミッションは4&5速MT、2速ATを組み合わせていた。新型には、60度回転して乗り降りの楽な回転ドライバーズシート、6モードのフルエアミックス空調、フルフラットシート、リヤシートのリクライニングなどを採用した。この頃は軽ボンバンが主流で、アルトには4WD車やターボ車など、力の入った新バリエーションがあったが、フロンテにはなかった。
87年1月、商用アルトに既採用の3気筒DOHC・543cc・40psエンジンを載せた3ドアハッチバック車を追加。分割式リヤシートを備えていた。ルーフスポイラーを付け、フロンテ・ツインカムといった。ちなみに、2月には、軽初のツインカムターボエンジンを搭載した、商用タイプのアルト・ワークスが登場した。最高出力64ps/7500rpmを誇った。
88年9月、フルモデルチェンジ、8代目誕生。商用アルトも同時に新しくなった。アルトは3ドア、5ドア、スライドドアタイプがあったが、フロンテは5ドアタイプだけ。ハッチバックボディで、ホイールベースは2335mmに延び、居住空間を広げた。フロンテ用のエンジンはSOHC・40psだった。
スズキ・フロンテ
(フロンテ から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 05:09 UTC 版)
フロンテ (Fronte) は、鈴木自動車工業(現・スズキ)が生産していた軽自動車である。なお、本項目ではフロンテシリーズの基本形となるセダンを中心に記述し、フロンテハッチを含む商用モデル(ライトバン)についても記述する。
注釈
出典
- ^ スズキ四輪車 車名の由来
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- ^ 【東京モーターショー05】スズキ LC は軽より小さくてピッタリ - Response.(2005年09月30日(金) 07時23分版 / 2015年7月8日閲覧)
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