欧州連合の政治 法的根拠

欧州連合の政治

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/02 16:51 UTC 版)

法的根拠

欧州連合の構成上の根拠やその組織は基本条約に基づくものである[1]。とくにその中核となっている2つの条約は幾度の修正が加えられ、欧州連合の権能を強化したり、その機関のあいだにおける関係を再設定したりしてきた。基本条約において欧州連合は間接民主制を基礎とすることがうたわれており、また人間としての尊厳の尊重、自由、民主主義、平等、法の支配、マイノリティに属する人びとの権利を含む人権の尊重という価値観を基礎とするものとしている。

法人としての欧州連合とその運営を担う機関は基本条約によって授権されている。ところが欧州連合としての支配権はこういった機関に授けられておらず、究極的な支配権は加盟国政府に与えられている。ただ欧州連合が権能を付与されている分野においては、欧州連合が加盟国に対して拘束力を持つ直接的な法令を制定することができる。

権能

欧州連合の加盟国はほとんどの連邦制国家のように、欧州連合に明らかに委譲していないすべての権限を保持している。ところが一部の分野では欧州連合が排他的な権能を持たず、その分野では支援的な役割を果たすにとどまっている。分野によって権限の様態が異なるのである。たとえば外交や防衛に関する案件では、欧州議会の役割は小さいものとなっており、理事会において多数決ではなく全会一致で決定することになっている。

排他的権限 共有的権限 支援的権限
欧州連合は法令で前もって定められている場合において、指令を作り、国際協定を締結する排他的権限を有する。 加盟国は欧州連合が権限を行使した分野においては、自らの権限を行使することができない。 欧州連合は加盟国の行動を支援、調整、補完するような行動を実行することができる。
  • 域内市場
  • 基本条約で定められているような社会政策
  • 経済・社会・領域における結合
  • 農業、海洋生物資源の管理を除く漁業
  • 環境
  • 消費者保護
  • 運輸
  • 欧州横断ネットワーク
  • エネルギー
  • 自由・安全・司法の領域
  • 基本条約で定められているような公衆衛生における共通の安全対策
  • 人間の健康の保護と改善
  • 工業
  • 文化
  • 観光
  • 教育、青少年、スポーツ、職業訓練
  • 市民保護(防災)
  • 行政上の協力

法令

欧州連合が制定した法令は加盟国の法令に優先する。欧州連合が成立させることのできる拘束力を持つ法令の形態には、加盟国において直接的に法律としての効果を持つ規則、目的の枠組みを定め、加盟国の法令がその目的に合致するようにさせる指令、特定の案件にのみ適用される決定の3つがある[2]


  1. ^ The EU at a glance > Treaties and law” (英語). EUROPA. 2010年3月28日閲覧。
  2. ^ Glossary > Community legal instruments” (英語). EUROPA. 2010年3月28日閲覧。
  3. ^ Introduction > Use of the euro” (英語). European Central Bank. 2010年3月28日閲覧。
  4. ^ The Schengen area and cooperation” (英語). EUROPA. 2010年3月28日閲覧。
  5. ^ The EU Battlegroups” (PDF) (英語). European Parliament (2006年9月12日). 2010年3月28日閲覧。
  6. ^ Parliament's powers and procedures” (英語). European Parliament. 2010年3月28日閲覧。
  7. ^ Decision-making in the European Union” (英語). EUROPA. 2010年3月28日閲覧。
  8. ^ Welcome to the European Parliament” (英語). EUROPA. 2010年3月28日閲覧。
  9. ^ van Grinsven, Peter (2003年). “The European Council under Construction 'Clingendael'” (PDF) (英語). Netherlands Institute of International Relations. 2010年3月28日閲覧。
  10. ^ The Council of the European Union” (英語). EUROPA. 2010年3月28日閲覧。
  11. ^ a b The European Commission” (英語). EUROPA. 2010年3月28日閲覧。
  12. ^ 欧州連合条約第17条第7項
  13. ^ European Political Parties & Groups in the European Parliament” (英語). EurActiv.com. 2010年3月28日閲覧。
  14. ^ Kreppel, Amie (2002年). “The European Parliament and Supranational Party System” (PDF) (英語). Cambridge University Press. 2010年3月28日閲覧。
  15. ^ MEPs Advanced Search” [欧州議会議員 (MEP) 詳細検索] (英語). 欧州議会. 2020年6月9日閲覧。 “閲覧時点 (2020年6月) でPolitical groups (政党) の絞り込み検索選択肢として、Group of the European People's Party (Christian Democrats): 欧州人民党グループ (EPP)、Group of the Progressive Alliance of Socialists and Democrats in the European Parliament: 社会民主進歩同盟 (S&D)、Renew Europe Group: 欧州刷新 (旧ALDE)、Group of the Greens/European Free Alliance: 欧州緑グループ・欧州自由連盟 (Greens-EFA)、Identity and Democracy Group: アイデンティティ・民主 (ID)、European Conservatives and Reformists Group: 欧州保守改革グループ (ECR)、Confederal Group of the European United Left - Nordic Green Left: 欧州統一左派・北方緑の左派同盟 (GUE-NGL)、Non-attached Members: 無所属が挙げられている。”
  16. ^ Financial Perspective 2007?2013” (PDF) (英語). Council of the European Union (2005年12月17日). 2010年3月28日閲覧。
  17. ^ Kanter, James (2006年1月30日). “Poles block EU deal on lower VAT” (英語). The New York Times. 2010年3月28日閲覧。
  18. ^ Mulvey, Stephen (2005年6月1日). “Varied reasons behind Dutch 'No'” (英語). BBC NEWS. 2010年3月28日閲覧。
  19. ^ Draft report on division of powers” (PDF) (英語). European Parliament (2002年2月6日). 2010年3月28日閲覧。
  20. ^ Q&A: EU enlargement” (英語). BBC NEWS (2007年1月1日). 2010年3月28日閲覧。





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