3つ組衛星 (ELINT衛星)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 07:09 UTC 版)
「遥感衛星」の記事における「3つ組衛星 (ELINT衛星)」の解説
遥感衛星シリーズは、2006年4月から2022年6月までに100基以上が打上げられているが、この内、1基のロケットで同時に打上げられた3つ組衛星が21グループ、63基と半数以上を占めている。3つ組衛星(トリプレット)は、ほぼ同じ軌道上を3つの衛星が100km程度離れて飛ぶ衛星グループであり、このような運用形態にする理由は、通常は、各衛星への電波到着時刻差 (Time Difference Of Arrival)から、地上の電波送信源(特にレーダー)の位置を割り出すためである。このため、これらの3つ組衛星グループもELINT衛星である可能性が高いと考えられている。 これらの21グループは、周回高度、軌道傾斜角が約1100km、63.4度の9グループ(高高度グループ:遥感9、16、17、20、25、31号グループ(4基))、同約605km、35度の10グループ(遥感30号グループ)、および同約500km、35度の2グループ(遥感35号グループ)に分かれる。 高高度グループは、周回高度、軌道傾斜角がアメリカ海軍広域海上監視システム(NOSS)と類似しており、NOSS衛星と同じく、高緯度地域を含む全地球上の船舶の位置を特定し、動静を監視するためのELINT衛星ではないかと考えられている。 遥感30号グループは、全て「遥感30号」と同じ号番で呼ばれている衛星グループであり、各グループは「遥感30-01、遥感30-02…」のように細分番号で区別されている(これらとは別に、光学偵察衛星の「遥感30号」も存在するので注意が必要である)。 これらのグループもELINT衛星である可能性が高いが、高高度グループよりスワス幅が狭く、軌道傾斜角が35度であるので、高緯度地域はカバレージに含まれない。このような軌道配置とする意図については、はっきりしていない。 一つの説明として、米国の空母打撃群のような艦隊に対して、DF-21D、DF-26のような対艦弾道ミサイルによる攻撃を行う場合を想定して、高高度グループのELINT衛星で艦隊の位置を粗く把握し、遥感30号グループでミサイル誘導に必要な高精度位置測定を行うことを意図しているのではないかとの意見が複数の専門家から出されている。中国が、東シナ海または南シナ海における米国との軍事衝突を主眼において衛星システムを整備していると考えれば、高緯度地域の探査能力を省みない遥感30号グループの軌道配置は合理的とも言える。 遥感35号グループは、現在、2021年11月6日に打ち上げられた遥感35号と、2022年6月23日に打ち上げられた遥感35-02号の2組で構成される。これらは、遥感30号グループと同様に軌道傾斜角が35度の3つ組衛星であり、遥感30号グループと同様のELINT衛星である可能性が高いが、周回高度は遥感30号グループよりさらに低い約500kmである。後続衛星グループの打ち上げの有無など、今後の動向を観察しないと、この衛星グループの打ち上げの意図は推定が難しい段階である。
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