インヴィンシブル級航空母艦
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インヴィンシブル級航空母艦 | |
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地中海を航行中の「イラストリアス」 | |
基本情報 | |
艦種 | 航空母艦 (対潜空母・軽空母) |
運用者 | イギリス海軍 |
建造期間 | 1973年 - 1985年 |
就役期間 | 1980年 - 2014年 |
建造数 | 3隻 |
前級 |
CVA-01級・セントー級 タイガー級 (ヘリコプター巡洋艦) |
次級 | クイーン・エリザベス級 |
要目 | |
基準排水量 | 16,000トン |
満載排水量 | 20,500トン |
全長 | 210 m |
幅 | 36.0 m |
吃水 | 8.0 m |
機関方式 | COGAG方式 |
主機 | TM3Bガスタービンエンジン×4基 |
推進器 | スクリュープロペラ×2軸 |
出力 | 100,000 hp (75,000 kW) |
速力 | 最大28ノット (52 km/h) |
巡航速力 | 18ノット (33 km/h) |
航続距離 | 7,000海里 (18ノット巡航時) |
乗員 | |
兵装 |
※1・2番艦はゴールキーパーに変更 ※後に撤去 |
搭載機 | #航空運用機能 |
C4ISTAR | ADAWS戦術情報処理装置 |
レーダー |
|
ソナー | 2016型 船底装備式×1基 |
世界で初めてスキージャンプ勾配によるSTOVL運用を導入した艦級であり、フォークランド紛争で実戦投入された際には、搭載するシーハリアーによる戦闘空中哨戒・近接航空支援で活躍して、その実用性を世界に印象づけた。ソ連海軍のキエフ級航空母艦とともに、現代的な軽空母の先駆者として高く評価されている[4]。
来歴
CVA-01と護衛巡洋艦
1950年代より、イギリス海軍は新しいヘリ空母についての検討を開始した。当初はヘリコプター22機の搭載が求められたために排水量19,000トンとされていたが、コスト低減のため、後に搭載機は8機に削減された。これに伴い、設計案の排水量も5,000~7,000トン程度に削減されたほか、従来の空母船型に加えて、艦橋構造物と一体化した長船尾楼を備えた巡洋艦型の設計も俎上に載せられた[5]。
これらの検討は1959年から1960年頃にはおおむね完了しており[5]、これを踏まえて、1961年5月、海軍本部は国防省に対し、護衛巡洋艦(escort cruiser)を提案した。これは基準排水量13,500トン、シースラグ艦対空ミサイルや旗艦設備を備えるほか、正規空母を固定翼機の運用に集中させられるように、シーキング哨戒ヘリコプター9機の運用も分担することになっていた[6]。その後、ポラリス搭載潜水艦の購入予算を確保するため、護衛巡洋艦計画は一時的に棚上げされて、まずはタイガー級防空巡洋艦をヘリコプター巡洋艦として改装することになった[7]。
またこれとは別に、1963年7月30日、イギリス政府は、空母「アーク・ロイヤル」および「ヴィクトリアス」の代替となる新しい航空母艦の建造計画を発表した。1964年度の国防白書では、近代化改修された空母「イーグル」よりわずかに大きく、1970年代初頭より就役する予定とされており、設計はCVA-01級と名付けられた[8]。CVA-01級の設計は1966年1月27日に完了したが、その後1ヶ月もしないうちに、1966年度国防白書によって計画そのものがキャンセルされた[5]。
CCHとTDC
CVA-01級の計画中止後も護衛巡洋艦の計画は生き残ったが、艦隊から正規空母が消滅することになったことに伴い、設計は全面的に改訂された。1967年12月には幕僚要求事項が作成されたが、航空運用能力は強化され、軽空母(CVL)に近いサイズまで大型化した[6]。この計画は指揮巡洋艦(CCH)と称されるようになっており、1968年1月には3つの設計案が作成された。1つめは艦後半部のみに航空艤装を備えた航空巡洋艦(12,750トン)、2つめは全通飛行甲板を備えた案(17,500トン)、3つめはこれに海底反跳に対応したソナーを追加した案(18,700トン)であった。参謀部は3つめの設計を採択し、1970年末には概略設計が完了した[5]。
一方、当時イギリスでは垂直離着陸機の開発が進められており、1966年にはイギリス空軍向けの実用機としてホーカー・シドレー ハリアーが初飛行し、1969年には引き渡しを受けていた[9]。また早期から艦上運用も模索されており、1963年2月の時点で、既に試作機であるホーカー・シドレー P.1127が「アーク・ロイヤル」での離着艦に成功していた[10]。また空軍のハリアーGR.1攻撃機の戦力化が進むにつれて、艦艇での運用適応テストが順次に実施されており、1969年9月にはコマンドー母艦「ブルワーク」、1970年3月には空母「イーグル」、1971年3月には「アーク・ロイヤル」でも運用適応テストが実施された[10]。
ハリアーは、航続距離や兵装搭載量で通常離着陸(CTOL)機に劣る点が多かったものの、Tu-95「ベア」のような洋上哨戒機を追い払うための要撃機としては有望と考えられており、1969年、デビッド・オーエン海軍担当政務次官は、同機を新しい対潜巡洋艦からも運用するように提言した。この提言は、この時点では採択されなかったものの、上記のように艦型が拡大されるとともに本格的に検討されるようになっていった。この頃には、計画は全通甲板巡洋艦(Through Deck Cruiser, TDC)と称されるようになっていた[6]。
1973年4月17日、1番艦「インヴィンシブル」が発注された。建造途上の1975年5月にはシーハリアーの導入が正式に決定され、これに伴い、発艦支援設備としてスキージャンプ勾配が同艦に追加されることとなった。これらの設計変更の影響もあり、同艦の就役は予定より2年遅れの1980年7月にずれ込むこととなった。就役時には、対潜空母と称されるようになっていた[6]。
設計
船体
船型としては全通甲板型が採用されており、上部構造物は右舷側に寄せたアイランド方式とされている。ガスタービン主機をシフト配置している関係から、アイランドはかなり長大なものとなった。また英空母の通例として、アイランドは右舷いっぱいに寄せられてはおらず、その外側には車両等が通行できる程度の通路が残されている[4]。
なお、建造費と維持費を抑えるため、商船の設計方法が導入されている。LB比(水線長/幅)は約7で、決して高速艦の艦型ではない。ただし、機関部はダブル・ハルとされるなど抗堪性には意が払われており、また後に数次に渡る改修による重量増(1990年前後の第1次改装のみで250トン)を許容できるなど、設計には十分な余裕が見込まれていた[11]。
小型の空母なので艦の動揺軽減のために船底に固定式のフィン・スタビライザーを2組備えることで、艦載機の離着艦の安全をはかり、シーステート7という荒れた海でも33km/hで航走して70%の時間で動揺を5度以内に収める設計となっている。高い乾舷もあって、航洋性は非常に優れていた[5]。
機関
本級は、当時としては世界最大のガスタービン推進艦として知られている。主機関としては、21型フリゲートで高速機として採用されていたロールス・ロイス オリンパスTM3Bの単機種構成とされ、COGAG方式で2基ずつ4基、両舷2軸に配している[注 1]。抗堪性向上のため機関はシフト配置とされており、前部機械室が右舷軸、後部機械室が左舷軸を駆動する。なお、後のガスタービン推進艦は、いずれも可変ピッチプロペラ(CPP)によって逆進時の操作を容易にしていたが、本級ではまだ固定ピッチ式であったため、歯車減速装置に逆転機が付されている[12]。
電源としては、パクスマン-バレンタ16-RPM 200Aディーゼルエンジンを原動機とする発電機(単機出力1,750キロワット)8セットが搭載された[13]。
注釈
- ^ このほか、予備機としてガス発生機だけのもの1基がある[12]。
- ^ シーハリアーFA.2は、レーダーの更新などの改良を受けてはいたものの、機体構造としてはFRS.1と同系列の第一世代ハリアーの系譜に属しており、空軍が運用していた第二世代ハリアー(ハリアーGR.7A/9)のように大出力エンジンを搭載するなどのアップデートは難しかった[9]。
- ^ 揚陸ヘリ空母とも称される。
- ^ 後に撤去。
- ^ VTOL機15機の輸送が可能
- ^ 1・2番艦は就役後にファランクスが搭載されていたが、後日ゴールキーパーに換装。
- ^ a b 固定兵装ではなく搭載品扱い。
- ^ 当初はシーダート艦対空ミサイル・システムを備えていたが、1990年代の改修の際に撤去された[13]。
- ^ 当初はBAe シーハリアー艦上戦闘機の搭載に対応していたが、後に同機が運用を終了すると、固定翼機をもたないヘリ空母として活動することになった[13]。
出典
- ^ a b c d e Saunders 2009, p. 872.
- ^ a b c Gardiner 1996, p. 501.
- ^ Sharpe 1989, p. 659.
- ^ a b 野木 2008.
- ^ a b c d e f g h Brown & Moore 2012, ch.4 Aircraft Carriers.
- ^ a b c d e Polmar 2008, ch.19 New Directions.
- ^ Friedman 2011, ch.11 The Missile Age.
- ^ Polmar 2008, ch.12 Carrier Proliferation.
- ^ a b Calvert 2019.
- ^ a b 野中 2020.
- ^ 海人社 1992.
- ^ a b 阿部 2005.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s Wertheim 2013, pp. 803–804.
- ^ a b c d e f g Prezelin 1990, p. 696.
- ^ Polmar 2008, ch.20 Carrier war in the South Atlantic.
- ^ 木津 2007.
- ^ Hobbs 2014, pp. 316–336.
- ^ 『世界の艦船』2012年9月号
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Wertheim 2013, pp. 360–362.
- ^ a b c d e f g h i j k l m Wertheim 2013, p. 326.
固有名詞の分類
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