アイロン アイロンの概要

アイロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 13:24 UTC 版)

清代初期の銅熨斗

火熨斗(ひのし)

火熨斗

熱した金属重みにより、を伸ばすという工夫は中国においても古くからあり、そのような行為を「」(「:布をしりの下において熱を加え伸ばす」+「:後世、『尉』が主に敵を鎮圧する武官を指すようになったため、特に火を使うことを強調し別字とした」)と言い、それに用いる道具を「火熨」又は「熨斗(『斗』はひしゃくでその形状をあらわす)」と言った。

日本では、平安時代に編纂された辞書『倭名類聚抄』に火熨斗(ひのし)が記載され、貴族の邸宅などで使われていた。片手のような製容器に熾き火にした木炭を入れ、熱と容器の重みで布のしわを伸ばしたほか、冬は寝具を温める用途もあった。庶民は、などで織った服を洗った後は、台に載せてで打ってしわを取っていた。後には、こてを炭火で加熱して火熨斗の代わりとされるようになった[1]。後述する炭火アイロンが登場した後も、火熨斗は和服を伸ばす際には多く用いられ、電気式アイロンが普及する昭和30年頃まで使われていた。

「火熨斗」から、「伸ばす」ことを意味する「のし」に「熨斗」の字が当てられ、やがて、「熨斗鮑」(製造には火熨斗は用いられない)を経由し、慶事の贈答に用いる「熨斗のし)」の用字となる。

なお、アイロンとしての「熨斗」は漢語では「うっと」と読み、現代中国語においても「熨斗(普通話:yùndǒu)」はアイロンを意味する。 また、トルコ語の「ütü」やロシア語の「утюг(utyug)」など、中央アジア中東の一部、東ヨーロッパスラヴ系の言語においては中国語の「熨斗」を語源とする語でアイロンを呼ぶ。

炭火アイロン

炭火アイロン

炭火アイロンは本体内部に着火した炭を入れ、その熱を利用して衣類のしわ伸ばしや形なおしを行う器具である[2][3]。上面は開閉式の蓋になっており、ガス抜きの煙突と握り手がある[3]

炭火アイロンが日本に輸入されたのは幕末頃とされており、ペリー来航時の様子を著した松浦武四郎の『下田日記』にその絵が見られる[2]。炭火アイロンは明治に入って広く普及した。日本では江戸期以前から炭火を使う暖房や調理が一般的であり、それをそのままアイロンに転用できたので都合が良かった。

特殊な例になるが、第二次世界大戦時の金属供出による代用陶器にアイロンも含まれており、陶製の炭火アイロンが開発され流通した[4]。炭火以外にも熱湯を入れ利用する陶製のアイロンも、この時期には流通した。

こて形アイロン

アイロンストーブ

西洋では、アイロンは火力調整が難しく布を焦がす問題や、中の炭がはじけて火の粉が飛び散る事が問題となり、中に炭を入れないこて形のアイロンも広く使われた。これは等で制作され、使用する時はアイロンストーブと言われる専用のストーブの上及び周囲に乗せて加熱するもので、火の粉が飛び散る心配はない。

現在でも、和裁パッチワークなど、通常の大きなアイロンでは難しい細かい部分の処理に、こて型アイロンが使われている。ただし熱源は電気に置き換わっていて、多くは持ち手に内蔵された電熱器でこて先を温める仕組みとなっている。

現在使われているこて型アイロン

和裁用こて
ツボ型の電熱器にこての先を挿し込んで温めて使うタイプと、持ち手に電熱器が内蔵されているタイプがある。
パッチワーク用こて
持ち手に電熱器が内蔵。和裁用よりもさらにこて先が小さく、縫い代を倒す、細い小さい面にアイロンをかける、などの使い方をする。また、洋服のフリルや飾りが沢山ついた部分や人形の服作りなど、パッチワーク作り以外の場面でも活用されている。
布花(アートフラワー)用こて
持ち手に電熱器が内蔵。アタッチメントとしてボール型やへら型など多種多様なこて先をはめ込んで使う。花弁や葉の形に切り抜いた平面の布に丸みや反り返りをつけたり線やひだを入れたりして、より現実の花弁や葉に近い形状にする。



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