スズキ・フロンテ 2代目 LC10型(1967年 - 1970年)

スズキ・フロンテ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 05:09 UTC 版)

2代目 LC10型(1967年 - 1970年)

スズキ・フロンテ360(2代目)
LC10型
SS
スーパーデラックス
アウトストラーダ走行テスト車両
概要
製造国 日本
販売期間 1967年6月 - 1970年10月[6]
ボディ
乗車定員 4人[7]
ボディタイプ 2ドアセダン[8]
3ドアバン[8]
駆動方式 RR[6]
パワートレイン
エンジン 0.356 L 空冷2サイクル直列3気筒横置き
燃料供給:キャブレター
最高出力 25 ps/5,000 rpm
最大トルク 3.7 kgm/4,000 rpm
変速機 4MT[8]
サス前 前:ダブルウィッシュボーン
+コイルスプリング[8]
後:セミトレーリングアーム式サスペンション
+コイルスプリング
サス後 前:ダブルウィッシュボーン
+コイルスプリング[8]
後:セミトレーリングアーム式サスペンション
+コイルスプリング
車両寸法
ホイールベース 1,960 mm
全長 2,995 mm[8]
全幅 1,295 mm[8]
全高 1,330 mm
車両重量 425 kg
その他
データモデル デラックス 4速MT 1967年式
テンプレートを表示

2代目は、車名が「フロンテ360」となり、駆動方式をRRに、コラムシフトからフロアシフトに変更[9]。ボディタイプは2ドアセダンと3ドアバンの2種類で、車体後部のオーバーハング部分に搭載されたエンジンは、将来的に高出力化を見越して、2輪車のエンジンをベースに新開発された2ストロークの直列3気筒だった[8]。3つのシリンダーはそれぞれ独立した構造となり、高い冷却性能を保持しており、回転のバランスは、理論上4ストローク直列6気筒と同等で、快適なフィーリングと高回転でのパワーを両立させたこのエンジンを搭載したことで、ライバル車に対して大きな優位性を持った[8]

インパネ周りのステアリングは、スポーティデザインで、正面に大型のコンビネーションメーターが配されている[10]

当時のエンジンルームは、後車軸の更に後ろ側にオーバーハングして搭載されたエンジンが、空気の流れを整えるためにカバーで覆われている[11]。。

年表

  • 1967年(昭和42年)
    • 1月[7] - 生産開始。
    • 6月 - 発売。
    • 10 - 12月 - 月産3,000台を予定していたところ、この3カ月で2万6,281台と、目標の3倍の数字を叩き出す大ヒットとなる[6]
      • その後も月産8,000台以上をキープし、ホンダやダイハツ、スバルも「打倒フロンテ」を目指して次々と新型車を投入するようになった[8]
  • 1968年(昭和43年)
    • 8月 - アルミシリンダーの新型エンジンの性能と耐久性をアピールするため、SSのプロトタイプを2代仕立てて、イタリアの高速道路「アウトストラーダ・デルソル(太陽の道)」でのテストを行った[11]
      • 元F1ドライバーのスターリング・モスと2輪レーサーの伊藤光夫をドライバーに迎え、当時速度無制限だった約750kmの行程を、6時間6分間ノートラブルで走破[11]。これは平均速度122.44km/hであり、途中で134.1km/hもマーク[11]。これはSSの公称最高速度120km/hを超えるものだった[11]
    • 11月 - 高性能バージョン「SS」を追加。エンジンは、キャブレターをシリンダーごとに一つずつ、合計3つ装備し、圧縮比を高めることにより、ノーマル比+11psを達成している[8]
      • また、そのハイパワーに対応するため、シリンダーブロックはアルミ製とし、冷却効率も高められ、こうした改良の結果、SSの性能は最高速度125km/h、0-400mの加速タイムが19.95秒という、軽自動車としては驚異的なものとなり、4速MTながら全般にシンクロナイザーを装備したが、本来は高速回転が苦手な2ストロークエンジンをレッドゾーンである8,400rpmまで回すために、低回転域は犠牲になった[8]
      • 4,000rpm以下のトルクは実用的ではなく(タコメーターは3,500rpm以下がイエローゾーンとされた[12])、ドライバーは常に高回転を維持する必要があったため、販売店では、市街地での扱いにくさをしっかりと説明するように求められていた[8]
  • 1970年(昭和45年)
    • 4月 - 「SSS」を追加。この時、標準エンジンも馬力が向上している[8]
      • インパネはダッシュボードが木目調となり、メーターも3連丸型に変更されている[10]
    • 10月 - 生産・販売終了。排出ガス規制により、わずか3年でフルモデルチェンジとなったが、軽自動車の歴史に確固たる地位を築いた一台となった[6]

フロンテバン LS10/LS11/LS20

スズキ・フロンテバン
概要
販売期間 1969年 - 1973年
ボディ
乗車定員 4人
ボディタイプ 3ドアハッチバック
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 0.356L 空冷2サイクル直列3気筒縦置き
最高出力 25ps/6,500rpm/105km/h
最大トルク 3.5kgm/5,000rpm
変速機 4速シンクロメッシュ
サス前 前:マクファーソンストラット
後:半楕円リーフ
サス後 前:マクファーソンストラット
後:半楕円リーフ
車両寸法
ホイールベース 1,995mm
全長 2,995mm
全幅 1,295mm
全高 1,380mm
車両重量 500kg
最大積載量 150kg
テンプレートを表示

1969年1月登場。スズライトTLではセダンとバンは共通設計で、駆動方式も共に横置きFFであったが、フロンテ360がRRとなったことで、商用車ライトバン)への流用に不都合が生じた。スバル360カスタムがリアエンジンのまま後部を荷室に変更したため積載性に難があったのに対して、スズキはフロンテの名で全く構成の異なるバンを新規に開発することで解決を図った。フロンテバン(LS10型)は荷室容積と登り勾配のトラクション確保が容易なFRが採用された。エンジンもフロンテ360のLC10型英語版をベースにしながら、縦置きに設計変更された。スタイルはコークボトルラインのフロンテ360に対して直線基調のプレーンなスタイルとされた。後にこのモデルでは後席の居住性を高めた乗用モデルのフロンテ・エステート(LS11型)が追加された。さらに1970年、エステートをベースにテールゲートを廃したカスタム/ハイカスタム(LS11型)も追加。1972年には、水冷版フロンテバン(LS20型)が登場した。外観はそのままであるが、エンジンは3気筒水冷のLC10W型に変更され、28psと馬力も上がった。後ライトのグリルやウィンカーランプの位置やテールランプなどが変更された。1973年4月、フロンテハッチ(LS30型)にフルモデルチェンジし生産を終了した[13]


注釈

  1. ^ スズキ公式サイト内では「造語」扱いである。[1]
  2. ^ 昭和53年排出ガス規制には対応しておらず、昭和51年排出ガス規制適合車として発売された。

出典

  1. ^ スズキ四輪車 車名の由来
  2. ^ a b c d e f g h i デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第16号23ページ。
  3. ^ 【東京モーターショー05】スズキ LC は軽より小さくてピッタリ - Response.(2005年09月30日(金) 07時23分版 / 2015年7月8日閲覧)
  4. ^ a b c d スズライト・フロンテ360(1962年1月〜1967年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月19日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第16号24ページ。
  6. ^ a b c d デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第18号3ページ。
  7. ^ a b フロンテ360(1967年1月〜1970年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月19日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第18号4ページ。
  9. ^ 360cc軽自動車のすべて―'50ー'70年代の軽自動車総集編!. 三栄書房. (2013). pp. 67. ISBN 9784779618963 
  10. ^ a b デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第18号5ページ。
  11. ^ a b c d e デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第18号6ページ。
  12. ^ フロンテSS”. 名車文化研究所 (2020年9月14日). 2023年9月13日閲覧。
  13. ^ フロンテバンシリーズ - SUZUKI DIGITAL LIBRARY
  14. ^ a b c デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第12号23ページ。
  15. ^ デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第7号21ページ。
  16. ^ a b c d フロンテ71(1970年1月〜1973年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月19日閲覧。
  17. ^ a b c d e f g h デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第12号24ページ。
  18. ^ デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第7号22ページ。
  19. ^ a b フロンテ71(1970年1月〜1973年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月19日閲覧。
  20. ^ 360cc軽自動車のすべて―'50ー'70年代の軽自動車総集編!. 三栄書房. (2013). pp. 91. ISBN 9784779618963 
  21. ^ a b c d e f デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第14号23ページ。
  22. ^ a b c d e フロンテ(1973年1月〜1979年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月19日閲覧。
  23. ^ a b c d e f g h i j k デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第14号24ページ。
  24. ^ a b フロンテ(1973年1月〜1979年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月19日閲覧。
  25. ^ フロンテハッチ-2 - (続)ボール紙の車庫(仮)
  26. ^ 車名の横の記号について〜認定型式と通称型式〜 - バイクの系譜
  27. ^ a b フロンテハッチ-4 - (続)ボール紙の車庫(仮)
  28. ^ フスズキ・フロンテハッチのページ - (続)ボール紙の車庫(仮)
  29. ^ a b c d e f g h デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第42号21ページ。
  30. ^ a b c d フロンテ(1979年1月〜1984年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月21日閲覧。
  31. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第42号22ページ。
  32. ^ a b c d デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第19号23ページ。
  33. ^ スズキ、パキスタンで四輪車累計生産200万台を達成”. suzuki ニュースリリース (2018年11月26日). 2023年6月10日閲覧。
  34. ^ a b c フロンテ(1984年1月〜1988年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月22日閲覧。
  35. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第19号24ページ。
  36. ^ スズキ フロンテ FGタイプ”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月22日閲覧。
  37. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車 第20号26ページ。
  38. ^ a b c d e f フロンテ(1988年1月〜1989年1月)”. トヨタ自動車のクルマ情報サイト-GAZOO. トヨタ自動車株式会社. 2023年3月23日閲覧。






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