不法無線局
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/19 22:55 UTC 版)
概要
電波資源は有限であり、その性質上、各人が自由に使用した場合、お互いに混信や妨害を与え、正常な通信ができなくなるなどのトラブルを招く恐れが大きいため、電波の使用が他者の不利益とならないよう、また、限られた周波数帯を用途別などに整理するため、国際電気通信連合による世界的な管理・監督が行われている。
日本では、電波法により総務省が使用を規制している。その大要は、
- 無線局を開設しようとする者は、原則として免許[2]または登録[3]を必要とする。例外となるのは
- 免許または登録に際しては、総務省令無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準または基幹放送局の開設の根本的基準に適合することが審査される
ことである。
不法無線局は、これらの行政手続きを行わず、勝手に開設される無線局である。免許または登録を受けずに送信機をアンテナに接続し電波が発射できる状態にしていれば、実際に発射しなくても不法無線局を開設していることになる。従って、「免許が不要な無線傍受のみが目的である」といった理由で刑罰を免れる事はできない。また、正規に免許または登録を受けた無線局であっても有効期限を経過してしまえば不法無線局となる。
不法無線局はかつて、
の三種類が多数を占め「不法三悪」と言われてきた。
- 「不法三悪」の語がインターネットアーカイブで確認できる最古のものは、1997年(平成9年)の北海道電気通信監理局の広報資料[7]にある。以後も地方電気通信監理局や総合通信局の資料に見られる。広報誌『総務省』では2011年6月号[8]、電波利用ホームページでは2013年(平成25年)1月[9]、情報通信白書では平成25年版[10]が最古に確認できるものである。
不法三悪の無線局は、通信距離を向上させるため大出力の送信機用増幅器(ブースター、リニアアンプ)を設けて運送用車両に搭載されることが多く、道路沿線での電子機器への電波障害や正規の無線局に妨害を与えるため大きな社会問題となり、警告するために特別業務の局の一種である規正用無線局が免許[11]されている。 また、不法三悪のような不法開設の多い周波数帯の不法無線局は特定不法開設局と、特定不法開設局に使用されるおそれのある無線機は指定無線設備と規定され[12]、 これらの無線機の小売業者は指定無線設備小売業者として「免許を申請する必要があり、免許が無いのに使用した場合は刑事罰に処せられる。」ことを呈示しなければならないことが義務付けられている[13]。 この規定に違反した業者は必要な措置を講ずべきことを指示することができる、つまり行政指導の対象となるが、この指示にあたっては経済産業大臣の同意を得なければならない[14]とされる[注 1]。
- 指定無線設備は、電波法施行規則に不法三悪の無線機と800MHz帯(プラチナバンド)の電気通信事業者以外が設置する携帯電話・PHS中継装置が規定されている[15]。
- アマチュア無線では、広域レピータが通信妨害され、レピータ管理団体がフォックスハンティングの手法で探知すること[16]もあった。
総務省は、不法三悪による重要無線通信等への混信・妨害が減少する一方で、電波法の技術基準に適合していない機器(不適合機器と呼んでいる。)による混信・妨害が問題となっていると分析している。免許が不要な微弱電波と称しながら基準を上回る出力を発射する機器のことである。同様にインターネット等による輸入・販売により外国規格の機器が流通しているがこれを抑制することも課題であるとしている[10]。
この不適合機器は次のようなものである。
- 技適マークの無い2.4GHz・5.6GHz帯ラジコン送信機
- これ以外の周波数帯は、微弱無線局であるので技適マークは無い。
- 携帯電話等を妨害電波により抑止するための無免許の通信機能抑止装置
- 外国規格のトランシーバー(Family Radio Service (FRS)やGeneral Mobile Radio Service (GMRS))
- 通信距離が向上するように改造した無線LANやキーレスエントリーの送信機、
- 無線式盗聴器
- 外国仕様の野生生物生態調査用ビーコンや、猟犬に装着するドッグマーカー
注釈
出典
- ^ 監視FAQQ14 違法局という言葉も聞きますが、違法局と不法局との違いは?(関東総合通信局 - 電波環境)を参照
- ^ 電波法 第4条 - e-Gov法令検索
- ^ 電波法 第27条の18第1項 - e-Gov法令検索
- ^ 電波法施行規則 第6条第1項第1号 - e-Gov法令検索
- ^ 海外から持ち込まれる携帯電話・BWA端末、Wi-Fi端末等の利用 総務省電波利用ホームページ - その他
- ^ 技適未取得機器を用いた実験等の特例制度 総務省電波利用ホームページ - その他
- ^ 不法無線局防止のための重点対策の実施結果について -不法三悪ゼロ・プログラムの実施-(北海道電気通信監理局 平成9年広報資料 12月9日付) - ウェイバックマシン(1999年2月19日アーカイブ分)
- ^ 『総務省』2011年6月号(総務省 - 広報誌)(2011年6月7日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project (PDF) 13頁
- ^ 不法無線局の特徴(総務省電波利用ホームページ - 電波監理の概要)(2013年1月15日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project1
- ^ a b 第2部第5章第3節情報通信政策の展開(3)電波利用環境の整備ウ 電波の混信・妨害の予防(総務省情報通信統計データベース - 情報通信白書)
- ^ 平成23年総務省告示第225号 電波の規正に関する通報を送信する局の運用(電波産業会 - 情報提供業務) - ウェイバックマシン(2016年3月4日アーカイブ分) (PDF)
- ^ 電波法 第102条の13 - e-Gov法令検索
- ^ 電波法 第102条の14 - e-Gov法令検索
- ^ 電波法 第102条の15 - e-Gov法令検索
- ^ 電波法施行規則 第51条の2 - e-Gov法令検索
- ^ 『不法局探索に新兵器登場!!』JR1WA管理団体(CQ ham radio 1991年5月号 p.373)
- ^ 報告書 各種様式のファイル I1 電波法第80条の報告(東海総合通信局)
- ^ “総務省|関東総合通信局|メールによる相談”. 総務省. 2022年1月14日閲覧。
- ^ “ビジネスパーソンが知っておくべき110番の基礎知識”. ITmedia エンタープライズ. 2022年1月16日閲覧。
- ^ 電波法 第5条第3項第1号 - e-Gov法令検索
- ^ 電波法 第42条第2号 - e-Gov法令検索
- ^ 電波法 第79条第1項第1号 - e-Gov法令検索
- ^ 海外で販売されているトランシーバーについて(モトローラ・ソリューションズ - 特定小電力トランシーバー - 製品のサポート) - ウェイバックマシン(2015年10月17日アーカイブ分)
- ^ 平成25年総務省告示第139号 電波法施行規則第6条第4項第4号(3)及び(5)の規定に基づく小電力データ通信システムの無線局の無線設備の使用場所 総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集
- ^ 周波数割当計画の第2表 27.5MHz-10000MHz
- ^ 昭和25年法律第131号
- ^ 昭和56年法律第49号による電波法改正の施行
- ^ 平成4年郵政省告示第392号、以後の改正を経て平成23年総務省告示第225号に至る
- ^ 平成5年法律第71号による電波法改正の施行
- ^ 平成5年郵政省令第61号による電波法施行規則改正の施行
- ^ 平成8年郵政省令第17号による電波法施行規則改正
- ^ 平成8年郵政省告示第412号、以後の改正を経て平成23年総務省告示第225号に至る
- ^ 平成13年総務省告示第396号、以後の改正を経て平成23年総務省告示第225号に至る。
- ^ 平成16年法律第47号による電波法改正の施行
- ^ 上記電波法改正時の第110条改正
- ^ 無線設備試買テストの実施(総務省報道資料 平成25年6月7日)(2013年7月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ^ 平成25年総務省令第62号による電波法施行規則改正
- ^ 平成27年法律第26号による電波法改正および平成27年総務省令第105号による電波法施行規則改正の施行
- ^ 令和元年法律第6号による電波法改正および令和元年総務省令第58号による電波法施行規則等改正
- ^ 情報通信白書 総務省情報通信統計データベース(出現数と措置数が確認できる平成6年版以降)
- ^ 電波監視 総務省情報通信統計データベース - 分野別データ
- ^ a b 不法無線局等の出現数・措置数 総務省電波利用ホームページ - 電波監視
不法無線局と同じ種類の言葉
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