美容外科学 日本における美容外科の問題点

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美容外科学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/25 05:53 UTC 版)

日本における美容外科の問題点

安全性に関する問題

日本における美容外科の歴史において、美容外科が正式な医療行為であるとの認知に比較的時間がかかったのは、それが健康な身体に外科的侵襲を加える行為であるのに対して、安全性の確立が不十分であったことが一つの大きな要因としてある。

実際、初期の美容外科治療においては、豊胸術や顔の若返り術と称して、皮下に直接ゲル状のシリコンを注入し、合併症を引き起こしたり、隆鼻術と称して解剖学的に無謀なプロテーゼ(シリコン樹脂を板状に加工したもの)の挿入を試み、プロテーゼが後年に皮膚を突き破って出てくる症例などが散見された。

日本では、厚生労働大臣の許可を受けた場合のみ標榜することができる診療科麻酔科のみであり、医師免許を有していれば、誰でも「美容外科医」を名乗ることができる。この「自由標榜制」は、世界的に見ても特異な制度である[2]

よって、経験の浅い医師の稚拙な技術や、ずさんな管理体制での施術により死に至ったり、機能障害の発生や、非可逆的な身体への侵襲を受けるケースも多くみられる。大手美容外科などの脂肪吸引での死亡事故や[3]、広範囲におよび皮膚皮下組織の壊死が起こった例[4]、豊胸手術の際の麻酔のミスで遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)になってしまうなどの医療事故[5]わきがの治療での麻酔による死亡など、このような医療事故は現在に至っても定期的に起こっている[6]

なお、国民生活センターには、現在美容医療機関での危害の報告が年間200~300件ほど寄せられている[7]

また保険外診療が中心の美容外科で使用される薬剤や挿入物などの安全性についても懸念されている。それらの使用物は通常、医師が自身の判断で個人輸入し使用している。ボトックスなどは未承認のものが使われるケースが9割以上であり、未承認薬は、医薬品医療機器等法に基づき販売されている承認薬に比べよりリスクが高いと厚生労働省は注意を促している[8]豊胸手術用の乳房インプラントに関しては厚生労働省はいずれも薬事承認しておらず、安全性に関して保障していない[9]

他、フィラーを注射しての「プチ整形」を巡り、後遺症や痛みが残ったなどとして訴訟に発展するケースも相次いでいる。フィラーに用いられる医薬品が未承認であることも少なくなく、専門家はトラブルに注意を呼び掛けている[10]

契約に関する問題

全国の消費生活センターには、美容外科医院でのトラブル事例が多く寄せられており、取引の適正化がされていない現状が明らかになった。

「手術は早いほうがよい」などと契約を急かされたり、「ひどい状態で深刻」などと不安を煽り手術を勧める、長時間の勧誘やキャッチセールスをしたりするケースもあり、利用者が断ると値引きやクレジットの利用を進めるなど、強引な契約例が多数あるという。解約を申し出ると「解約できない」と説明される、または高額な解約料を請求されたというケースも見受けられる。

副作用・手術のリスクについてや、効果が出ない場合などの十分な説明(インフォームド・コンセント)がされていないケースも見られ、健康保険適用の疾患(包茎など)の場合、健康保険の適用外であるとの説明を受けていないなどの例もあった。このように施術内容やリスクについての説明だけでなく、価格等の契約上の説明も不十分であったり、説明そのものが行われていない場合も多い[1]。内閣府消費者委員会は二度、厚生労働大臣に改善のための対応を求める建議を行っているが、トラブルは減っていない[11]

広告に関する問題

昨今では美容外科医院のテレビCMを見る機会も珍しくなくなった。美容整形を受け、人生が変わったという女性達を特集する番組さえある。マスメディアはしきりに美容外科ブームを煽り、経済的にさほど余裕のない大多数の人間に対しても「美容整形は素晴らしい」としきりに焚きつける[12]

美容外科医院では、雑誌フリーペーパーでキャンペーン価格を広告し、安さを強調している事例が見られる。これらの広告は、医療法景品表示法上問題があるとされる。医療法の医療広告ガイドラインでは、費用を強調した広告は禁止されている。美容医療のような自由診療の場合、広告できる施術内容は保険診療と同一の手術や、医薬品医療機器等法の承認を得た医療機器等を使用している場合に限られている。

標準的な金額を広告するようにも定められているが、広告を見て美容クリニックに出向くと、広告の料金では効果的でないと言われ、高額な施術の提示を受けたというケースなどは、医療広告ガイドラインに違反する可能性がある。また、毎月雑誌広告等で通常価格の半額等のキャンペーンを行っているようなケースでは、通常価格での販売実績がなければ景品表示法上、問題がある。

インターネットやインターネット広告(バナー検索連動型広告など)においても、比較広告など医療広告ガイドラインに違反するおそれのある広告が多く見られる。これらのネット広告は急激に増え、2009年には雑誌広告を抜く数となった。医療機関のホームページは、キャンペーン価格、比較広告、芸能人などを載せていても、医療広告と見なされず規制の対象ではないとされ、早急な対応策が望まれていたが[1]、2012年1月に厚生労働省は、これらの対象外であったインターネット広告を禁止する方針を発表した。

内閣府の調査によると、美容外科医院を選ぶ際、3人に1人が体験談、5人に1人が施術前後の写真が決め手になったとしている。しかし相次ぐ宣伝にまつわるトラブルの増加を問題視した厚生労働省は、2012年1月、美容外科医院のウェブサイトでのいわゆる「ビフォーアフター」写真や、「芸能プロダクション提携クリニック」や「キャンペーン今だけ○○円」などといった表現を、ウェブサイト上に掲載することを禁止する方針を決めた[13]


  1. ^ a b c 『高額な施術の契約をせかす美容医療サービス』国民生活センター、2010年7月、PDFファイル
  2. ^ 田中秀一 『医療危機を乗り越えるために-改革はどうあるべきか-』2010年
  3. ^ “品川美容外科・脂肪吸引で女性死亡 内臓損傷10カ所 2度目の捜索 月内に立件へ”. 産経新聞. (2011年3月9日). http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110309/crm11030912440019-n1.htm 2012年1月18日閲覧。 
  4. ^ 脂肪吸引術後に感染を生じた1 例』
  5. ^ 東京都地方裁判所 裁判例情報 第11664号損害賠償請求事件
  6. ^ わきが治療 麻酔ミスで死亡させた医師を書類送検へ 『毎日新聞』 2000年12月08日
  7. ^ 独立行政法人 国民生活センター 『各種相談の件数や傾向・美容医療サービス』
  8. ^ しわ取り注射気をつけて 未承認薬が9割・健康被害例も 医師団体通知『朝日新聞』平成22年6月17日 朝刊
  9. ^ NPO日本乳房インプラント研究会 『日本乳房インプラント研究会の設立』
  10. ^ プチ整形 訴訟相次ぐ フィラー注射で後遺症や痛み 毎日新聞 2018年10月7日
  11. ^ 「美容医療」トラブルに男性も巻きこまれる背景 | 災害・事件・裁判” (日本語). 東洋経済オンライン (2019年12月25日). 2019年12月25日閲覧。
  12. ^ 井上静 『華麗なる美容外科の恐怖』 鹿砦社 2010年7月 ISBN 978-4846307462
  13. ^ “美辞麗句躍る美容クリニックHP 体験談や写真が決め手に”. 産経新聞. (2012年1月15日). http://sankei.jp.msn.com/life/news/120115/trd12011515300007-n1.htm 2012年1月18日閲覧。 
  14. ^ 日本能率協会総合研究所 MDB市場情報レポート「美容整形」抜粋版
  15. ^ 「美容整形大国」韓国 [リンク切れ] 2007年6月24日朝鮮日報
  16. ^ “世界に名だたる美容整形大国「韓国」その歴史は20年”. コリアワールドタイムズ. (2020年6月29日). https://www.koreaworldtimes.com/topics/news/7489/ 2020年8月25日閲覧。 
  17. ^ 2007年10月18日聨合ニュース [リンク切れ] (朝鮮語)
  18. ^ 2010年6月6日 朝鮮日報
  19. ^ a b 申昌浩、井上章一(編)、2008、「韓国整形美人事情」、『性欲の文化史』2、 講談社〈講談社選書メチエ〉 ISBN 9784062584258pp.94-95.




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