1972年スペイングランプリとは? わかりやすく解説

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1972年スペイングランプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 03:30 UTC 版)

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 1972年スペイングランプリ
レース詳細
1972年F1世界選手権全12戦の第2戦
日程 1972年5月1日
正式名称 XVIII Gran Premio de España
開催地 ハラマ・サーキット
スペイン マドリード
コース 恒久的レース施設
コース長 3.404 km (2.115 mi)
レース距離 90周 306.360 km (190.363 mi)
決勝日天候 曇一時雨(ドライ)[1]
ポールポジション
ドライバー フェラーリ
タイム 1:18.43
ファステストラップ
ドライバー ジャッキー・イクス フェラーリ
タイム 1:21.01 (52周目)
決勝順位
優勝 ロータス-フォード
2位 フェラーリ
3位 フェラーリ

1972年スペイングランプリ (: 1972 Spanish Grand Prix) は、1972年のF1世界選手権第3戦として、1972年5月1日ハラマ・サーキットで開催された。

レースは90周で行われ、3番グリッドからスタートしたロータスエマーソン・フィッティパルディが優勝した。フェラーリジャッキー・イクスが2位、チームメイトのクレイ・レガツォーニが3位となった。

エマーソン・フィッティパルディの兄ウィルソン・フィッティパルディブラバムからF1デビューを果たし、F1史上初めて兄弟が同時に出走したレースとなった[2][注 1]

レース前

前戦南アフリカGPから2ヶ月空き、その間に非選手権レースが3戦行われた。3月19日ブランズ・ハッチで開催されたレース・オブ・チャンピオンズ英語版F5000と混走)は、ロータスエマーソン・フィッティパルディが優勝した。3月30日インテルラゴス・サーキットで開催された第1回ブラジルグランプリ英語版[注 2]は、ブラバムカルロス・ロイテマンが優勝した。4月23日シルバーストン・サーキットで開催されたBRDCインターナショナル・トロフィー英語版(F5000と混走)は、ロータスのエマーソン・フィッティパルディが優勝した。ティレルフェラーリはこの3戦には参加しなかった[3]。フェラーリはこの間、312B2のテスト走行と改良を試行錯誤しながら進め、リアウィングが大きくなりエンジンオイルの冷却装置が移設された[4]

ロイテマンは4月3日スラクストン・サーキットで行われたF2レースでクラッシュし、手首を骨折した[1][5][6]

エントリー

ブラバムカルロス・ロイテマンが負傷のため、ウィルソン・フィッティパルディが代走を務める。グラハム・ヒルBT34のフロント部分をラルフ・ベラミー英語版が改造した新車BT37[7]をドライブする[1]

ヨーロッパラウンド初戦を迎え、ブラバム以外にも新車を投入したチームがあった。マーチアルファロメオ/マーチ製のギアボックス[注 3]をエンジンとディファレンシャルの間に置き、できるだけ重量物を中央に集めた721Xを投入した。一方、プライベートチームから参加するマイク・ボイトラー721Gを走らせたが、これはF2マシンの722にDFVエンジンを搭載し、F1用のリアアクスルを装備したものであった[8][1]BRMは後方に重量の大半をかけたP180を投入したが[9]ジャン=ピエール・ベルトワーズはP180を気に入らず、ピーター・ゲシンのみがP180を使用し、ベルトワーズ、ハウデン・ガンレイレイネ・ウィセル、そして地元出身のアレックス・ソラー=ロイグ英語版は従来型のP160Bを使用する[1]

エントリーリスト

チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
エルフ・チーム・ティレル 1 ジャッキー・スチュワート ティレル 003 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
3 フランソワ・セベール 002
STP・マーチ・レーシングチーム 2 ロニー・ピーターソン マーチ 721X フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
24 ニキ・ラウダ
スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 4 ジャッキー・イクス フェラーリ 312B2 フェラーリ 001/1 3.0L F12 F
6 クレイ・レガツォーニ
7 マリオ・アンドレッティ
ジョン・プレイヤー・チーム・ロータス 5 エマーソン・フィッティパルディ ロータス 72D フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
21 デビッド・ウォーカー
マールボロ・BRM 8 ピーター・ゲシン BRM P180 BRM P142 3.0L V12 F
10 レイネ・ウィセル P160B
19 ジャン=ピエール・ベルトワーズ
25 ハウデン・ガンレイ
エスパーニャ・マールボロ・BRM 28 アレックス・ソラー=ロイグ
エキップ・マトラ・スポール 9 クリス・エイモン マトラ MS120C マトラ MS72 3.0L V12 G
ヤードレー・チーム・マクラーレン 11 デニス・ハルム マクラーレン M19A フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
20 ピーター・レブソン
ブルックボンド・オクソ・チーム・サーティース 12 ティム・シェンケン サーティース TS9B フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
15 マイク・ヘイルウッド
チェラミカ・パニョッシン・チーム・サーティース 26 アンドレア・デ・アダミッチ
チーム・ウィリアムズ・モチュール 14 アンリ・ペスカロロ マーチ 721 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
29 カルロス・パーチェ 711
チーム・アイフェラント・キャラバンズ 16 ロルフ・シュトメレン アイフェラント E21 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
モーターレーシング・ディベロップメンツ・リミテッド 18 グラハム・ヒル ブラバム BT37 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
22 ウィルソン・フィッティパルディ BT33
クラーク=モーダウント=ガスリー・レーシング 23 マイク・ボイトラー マーチ 721G フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
マルティーニ・レーシングチーム 27 ナンニ・ギャリ 1 テクノ PA123/3 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
ソース:[10]
追記
  • ^1 - マシンが準備できず欠場[11]

予選

金曜日から日曜日までテスト走行及び予選が行われた[1]

フェラーリ・312B2の改良が功を奏し[4]ジャッキー・イクスポールポジションを獲得した。2番手のデニス・ハルムマクラーレン)、3番手のエマーソン・フィッティパルディロータス)までの3人がフロントローに並ぶ[注 4]ジャッキー・スチュワートティレル)は4番手で、マリオ・アンドレッティフェラーリ)とともに2列目で並び、3列目はクリス・エイモンマトラ)、ジャン=ピエール・ベルトワーズBRM)、クレイ・レガツォーニ(フェラーリ)で構成された[3]

予選結果

順位 No. ドライバー コンストラクター タイム グリッド
1 4 ジャッキー・イクス フェラーリ 1:18.43 - 1
2 11 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 1:19.18 +0.75 2
3 5 エマーソン・フィッティパルディ ロータス-フォード 1:19.26 +0.83 3
4 1 ジャッキー・スチュワート ティレル-フォード 1:19.33 +0.90 4
5 7 マリオ・アンドレッティ フェラーリ 1:19.39 +0.96 5
6 9 クリス・エイモン マトラ 1:19.52 +1.09 6
7 19 ジャン=ピエール・ベルトワーズ BRM 1:19.57 +1.14 7
8 6 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 1:19.71 +1.28 8
9 2 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 1:19.86 +1.43 9
10 10 レイネ・ウィセル BRM 1:19.89 +1.46 10
11 20 ピーター・レブソン マクラーレン-フォード 1:20.11 +1.68 11
12 3 フランソワ・セベール ティレル-フォード 1:20.50 +2.07 12
13 26 アンドレア・デ・アダミッチ サーティース-フォード 1:20.79 +2.36 13
14 22 ウィルソン・フィッティパルディ ブラバム-フォード 1:20.83 +2.40 14
15 15 マイク・ヘイルウッド サーティース-フォード 1:20.97 +2.54 15
16 29 カルロス・パーチェ マーチ-フォード 1:21.00 +2.57 16
17 16 ロルフ・シュトメレン アイフェラント-フォード 1:21.04 +2.61 17
18 12 ティム・シェンケン サーティース-フォード 1:21.06 +2.63 18
19 14 アンリ・ペスカロロ マーチ-フォード 1:21.24 +2.81 19
20 25 ハウデン・ガンレイ BRM 1:21.43 +3.00 20
21 8 ピーター・ゲシン BRM 1:22.43 +4.00 21
22 28 アレックス・ソラー=ロイグ BRM 1:22.57 +4.14 22
23 18 グラハム・ヒル ブラバム-フォード 1:22.59 +4.16 23
24 21 デビッド・ウォーカー ロータス-フォード 1:22.74 +4.31 24
25 24 ニキ・ラウダ マーチ-フォード 1:24.96 +6.53 25
26 23 マイク・ボイトラー マーチ-フォード 1:25.48 +7.05 DNQ
ソース:[12][13]
追記
  • スターティンググリッドは25台に制限

決勝

レースが行われる月曜日の朝に雨が降り、レース開始直前も霧雨が降っていた。しかし、レインタイヤを使用するほどではなく、全車スリックタイヤを選択した[1]

スタートでデニス・ハルムジャッキー・スチュワートクレイ・レガツォーニを抑えてトップに立ち、ジャッキー・イクスエマーソン・フィッティパルディが続いた。その後、ハルムはギアボックスにトラブルを抱え始め、スチュワート、レガツォーニを抜いていたイクスとE.フィッティパルディ、そしてレガツォーニにも抜かれてしまった。イクスはハルムを抜く際にE.フィッティパルディに追い越された。3周後、E.フィッティパルディはスチュワートを抜いてトップに立った。スタート前にコックピットから燃料漏れがあり、2周目には消火器が不意に作動してしまったため、E.フィッティパルディは苦戦していた。その数周後にスチュワートはイクスにも抜かれて、しばらくの間上位3台の順位は変わらなかった[3]

40周目には雨脚が強くなったがレインタイヤに変えるまでには至らず、50周目には雨が止み路面が乾いていった[1]。48周目に4位のハルムがエンジントラブルでリタイアしたことでレガツォーニは順位を上げ、70周目にはスチュワートがミスをしてバリアにスピンしてリタイアした[3]

本格的なシーズンインを前にした非選手権レースで勝ちぐせを身に着けたE.フィッティパルディは[14]、自身及び前年未勝利に終わったロータス1970年アメリカGP以来1年半ぶりの優勝をもたらした[15][16]。イクスは力及ばず2位[4]、レガツォーニは3位で、フェラーリ勢が表彰台の2つを占めた。アンドレア・デ・アダミッチサーティース)は4位で初ポイントを獲得した。ここまでの4台は全てファイアストン勢で、目まぐるしい気象条件でグッドイヤーより優れたパフォーマンスを示した。グッドイヤー勢の最上位は5位のピーター・レブソンマクラーレン)で[1]ウィリアムズの新鋭カルロス・パーチェはF1参戦2戦目で6位に入賞し、初ポイントを獲得した[3]

E.フィッティパルディはこの勝利でドライバーズポイントを15点とし、ハルムに並んだ[1]

レース結果

順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 グリッド ポイント
1 5 エマーソン・フィッティパルディ ロータス-フォード 90 2:03:41.2 3 9
2 4 ジャッキー・イクス フェラーリ 90 +18.92 1 6
3 6 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 89 +1 Lap 8 4
4 26 アンドレア・デ・アダミッチ サーティース-フォード 89 +1 Lap 13 3
5 20 ピーター・レブソン マクラーレン-フォード 89 +1 Lap 11 2
6 29 カルロス・パーチェ マーチ-フォード 89 +1 Lap 16 1
7 22 ウィルソン・フィッティパルディ ブラバム-フォード 88 +2 Laps 14
8 12 ティム・シェンケン サーティース-フォード 88 +2 Laps 18
9 21 デビッド・ウォーカー ロータス-フォード 87 燃料切れ 24
10 18 グラハム・ヒル ブラバム-フォード 86 +4 Laps 23
11 14 アンリ・ペスカロロ マーチ-フォード 86 +4 Laps 19
Ret 1 ジャッキー・スチュワート ティレル-フォード 69 アクシデント 4
Ret 9 クリス・エイモン マトラ 66 ギアボックス 6
Ret 3 フランソワ・セベール ティレル-フォード 65 イグニッション 12
Ret 8 ピーター・ゲシン BRM 65 エンジン 21
Ret 11 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 48 ギアボックス 2
Ret 25 ハウデン・ガンレイ BRM 38 エンジン 20
Ret 10 レイネ・ウィセル BRM 24 アクシデント 10
Ret 7 マリオ・アンドレッティ フェラーリ 23 油圧 5
Ret 15 マイク・ヘイルウッド サーティース-フォード 20 電気系統 15
Ret 2 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 16 燃料漏れ 9
Ret 16 ロルフ・シュトメレン アイフェラント-フォード 15 アクシデント 17
Ret 19 ジャン=ピエール・ベルトワーズ BRM 9 ギアボックス 7
Ret 24 ニキ・ラウダ マーチ-フォード 7 ディファレンシャル 25
Ret 28 アレックス・ソラー=ロイグ BRM 6 アクシデント 22
DNQ 23 マイク・ボイトラー マーチ-フォード 予選不通過
ソース:[17]
優勝者エマーソン・フィッティパルディの平均速度[11]
148.614 km/h (92.344 mph)
ファステストラップ[18]
ラップリーダー[19]
太字は最多ラップリーダー
達成された主な記録[1]

第3戦終了時点のランキング

  • : トップ5のみ表示。前半6戦のうちベスト5戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ これ以前に兄弟でF1に参戦したドライバーはジミー・スチュワート英語版(1953年)/ジャッキー・スチュワート(1965-1973年)、ペドロ・ロドリゲス(1963-1971年)/リカルド・ロドリゲス(1961-1962年)の2組だが、いずれも兄弟で参戦時期が異なっている。
  2. ^ ブラジルGPは翌1973年からF1カレンダーに組み込まれた。
  3. ^ 他のDFVエンジン勢は全てヒューランド製のギアボックスを使用していた。
  4. ^ 本レースのスターティンググリッドは3-2-3。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k Spain 1972”. STATS F1. 2020年4月7日閲覧。
  2. ^ (林信次 1993, p. 42)
  3. ^ a b c d e Spanish GP, 1972”. grandprix.com. 2020年4月7日閲覧。
  4. ^ a b c (アラン・ヘンリー 1989, p. 267)
  5. ^ Thruxton, 3 Apr 1972 « European Formula 2 (2000cc)”. OldRacingCars.com. 2020年4月7日閲覧。
  6. ^ Spanish GP, 1972”. www.grandprix.com. 2019年8月6日閲覧。
  7. ^ (林信次 1993, p. 49)
  8. ^ (林信次 1993, p. 42,47)
  9. ^ (林信次 1993, p. 42,46)
  10. ^ Spain 1972 - Race entrants”. STATS F1. 2020年4月8日閲覧。
  11. ^ a b Spain 1972 - Result”. STATS F1. 2020年4月11日閲覧。
  12. ^ Spain 1972 - Qualifications”. STATS F1. 2020年4月8日閲覧。
  13. ^ Spain 1972 - Starting grid”. STATS F1. 2020年4月8日閲覧。
  14. ^ (林信次 1993, p. 35)
  15. ^ 戦績:E.フィッティパルディ”. F1 DataWeb. 2020年4月9日閲覧。
  16. ^ 戦績:ロータス”. F1 DataWeb. 2020年4月9日閲覧。
  17. ^ 1972 Spanish Grand Prix”. formula1.com. 2014年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月22日閲覧。
  18. ^ Spain 1972 - Best laps”. STATS F1. 2020年4月11日閲覧。
  19. ^ Spain 1972 - Laps led”. STATS F1. 2020年4月11日閲覧。
  20. ^ 戦績:W.フィッティパルディ”. F1 DataWeb. 2020年4月11日閲覧。
  21. ^ 戦績:A.デ・アダミッチ”. F1 DataWeb. 2020年4月11日閲覧。
  22. ^ 戦績:C.パーチェ”. F1 DataWeb. 2020年4月11日閲覧。
  23. ^ 戦績:A.ソーラー=ロイグ”. F1 DataWeb. 2020年4月11日閲覧。
  24. ^ a b Spain 1972 - Championship”. STATS F1. 2019年3月20日閲覧。

参照文献

外部リンク


前戦
1972年南アフリカグランプリ
FIA F1世界選手権
1972年シーズン
次戦
1972年モナコグランプリ
前回開催
1971年スペイングランプリ
スペイングランプリ 次回開催
1973年スペイングランプリ



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