ミジンコ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/19 01:11 UTC 版)
生態
ミジンコには、自分と同じクローンしか産まない単為生殖期と、交配して子孫を残す有性生殖期がある。一般的に、通常(環境の良いとき)はメスを産み、生存危機が迫ったときにだけオスを産んで交配するといわれている。また、エサや水温、日照時間の変化により、休眠卵(耐久卵)とよばれる卵を作り、有性生殖期には雌雄による受精卵を作ることもある。
ゲノム解読
ミジンコのDNAのサイズは約2億塩基対と小さいのに、タンパク質を作る遺伝子は少なくとも約3万900個と、これまでゲノムが解読された動物の中で最も多いことが判明している。東京薬科大学やアメリカインディアナ大学などの研究によれば、ミジンコの遺伝子は3万1000個以上にのぼり、ヒトよりも8000個も多い[1]
日本に生息する個体に関する知見の変遷
- 1926年以前 Daphnia morsei として分類され日本の固有種と考えられていた。
- 1926年 上野益三により Daphnia pulex と修正。
- 2015年 東北大学の研究グループにより日本各地の300か所以上の地点で捕獲した Daphnia pulex のミトコンドリアDNAと核DNAの分析結果から、日本に本種の有性生殖を行う循環単為生殖の個体群はいないこと、日本産個体のミトコンドリアDNAはいずれも Daphnia pulex のものであり核DNAの乳酸脱水素酵素遺伝子に北米産の日本には生息していない別種 Daphnia pulicaria の遺伝子が認められたこと、ミトコンドリアDNAの型と核DNAの型の組み合わせが4通りに固定していることから日本産の本種は D. pulex と D. pulicaria との雑種個体で、いずれも北米から侵入した4個体のメスに由来する絶対単為生殖のクローン個体からなる個体群で、ミトコンドリアDNAの変異比較からそのうち2個体はごく近年移入したもので、残る2個体は700年から3000年前に移入したものと発表[2][3][4]。同時に、侵入ルートや、単為生殖で繁殖したクローンであるため遺伝的多様性が低いにもかかわらず個体群を維持できた理由は不明であるとしている。なお、別に、「単為生殖を続ける個体群は有害遺伝子の蓄積により数千年で集団としての寿命が尽きる」との研究があることから、このままの単為生殖を続けた場合 Daphnia pulexの個体群は有害遺伝子の蓄積や病気による消滅の可能性があることが指摘されている[2][3][4]。
- ^ ミジンコの遺伝子、ヒトを8000個上回る インディアナ大など AFP通信 AFPBB News 記事:2011年02月09日
- ^ a b So, Mika; Ohtsuki, Hajime; Makino, Wataru; Ishida, Seiji; Kumagai, Hitoshi; Yamaki, Kwnyu G.; Urabe, Jotaro (2015). “Invasion and molecular evolution of Daphnia pulex in Japan”. Limnology and Oceanography 60 (4): 1129–1138. doi:10.1002/lno.10087 .
- ^ a b ミジンコはたった4個体を起源とする北米からの帰化種だった -日本に生息する生物の意外な由来- 東北大学 プレスリリース 2015年4月7日
- ^ a b “日本のミジンコ、実はアメリカ外来種だった たった4個体から全国に どこから? 東北大発表”. ITmedia (2015年4月7日). 2016年2月23日閲覧。
- ^ ミジンコの利用に関する二, 三の実験 水産増殖 Vol.17 (1969-1970) No.1 P19-25
- ^ 農薬の水生動物に対する毒性試験法の確立 Journal of Pesticide Science Vol.6 (1981) No.2 P257-264
- ^ 化学物質の安全性試験と生態系への影響評価 Journal of Pesticide Science Vol.25 (2000) No.4 P431-434
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