3'-UTRとmiRNA
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 15:53 UTC 版)
「遺伝子発現の調節」の記事における「3'-UTRとmiRNA」の解説
詳細は「3' 非翻訳領域」および「miRNA」を参照 mRNAの3'非翻訳領域 (3' untranslated region, 3'-UTR) は、しばしば転写後に遺伝子発現に影響を与える調節配列を含んでいる。このような3'-UTRは、調節タンパク質やmiRNAの結合部位を含んでいる。miRNAは3'-UTRの特定の部位に結合することで、翻訳を阻害するか、もしくは直接的に転写産物の分解を引き起こし、さまざまなmRNAの遺伝子発現を低下させる。また3'-UTRは、サイレンサー領域を持っていることもあり、リプレッサータンパク質がこの領域に結合してmRNAの発現阻害が行われる。 3'-UTRのmiRNAが結合する配列は、miRNA認識配列 (miRNA response element, MRE) と呼ばれ、MREは3'-UTR中の制御モチーフのうち約半分を占める。 2014年の段階で、miRNAの配列とアノテーションのアーカイブであるmiRBaseウェブサイトには、233の生物種で28,645のエントリーが存在する。これらのうち、1,881のmiRNAはヒトの遺伝子座にアノテーションされている。miRNAは平均して約400の標的mRNAを持ち、数百の遺伝子の発現に影響を与えると予測されている。Freidmanらは、ヒトのmRNAの3'-UTRのmiRNAの標的部位のうち、45,000以上の部位がバックグラウンドレベルよりも高く保存されており、ヒトのタンパク質をコードする遺伝子の60%以上がmiRNAと対合を保つよう選択圧を受けていると予測している。 1種類のmiRNAが数百種類の異なるmRNAの安定性を低下させることは、直接的な実験により示されている。他の実験では、1種類のmiRNAが数百のタンパク質の合成を抑制するが、一方でその抑制はしばしば1/2以下と穏やかであることが示されている。 miRNAによる遺伝子発現の調節異常の影響は、がんにおいて重要であると考えられている。2015年の論文では、消化器がんにおいて、9つのmiRNAがエピジェネティックな変化を受けており、DNA修復酵素の発現抑制に寄与していると報告されている。 また、遺伝子発現のmiRNAによる調節異常の影響は、統合失調症、双極性障害、うつ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、自閉症といった精神・神経疾患においても重要であると考えられている。
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