1970年イギリスグランプリとは? わかりやすく解説

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1970年イギリスグランプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 10:01 UTC 版)

 1970年イギリスグランプリ
レース詳細
1970年F1世界選手権全13戦の第7戦
日程 1970年7月18日
正式名称 XXIII RAC British Grand Prix
開催地 ブランズ・ハッチ
イギリス イングランドケント州
コース 恒久的レース施設
コース長 4.265 km (2.650 mi)
レース距離 80周 341.200 km (212.012 mi)
決勝日天候 曇(ドライ)[1]
ポールポジション
ドライバー ロータス-フォード
タイム 1:24.8
ファステストラップ
ドライバー ジャック・ブラバム ブラバム-フォード
タイム 1:25.9 (70[2]周目)
決勝順位
優勝 ロータス-フォード
2位 ブラバム-フォード
3位 マクラーレン-フォード

1970年イギリスグランプリ (1970 British Grand Prix) は、1970年のF1世界選手権第7戦として、1970年7月18日ブランズ・ハッチで開催された。

レースは80周で行われ、ロータスヨッヘン・リントポール・トゥ・ウィンで優勝した。ブラバムジャック・ブラバムが2位、マクラーレンデニス・ハルムが3位となった。また、後にドライバーズチャンピオンとなるエマーソン・フィッティパルディのF1デビュー戦であり、ダン・ガーニーのF1最後のレースでもあった。

背景

ダンロップはこの週末、本年をもってF1用タイヤの供給から撤退することを発表した[3]1965年グッドイヤーが参入したことによりダンロップの独占供給体制が崩れ、さらに1966年ファイアストンも参入してタイヤ競争が激化していった中[4]、この年もBRMペドロ・ロドリゲス)とティレル/マーチジャッキー・スチュワート)によって2勝を挙げていた[5]

エントリー

サーティース初のF1マシンTS7

本レースは25台が参加した[6]ジョン・サーティースはこの年から自身のチーム「サーティース」でF1参戦を開始し、自製マシンの完成までの間はマクラーレン・M7Cを走らせていた。サーティース自ら設計及び制作に携わった初の自製F1マシンTS7が完成し、本レースからTS7を走らせる[7]ウィリアムズは、オランダGPで事故死したピアス・カレッジに代わってブライアン・レッドマンを起用し、活動を再開した。フェラーリクレイ・レガツォーニが2台目の312Bを走らせる。STP英語版マリオ・アンドレッティが復帰した。ロータスは3人目のドライバーとしてブラジルの新鋭エマーソン・フィッティパルディを起用し、49Cを走らせる[6]マクラーレンフォード・コスワース・DFVエンジンの不足[注 1]により、地元出身のピーター・ゲシンは欠場せざるを得なかった[8]

エントリーリスト

チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
ティレル・レーシング・オーガニゼーション 1 ジャッキー・スチュワート マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
2 フランソワ・セベール
スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 3 ジャッキー・イクス フェラーリ 312B フェラーリ 001 3.0L F12 F
4 クレイ・レガツォーニ
ゴールドリーフ・チーム・ロータス 5 ヨッヘン・リント ロータス 72C フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
6 ジョン・マイルズ 72B
28 エマーソン・フィッティパルディ 49C
エキップ・マトラ・エルフ 7 アンリ・ペスカロロ マトラ MS120 マトラ MS12 3.0L V12 G
8 ジャン=ピエール・ベルトワーズ
ブルース・マクラーレン・モーターレーシング 9 デニス・ハルム マクラーレン M14D フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
10 ダン・ガーニー M14A
11 アンドレア・デ・アダミッチ M7D アルファロメオ T33 3.0L V8
12 ピーター・ゲシン 1 M7A フォードコスワース DFV 3.0L V8
ブルックボンド・オクソ・レーシング/ロブ・ウォーカー 14 グラハム・ヒル ロータス 49C フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
マーチ・エンジニアリング 15 ジョー・シフェール マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
16 クリス・エイモン
モーターレーシング・ディベロップメンツ・リミテッド 17 ジャック・ブラバム ブラバム BT33 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
19 ティム・シェンケン 1
アウト・モトール・ウント・シュポルト 18 ロルフ・シュトメレン
チーム・サーティース 20 ジョン・サーティース サーティース TS7 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
21 トレバー・テイラー 1 マクラーレン M7C[2]
ヤードレー・チーム・BRM 22 ペドロ・ロドリゲス BRM P153 BRM P142 3.0L V12 D
23 ジャッキー・オリバー
24 ジョージ・イートン
フランク・ウィリアムズ・レーシングカーズ 25 ブライアン・レッドマン デ・トマソ 505 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
STPコーポレーション 26 マリオ・アンドレッティ マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
コーリン・クラッベ・レーシング 27 ロニー・ピーターソン マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
ピート・ラブリー・フォルクスワーゲン・インク 29 ピート・ラブリー ロータス 49B フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
エキュリー・ボニエ 30 ヨアキム・ボニエ 1 マクラーレン M7C フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
シルビオ・モーザー・レーシングチーム 31 シルビオ・モーザー 2 ベラシ F1 70 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
ソース:[9]
追記
  • ^1 - マシンが準備できず欠場[10]
  • ^2 - モーザーはスターティングマネーに不満を持ち欠場[10]

予選

ヨッヘン・リントポールポジションを獲得し、ジャック・ブラバムジャッキー・イクスとともにフロントローに並んだ[注 2]ジャッキー・オリバーデニス・ハルムが2列目、クレイ・レガツォーニジョン・マイルズジャッキー・スチュワートが3列目に並ぶ。ロルフ・シュトメレンはアクシデントによりマシンが大破し、以後のセッションの参加を見合わせた。ブライアン・レッドマンも後輪のハブが故障し[6]、トランスミッションの部品に不具合があると判明したため、決勝への出走を断念した[3]

予選結果

順位 No. ドライバー コンストラクター タイム グリッド
1 5 ヨッヘン・リント ロータス-フォード 1:24.8 - 1
2 17 ジャック・ブラバム ブラバム-フォード 1:24.8 0.0 2
3 3 ジャッキー・イクス フェラーリ 1:25.1 +0.3 3
4 23 ジャッキー・オリバー BRM 1:25.6 +0.8 4
5 9 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 1:25.6 +0.8 5
6 4 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 1:25.8 +1.0 6
7 6 ジョン・マイルズ ロータス-フォード 1:25.9 +1.1 7
8 1 ジャッキー・スチュワート マーチ-フォード 1:26.0 +1.2 8
9 26 マリオ・アンドレッティ マーチ-フォード 1:26.2 +1.4 9
10 18 ロルフ・シュトメレン ブラバム-フォード 1:26.3 +1.5 DNS 1
11 7 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 1:26.5 +1.7 10
12 32 ダン・ガーニー マクラーレン-フォード 1:26.6 +1.8 11
13 8 アンリ・ペスカロロ マトラ 1:26.7 +1.9 12
14 27 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 1:26.8 +2.0 13
15 2 フランソワ・セベール マーチ-フォード 1:26.8 +2.0 14
16 22 ペドロ・ロドリゲス BRM 1:26.9 +2.1 15
17 24 ジョージ・イートン BRM 1:26.9 +2.1 16
18 16 クリス・エイモン マーチ-フォード 1:27.0 +2.2 17
19 11 アンドレア・デ・アダミッチ マクラーレン-アルファロメオ 1:27.1 +2.3 18
20 20 ジョン・サーティース サーティース-フォード 1:27.7 +2.9 19
21 15 ジョー・シフェール マーチ-フォード 1:28.0 +3.2 20
22 28 エマーソン・フィッティパルディ ロータス-フォード 1:28.1 +3.3 21
23 14 グラハム・ヒル ロータス-フォード 1:28.4 +3.6 22
24 29 ピート・ラブリー ロータス-フォード 1:30.3 +5.5 23
25 25 ブライアン・レッドマン デ・トマソ-フォード 1:32.8 +8.0 DNS 2
ソース:[11][12]
追記
  • ^1 - シュトメレンはアクシデントによりマシンが大破し、決勝への出走を見合わせた[6]
  • ^2 - レッドマンはマシントラブルが発生したため、決勝への出走を見合わせた[6]

決勝

レース開始直前にアンドレア・デ・アダミッチマクラーレン・M7Dが燃料漏れに見舞われ、決勝に出走できなくなった[3]

スタート直後、ジャッキー・イクスは1コーナーのパドック・ヒル・ベントでジャック・ブラバムに並び、2コーナーのドルイド・ベントでブラバムを抜いて首位に立った。イクスは6周目まで首位を走行したが、7周目の1コーナーでトランスミッションが壊れてリタイアした。同時にヨッヘン・リントがブラバムを抜いて首位に浮上する。ブラバムも応戦し、レースのほとんどの時間でリントとブラバムの接近戦が続いた。ジャッキー・オリバーはレースのほとんどで3位を走行していたが、58周目にエンジンが壊れてリタイアした。これにより、デニス・ハルムが3位に浮上した。69周目にリントがギアチェンジを誤り、ブラバムが首位に立つ。このままブラバムがレースを制するかに見えたが、最終ラップの最終コーナーでガス欠に見舞われスローダウンしてしまい、既に13秒の差が付いていたリントがブラバムを抜き、首位でフィニッシュした。ブラバムはスローダウンしながらなんとか2位でチェッカーを受けた。ハルムはブラバムを抜くにはあまりにも差が付きすぎていたため、3位のままレースを終えた[6]クレイ・レガツォーニはF1デビュー戦のオランダGPに続いて4位に入賞した[13]

レース後の車検でリントのリアウィングの高さが違反と判断されて失格となったが、再検査によって3時間後に失格処分が取り消され、リントの3連勝が確定した[2]

レース結果

順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 グリッド ポイント
1 5 ヨッヘン・リント ロータス-フォード 80 1:57:02.0 1 9
2 17 ジャック・ブラバム ブラバム-フォード 80 +32.9 2 6
3 9 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 80 +54.4 5 4
4 4 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 80 +54.8 6 3
5 16 クリス・エイモン マーチ-フォード 79 +1 Lap 17 2
6 14 グラハム・ヒル ロータス-フォード 79 +1 Lap 22 1
7 2 フランソワ・セベール マーチ-フォード 79 +1 Lap 14
8 28 エマーソン・フィッティパルディ ロータス-フォード 78 +2 Laps 21
9 27 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 72 +8 Laps 13
NC 29 ピート・ラブリー ロータス-フォード 69 規定周回数不足 23
Ret 32 ダン・ガーニー マクラーレン-フォード 60 油圧 11
Ret 22 ペドロ・ロドリゲス BRM 58 アクシデント 15
Ret 23 ジャッキー・オリバー BRM 54 エンジン 4
Ret 1 ジャッキー・スチュワート マーチ-フォード 52 クラッチ 8
Ret 20 ジョン・サーティース サーティース-フォード 51 油圧 19
Ret 8 アンリ・ペスカロロ マトラ 41 アクシデント 12
Ret 7 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 24 ホイール 10
Ret 26 マリオ・アンドレッティ マーチ-フォード 21 サスペンション 9
Ret 15 ジョー・シフェール マーチ-フォード 19 サスペンション 20
Ret 6 ジョン・マイルズ ロータス-フォード 15 エンジン 7
Ret 24 ジョージ・イートン BRM 10 油圧 16
Ret 3 ジャッキー・イクス フェラーリ 6 トランスミッション 3
DNS 11 アンドレア・デ・アダミッチ マクラーレン-アルファロメオ 燃料漏れ 18
DNS 18 ロルフ・シュトメレン ブラバム-フォード 予選でアクシデント
DNS 25 ブライアン・レッドマン デ・トマソ-フォード トランスミッション
ソース:[14]
優勝者ヨッヘン・リントの平均速度[10]
174.925 km/h (108.693 mph)
ファステストラップ[15]
ラップリーダー[16]
太字は最多ラップリーダー

第7戦終了時点のランキング

  • : トップ5のみ表示。前半7戦のうちベスト6戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。

脚注

注釈

  1. ^ この頃、DFVエンジンはクランクシャフトの品質不良により慢性的な不足状態を招いていた。
  2. ^ 本レースのスターティンググリッドは3-2-3。

出典

  1. ^ (林信次 1995, p. 131)
  2. ^ a b c Jenkinson, Denis [in 英語] (August 1970). "23rd British Grand Prix: An RAC Nonsense". Motor Sport. p. 22. 2017年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月31日閲覧
  3. ^ a b c Britain 1970”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  4. ^ (林信次 1995, p. 23)
  5. ^ (林信次 1995, p. 107)
  6. ^ a b c d e f British GP, 1970”. grandprix.com. 2020年1月1日閲覧。
  7. ^ (林信次 1995, p. 113)
  8. ^ (ダグ・ナイ 1989, p. 212)
  9. ^ Britain 1970 - Race entrants”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  10. ^ a b c Britain 1970 - Result”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  11. ^ Britain 1970 - Qualifications”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  12. ^ Britain 1970 - Starting grid”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  13. ^ (アラン・ヘンリー 1989, p. 256)
  14. ^ 1970 British Grand Prix”. formula1.com. 2013年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月22日閲覧。
  15. ^ Britain 1970 - Best laps”. STATS F1. 2020年1月3日閲覧。
  16. ^ Britain 1970 - Laps led”. STATS F1. 2020年1月3日閲覧。
  17. ^ a b Britain 1970 - Championship”. STATS F1. 2019年3月13日閲覧。

参照文献

外部リンク

前戦
1970年フランスグランプリ
FIA F1世界選手権
1970年シーズン
次戦
1970年ドイツグランプリ
前回開催
1969年イギリスグランプリ
イギリスグランプリ 次回開催
1971年イギリスグランプリ



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