ザグレブ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/14 12:00 UTC 版)
統計
ザグレブはクロアチア最大の都市で、そのほとんどが市街に居住している。2001年の国勢調査による公式統計では人口は779,145人で[9][10]、ザグレブ市の推計によれば2006年時点では804,900人に増加している[11]。ザグレブ首都圏の人口は約120万人である[12]。1997年よりザグレブ市は特別市の地位を得て、ザグレブ郡から分離されたが商業や歴史的なつながりは続いている。2001年の国勢調査によれば人口のほとんどはクロアチア人が占めその割合は92%であった。60,066人はマイノリティが占め、セルビア人が18,811人 (2.41%)、ボシュニャク人が6,204人 (0.80%)、ムスリム系が8,030人 (1.02%)、アルバニア人が6,389人 (0.83%)、スロベニア人が3,225人 (0.41%)、モンテネグロ人が2,315人 (0.27%)、ロマが3,946人 (0.55%)、マケドニア人が2,315人 (0.27%)等で、他にもドイツ系などの少数のマイノリティのコミュニティが出来ている[13]。
経済
アルプス地方、ディナル・アルプス地方、アドリア海沿岸地方、パンノニア地方へ伸びるパンノニア平原南西部の、地理的に恵まれた場所にあり、中央ヨーロッパとアドリア海を繋ぐ優れた交通の要衝となっている。交通の上で立地が恵まれていること、産業が集中していること(金属加工、電器、織物、化学、製薬 (Pilva)、印刷、皮革、木材加工、製紙等)、科学研究施設、工業の伝統により、クロアチアの経済の主導的な位置を占めている。 ザグレブは東ヨーロッパの標準から見れば比較的裕福だが、それでも平均収入や物価は西側よりもなお低い[14]。 ザグレブはクロアチアの都市ではもっとも高いGDPを誇り、2005年の1人当たりのGDPは19,132ドルであった。同時期のクロアチア平均は10,431ドルである[15]。2004年の購買力平価は28,261ドルであった[16]。 2008年7月現在の、ザグレブでの平均月収は6,228クーナ(約1,356ドル)で、クロアチア平均は5,234クーナ(約1,140ドル)である[17]。 2006年現在の平均失業率は8.6%であった [18]。 クロアチアの34%の企業はザグレブに本社を置いており、クロアチアの労働人口の38.4%は銀行や公共部門、公共交通機関を含めザグレブで勤務をしている。2006年現在、ザグレブの企業はクロアチア全体での52%の取引高と60%の利益を生み出し、クロアチア全体での輸出の35%、輸入の57%を占めている [16][19]。
ザグレブの2010年の観光客数は60万人以上[20] で、2011年には10%増加が見込まれているなど[21]、増加傾向にある。
歴史
先史時代以来、ザグレブとその一帯には人間が居住していた。旧石器時代のヴェテルニツァ洞窟 (Veternica) での発見物や、今のヴェリカ・ゴリツァのスツィタリェヴォ地区 (Scitarjevo) 近くにあるローマ時代の紀元前1世紀に遡るアンダウトニア (Andautonia) の街の遺構がその証拠である[22]。メドヴェドニツァ山脈の斜面には絵のように美しいかつての村(Sestine, Gracani、およびRemete)がネックレスの珠のように市を囲んでいて、今日でも豊かな伝統を守っている(民族衣装、Sestineの傘、ジンジャーブレッドなど)。
語源と呼称
ザグレブの名が現れたのは1094年頃であるが、その起源についてはあまりはっきりとしていない。クロアチア語で ザグラビティ"zagrabiti" は柄杓を意味し、それを基にいくつかの伝説もある。あるクロアチア人が答えた物には、クロアチアのバン(総督)が喉が渇いた兵士たちを連れて荒地を横切った際、バンは失望から自分のサーベルを地面に突いた所、水が流れ出した為兵士に命じて水を掘らせたとされる。この水を掘り出したとされる伝説は科学者により居住地が設立され、水で満たされた穴やシデgrabaなどから来る名称とする提唱によって支えられている[23]。いくつか提唱されている説には丘を意味する'za breg'や丘の向こう側を意味するものである。現在、中心部の近くにある丘も以前はより近くを流れていたサヴァ川の河岸だったと言う可能性もある。これらの単語から、一つの単語が形成され現在の地名であるザグレブが生まれたとされる。他の伝説ではある支配者がマンダ (Manda) と言う少女に喉が渇いたので、現在は泉であるマデュセヴァツの湖に水を汲みに行かせたとされるもので、"Zagrabi, Mando!" 「マンダ、それをすくって!」のセンテンスから来ているともされるものや[24]、クロアチアのイラン起源説と関連してザグロス山脈と関連付けるものもある[25]。現代のクロアチア語以外での呼称はハンガリー語でザーグラーブ Zágráb、ドイツ語でアグラム Agram、イタリア語でザガブリア Zagabriaである。
初期から18世紀まで
ザグレブの名が初めて現れた年、ハンガリー王ラースロー1世はカプトル丘の上に司教区を設けた。それとは別の独立した(砦のような)集落が、近隣のグラデツの丘に出来た。これらの居住地は1242年のタタール侵攻に苦しめられるが、彼らが去った後、ベーラ4世はグラデッツを王の自治市と宣言し大砲を寄贈し、外国の職工を集めた。14世紀から15世紀にかけて、二つの集落は経済的および政治的に競い合った。司教区はグラデッツを破門し、その報復にグラデッツはカプトルに火を放ったりしたものだった。彼らが共に手を取り合ったのは、臨時の大規模経済投機だけだった。例えば3年に一度のそれぞれ2週間続く祭りなど。これら二つの中世の丘グラデッツとカプトルは、1850年、最終的に合併してひとつのザグレブとなり、クロアチアそしてスラヴォニアの政治的中心地となった。2つの地区は、今やこの近代都市の文化的中心を形成している(経済的中心と交通の中心は、それから南に移動したが)。カプトルの司教区は、それからザグレブ大司教区になった。 1669年には大学も設立され、1776年、王国の議会もヴァラジュディンから移された。またグラマースクールの設立や聖カタリナ教会や修道院なども建てられている。17世紀から18世紀にかけ、ザグレブでは大火や疫病などの悪い状況も経験した。
19世紀から20世紀
19世紀のザグレブはクロアチア再生運動(イリュリア運動)の中心地となり重要な文化的、歴史的な団体の創設が見られた。最初の鉄道がザグレブとズィダニモスト (Zidani Most)、シサク間に1862年に開業し、1863年にザグレブではガスも導入されている。ザグレブでの水道の導入は1878年で、馬車軌道によるトラムの導入は1891年からである。鉄道の建設によって、古くからの郊外部分は徐々にドニ・グラードを特徴付ける中央ヨーロッパの都市では広く一般的な規則的なブロックパターンに、吸収されていった。賑やかな中心部では多くを印象付けるモニュメントや公園、多くの博物館、劇場、映画館などが多くあった。発電所が1907年に造られ、1880年から1914年には大いに繁栄した。地震の後、ザグレブの街は今日も続く特徴的な街路となっている。第一次世界大戦後、労働者階級地区が鉄道線路とサヴァ川の間の地域に現れたが、丘の南斜面のメドヴェディツァの住宅地区の建設は戦間期に終えている。1920年代、人口は70%も増加しザグレブ史上最高の伸びとなっている。1926年、最初のラジオ局が開業し放送を開始した。
20世紀の最初の50年間でザグレブは大きく拡大した。第一次世界大戦前、都市や街区は東はスタラ・ペシュチェニツァ (Stara Peščenica)、西はチェルノメレツ (Črnomerec) まで造られている。オーストリア・ハンガリー帝国時代には、ザグレブはドイツ式にアグラムと呼ばれていた。第二次世界大戦中の1941年から1945年まではナチスの傀儡国家であるクロアチア独立国の首都がおかれていたが、同国はドイツの敗戦と共に崩壊した。戦時中、アメリカ軍より爆撃を受けている。
第二次世界大戦後以降
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国となった戦後、1947年にザグレブ見本市が開かれている[26]。 その後、1950年代の中頃からサヴァ川の南に、いわゆるNovi Zagreb(新ザグレブ)と呼ばれる新興住宅地ができた。市街は東西方向にも拡大し、かつてはただの村に過ぎなかったドゥブラヴァ (Dubrava)、ポドシセド (Podsused)、ヤルン (Jarun)、ブラト (Blato) などを飲み込んでいった。貨物鉄道のハブとザグレブ国際空港がサヴァ川の南に作られた。南東にある最大の工業地帯 (Zitnjak) は、サヴァ川とプリゴリェ地方 (Prigorje) の間にある市の東側郊外での工業地帯の拡大を代表する。1987年、ザグレブはユニバーシアードの開催都市となった。1991年から1995年にかけて起こったクロアチア紛争時には散発的な戦闘がユーゴスラビア人民軍 (JNA) のバラック周辺で発生しているが大規模な戦災からは逃れている。しかし、1995年5月にセルビア側の攻撃目標とされ2発のロケット砲の攻撃であるザグレブロケット砲撃に遭い7人の市民が死亡している[27][28]。
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