フィジー 国際関係

フィジー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 16:08 UTC 版)

国際関係

フィジーは伝統的に、日本やオーストラリア、ニュージーランドなど、アジア・太平洋諸国との関係を重視してきたが、軍事政権樹立後は民政復帰や民主化への対応をめぐって内政干渉を行うオーストラリアやニュージーランドと対立している。遂には、両国大使のフィジーからの退去を命ずる一方[14][15]、オーストラリアとニュージーランド政府もフィジー大使の国外退去を命じる局面もあった。

以下に列挙したように、多数の国際機関に加盟している国家の一つとしても知られている。

オーストラリアやニュージーランドとの関係

オーストラリアやニュージーランドとの貿易額はシンガポールについで大きく、フィジーはオーストラリアから小麦粉や食料品その他を輸入している。ニュージーランドからは牛乳食肉その他食料品の輸入が多い。フィジーにはビジネス目的に暮らしているオーストラリア人やニュージーランド人も多く、Fiji Australia Business CouncilやFiji New Zealand Business Councilもある。

貿易以外では、フィジーのリゾートはオーストラリア人やニュージーランド人による経営が多く、Fiji Australia Business Councilは、オーストラリア政府のフィジー政府に対する姿勢をビジネス促進に対する障害として批判する発言をしたこともある。

日本との関係

太平洋戦争以前には、フィジーへの日本人移民の導入が試みられていた。しかし病気(脚気)が原因で定着せず、太平洋戦争の勃発によって中断された。日本軍とフィジー軍は太平洋上で戦闘状態になったものの、フィジー本土上陸戦は行われなかった。現在も太平洋戦争に備えた防塁等防御構築物の跡は残されている。

1970年の独立を日本も承認し、1979年にはスバに在フィジー日本国大使館が開設された。駐日フィジー大使館は1981年に東京都に開設され、1990年には大阪市に、2012年には神奈川県横浜市にそれぞれ名誉領事も任命している。2020年代、日本の自衛隊がフィジー共和国軍(後述)の訓練に協力している[16]

フィジーはラグビーが盛んで、日本で活躍するラグビー選手もいる[17]。また、フィジーの公用語が英語で滞在費用が比較的安価であることから、語学留学先としての人気もある。

中国の進出

オーストラリアとニュージーランドの度重なる内政干渉による圧力のため、近年フィジー軍政は新たな活路として中国との関係を強化している。以前は、ほとんどいなかったとされる中国人がフィジーを訪れるようになり、年間1万人にまでになった。このため首都スバ市内には中国人経営の店舗が拡大している。2010年にはエアパシフィックキャセイ航空の共同運航で香港から直行便が就航した。中国人は首都スバにいくビジネスマンが大半で、フィジー本島西部ナンディではあまり見かけない。

また、フィジー各地で中国の援助による建築やインフラ整備が進み、娯楽施設や幹線道路、水力発電所を建設している。

中国がフィジーに援助をする狙いは、豊富な漁業資源の獲得にあると見られている。理由は中国の経済成長により、国内のマグロ消費量が多くなっていることが挙げられる。近年、中国の遠洋漁船がスバ港で多く見られるようになり、今では7割の外国船が中国の漁船である。また、フィジー最大の水産企業は中国の国営企業3社で、27隻のマグロ漁船で5分の1のマグロを水揚げしている。この国営企業はフィジー軍政のバイニマラマ首相とも太いパイプがある[18]

2010年1月、中国政府はフィジー大統領府の敷地を囲む塀の無償援助をフィジー政府に約束した[19]。塀の工事は中国の中鉄五局グループ(大手ゼネコン中国中鉄グループの一員)が請け負った[19]。長さ2.4キロメートルの塀は2011年2月に竣工した[20]

2021年から始まった中国・太平洋島嶼国外相会議に参加。2022年5月30日に開催された第二回会議はフィジーが開催国となり、同国のバイニマラマ首相兼外相と、中国の王毅国務委員兼外相が共同議長を務めた[21]

領土問題

フィジーの南、トンガの南西およそ400kmにあるミネルバ・リーフの領有権を主張している。ミネルバ・リーフにおいては1972年1月にユダヤ系アメリカ人のマイケル・オリバーがマイクロネーションとしてミネルバ共和国の独立を宣言したが、周辺のフィジー、トンガ、ナウル西サモアクック諸島自治政府は、オーストラリアやニュージーランドと協議し、同年6月にトンガ軍が上陸して占領した。しかし翌月フィジー軍が上陸して領有権を主張、このときはトンガの正式な領有権主張を認めたフィジー政府だったが、再び領有権を主張して2005年に国際海底機構に提訴した。また、ミネルバ共和国の後継を主張するメンバーがミネルバ公国として再度領有権を主張するなど混乱が続いている。


  1. ^ Fiji” (英語). ザ・ワールド・ファクトブック. 2022年8月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e IMF Data and Statistics 2021年10月24日閲覧([1]
  3. ^ a b c d e f g h i j フィジー共和国(Republic of Fiji)基礎データ 日本国外務省(2024年2月17日閲覧)
  4. ^ 各国における取り組み > 大洋州 > フィジー 国際協力機構(JICA)2024年2月17日閲覧
  5. ^ 地域別情報:メラネシア(フィジー、ソロモン諸島、バヌアツ、ニューカレドニアなど)厚生労働省(2024年12月17日閲覧)
  6. ^ About Fiji Abou > History
  7. ^ OF FIJI – VITI DUA
  8. ^ 「中国の援助、フィジーのクーデター以降急上昇」国際機関太平洋諸島センター http://www.pic.or.jp/news/080505.htm#2[リンク切れ]
  9. ^ PIF PRESS STATEMENT 2 May 2009
  10. ^ 「。http://www.cnn.co.jp/world/CNN200909020012.html[リンク切れ]CNN日本語版サイト(2009年9月2日)
  11. ^ フィジー政府のサイト
  12. ^ フィジー共和国基礎データ
  13. ^ “エリザベス女王の君主制廃止 カリブ島国バルバドス、共和制へ―英影響力に陰り”. 時事ドットコム. (2021年12月5日). https://web.archive.org/web/20211129223314/https://www.jiji.com/jc/article?k=2021112900827&g=int 2021年12月5日閲覧。 
  14. ^ New Zealand expels Fiji diplomat”. CCTV (2009年11月4日). 2019年10月31日閲覧。
  15. ^ 政府開発援助(ODA)国別データブック 2008 フィジー” (PDF). 日本国外務省. p. 1 (2009年). 2019年10月31日閲覧。
  16. ^ a b フィジー共和国軍に対する能力構築支援に伴う派遣要員の陸上幕僚長に対する出国報告 陸上自衛隊(2024年2月)2024年2月17日閲覧
  17. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)
  18. ^ NHKbs1『きょうの世界』2009年6月2日放送回より。[出典無効]
  19. ^ a b 中斐签署斐济总统府围墙项目实施合同中華人民共和国外交部公式サイト(2012年1月7日)2012年5月26日閲覧
  20. ^ 中国援斐济总统府和植物园围墙项目竣工交接中華人民共和国商務部公式サイト(2011年4月6日)2012年5月26日閲覧
  21. ^ 王毅部長が中国・太平洋島嶼国外相会議の5つの共通認識を発表”. 人民網 (2022年5月31日). 2022年6月8日閲覧。
  22. ^ 丹羽典生「サトウキビ産業盛衰史」/吉岡政徳・石森昭男編著『南太平洋を知るための58章 メラネシア ポリネシア』(明石書店 2010年)p.99
  23. ^ 一般社団法人海外鉄道技術協力協会著『世界の鉄道』(ダイヤモンド・ビッグ社 2015年10月2日初版発行)p.131
  24. ^ 1987年のクーデター以降海外へ流出激増、2007年の統計では、フィジー総人口に占める割合は36%まで下がっている。将来3分の1まで下がることが確実視されている。出典:丹波典生「リトル・インディアの行方」/吉岡政徳・石森昭男編著『南太平洋を知るための58章 メラネシア ポリネシア』(明石書店 2010年)p.98
  25. ^ https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/fj.html[リンク切れ]ザ・ワールド・ファクトブック
  26. ^ 丹波典生「リトル・インディアの行方」/吉岡政徳・石森昭男編著『南太平洋を知るための58章 メラネシア ポリネシア』(明石書店 2010年)pp.95-96
  27. ^ フィジー 安全対策基礎データ「犯罪発生状況、防犯対策」”. 日本国外務省. 2021年12月5日閲覧。
  28. ^ フィジーについての話題集 日本国外務省(2000年6月)2024年2月17日閲覧
  29. ^ a b c d Cricket Fiji 国際クリケット評議会(2023年10月1日閲覧)






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