水素イオン指数 pHの読み方と由来

水素イオン指数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 01:21 UTC 版)

pHの読み方と由来

pHの読みは、「ピーエッチ」[10][11]、「ピーエイチ」(英語読み[12])、または「ペーハー」(ドイツ語読み[12])などである。pH測定方法を規定する日本の工業規格 (JIS Z 8802) の定める読みは、「ピーエッチ」または「ピーエイチ」である[13]計量法では「ピーエッチ」のみと定められている[14][15]

pHの由来には次のように諸説ある。

言語名 語源とされる語句 出典
英語 potential of hydrogen 『新和英中辞典』[16]、『ジーニアス英和辞典[17]
英語 power + H(symbol for hydrogen) 『The Concise Oxford Dictionary 』, p.892, 8th edition, 1990, Oxford University Press
フランス語 pouvoir Hydrogène 『新英和中辞典』[18]
フランス語 potentiel d'Hydrogène 『ディコ仏語辞典』[19]
ドイツ語 Potenz H オックスフォード英英辞典[20]
ラテン語 pondus hydrogenii [要出典]

記号と単位

IUPACは、水素イオン指数という名称を使わず、「pH」を物理量の名称としても、物理量の記号としても用いている[21]。また、pHは単位の付かない(単位が1の)無次元量である、としている[21]。それに対して日本の計量法は、「pH」は水素イオン濃度の計量単位「ピーエッチ」の単位記号である、と定めている[22]

本項目では、原則としてIUPACにならって、水素イオン指数をpHと呼び、その記号をpHで表し、その値には単位を付けない。計量単位としての「ピーエッチ」については、「計量法におけるピーエッチ」節で述べる。

水溶液の液性

水溶液の液性は、液体に含まれる水素イオン H+水酸化物イオン OH の多寡で決まる。液体中に存在する H+ の数が OH の数よりも多いとき、その水溶液は酸性を示す。逆に、H+ の数が OH の数よりも少ないとき、アルカリ性を示す。H+ の数が OH の数とちょうど同じときは、酸性でもアルカリ性でもなく、中性である。

溶液の酸性がそれほど強くないとき、その溶液を弱酸性溶液という。溶液のアルカリ性がそれほど強くないとき、その溶液を弱アルカリ性溶液という。酸性とアルカリ性の境目のpHは、明確に定まる。それに対して、強酸性と弱酸性、弱酸性と中性、中性と弱アルカリ性、弱アルカリ性と強アルカリ性のそれぞれの境目は、曖昧である。科学的にはこれらを分ける境界線は存在しない。法令などでは、便宜上、適当なpHで線を引いてこれらを分類する。一例として、家庭用品品質表示法における漂白剤合成洗剤石鹸などの液性を示す用語とpH範囲を表に示す。

雑貨工業品品質表示規程における漂白剤・洗剤などの液性[23]
液性 pHの範囲
酸性 pH < 3.0
弱酸性 3.0 ≦ pH < 6.0
中性 6.0 ≦ pH ≦ 8.0
弱アルカリ性 8.0 < pH ≦ 11.0
アルカリ性 11.0 < pH

日本の温泉の分類では、液性を示す用語はこの表と同じであるがpH範囲が異なり、中性と弱アルカリ性の範囲が狭くなっている。詳しくは「泉質#液性による分類」を参照のこと。

以下の表は、身近な液体のうちから酸性またはアルカリ性を示すものをいくつか選んで、pHの低い順に並べたものである。この順序は絶対的なものではない。水に溶けている塩基の濃度によりpHは変化するので、濃度によって順序は入れ替わる。また、表の1列目に示したpHの値は、大まかな目安である。

身近な液体のpH
pH 液体 酸性・アルカリ性の強さ 酸または塩基
0未満 鉛蓄電池の電解液 とても強い酸性 H2SO4
0 10%硫酸日本薬局方 希硫酸) とても強い酸性 H2SO4
1 胃液 とても強い酸性 HCl
2 レモンの果汁 強い酸性 クエン酸
3 やや強い酸性 酢酸
4 ミョウバン やや弱い酸性 [Al(H2O)6]3+[注釈 1]
5 コーヒーブラック(砂糖・ミルク抜き) 弱い酸性 数種のカルボン酸
6 雨水 わずかに酸性 CO2
7 純水 中性
8 海水 わずかにアルカリ性 CO2, HCO3
9 ホウ砂水 弱いアルカリ性 ホウ砂
10 石鹸 やや弱いアルカリ性 脂肪酸Na, 脂肪酸K
11 アンモニア水 やや強いアルカリ性 NH3
12 石灰水 強いアルカリ性 Ca(OH)2
13 家庭用塩素系漂白剤、カビ取り剤 とても強いアルカリ性 NaOH
14 4%水酸化ナトリウム水溶液 とても強いアルカリ性 NaOH
14以上 アルカリ乾電池の電解液 とても強いアルカリ性 KOH

リトマス試験紙

リトマス紙

水溶液の大まかな液性は、リトマス試験紙(リトマス紙)で調べることができる。青色のリトマス紙で試験すると、酸性か否かが分かる (赤色を示せば酸性)。赤色のリトマス紙で試験すると、アルカリ性か否かが分かる (青色を示せばアルカリ性)。青色と赤色の両方のリトマス紙を用いれば、酸性・中性・アルカリ性のいずれであるかを判定することができる。

リトマス紙では、pHの数値までは分からない。pH試験紙を用いると、pHの数値を知ることができる。pHメーターを用いて計測すると、さらに詳しい数値を知ることができる。


注釈

  1. ^ [Al(H2O)6]3+H+ + [Al(OH)(H2O)5]2+
  2. ^ H2O の活量が1から大きくずれるような濃厚水溶液では 14.00 = pH + pOH + log10aH2O となる。
  3. ^ 英語: reference electrode
  4. ^ これらのpHの値は一次測定により得られる典型値 (typical values) であって、定義値ではない。

出典

  1. ^ Sørensen (1909), p. 159.
  2. ^ 『理化学辞典』【水素イオン指数】。
  3. ^ 『世界大百科事典』【pH】。
  4. ^ a b 化学の原典』 p. 69.
  5. ^ 左巻 (2011), pp. 192–193.
  6. ^ 左巻 (2011), pp. 195–196.
  7. ^ a b c d グリーンブック (2009) pp. 90-91.
  8. ^ a b c JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)用語番号4345(2013年改正)。
  9. ^ a b c Covington et al. (1985), p. 534.
  10. ^ 明鏡国語辞典、p.1372 「ピーエッチ」、初版第一刷、2002-12-01、大修館書店
  11. ^ 小学館ランダムハウス英和大辞典、p.1937、パーソナル版第3刷、1979-04-27、小学館
  12. ^ a b 水町 (2003) p. 20.
  13. ^ a b c d JIS Z 8802 pH測定方法(2011年改正).
  14. ^ 計量法 別表第三。
  15. ^ 計量単位令 別表第三。
  16. ^ Martin Dollick, David P. Dutcher, 田辺宗一, 金子稔『新和英中辞典』研究社、2002年9月、第5版、1524頁。ISBN 9784767420585
  17. ^ 小西友七・南出康世『ジーニアス英和辞典 第4版』大修館書店、2006年12月20日、第4版、1447頁。ISBN 9784469041705
  18. ^ 竹林滋東信行・諏訪部仁・市川泰男 編『新英和中辞典』研究社、2010年12月、第7版、1349頁。ISBN 9784767410784
  19. ^ 山田𣝣・宮原信 監修『ディコ仏語辞典』白水社、2003年3月10日、第1版、1154頁。ISBN 9784560000380
  20. ^ pH”. Oxford Dictionaries. オックスフォード大学出版局. 2016年2月2日閲覧。
  21. ^ a b グリーンブック (2009) p. 84.
  22. ^ 計量法 別表第三、計量単位令 別表第三、計量単位規則 別表第二。
  23. ^ 雑貨工業品品質表示規程 消費者庁
  24. ^ Lim (2006), p. 1465.
  25. ^ Nordstrom & Alpers (1999).
  26. ^ 渡辺 正ほか『新版 化学I』大日本図書
  27. ^ a b 吉村 (1968).
  28. ^ a b 大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎「第20章 酸・塩基の強さ」の水のイオン積より算出。
  29. ^ 赤木 (2005) p. 197.
  30. ^ 赤木 (2005) p. 245.
  31. ^ Bates & Guggenheim (1960), p. 163.
  32. ^ 田中 (1971) p.76.
  33. ^ 化学便覧』 表 9.32.
  34. ^ 化学便覧』 表 9.33.
  35. ^ 田中 (1971) p.79.
  36. ^ 垣内、山本 (2016), p. 186.
  37. ^ Senanayake (2007) Tables 1, 2.
  38. ^ a b Nordstrom et al. (2000), p. 255.
  39. ^ 化学便覧』 表 11.49.
  40. ^ a b 垣内 2014, p. 101.
  41. ^ Licht (1985), p. 515.
  42. ^ 水町 (2003) p. 21.
  43. ^ a b Covington et al. (1985), p. 539.
  44. ^ Buck et al. (2002), p. 2170.
  45. ^ Buck et al. (2002), p. 2198.
  46. ^ 計量単位令 別表第3項番5、濃度、ピーエッチ、「モル毎リットルで表した水素イオンの濃度の値に活動度係数を乗じた値の逆数の常用対数」
  47. ^ 濃度の計量単位、4)ピーエッチ (pH) MST、計装豆知識、1995年11月号
  48. ^ 計量単位規則 別表第2 濃度、ピーエッチの欄、「pH」
  49. ^ JIS B 7960-1 ガラス電極式水素イオン濃度計−取引又は証明用−第1部:検出器、JIS B 7960-2 ガラス電極式水素イオン濃度計−取引又は証明用−第2部:指示計(2015年改正)。
  50. ^ a b JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)用語番号 355(2014年改正)。






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