1970年カナダグランプリとは? わかりやすく解説

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1970年カナダグランプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 22:49 UTC 版)

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 1970年カナダグランプリ
レース詳細
1970年F1世界選手権全13戦の第11戦
日程 1970年9月20日
正式名称 X Canadian Grand Prix
開催地 モントランブラン・サーキット
カナダ ケベック州 モン・トランブラン
コース 恒久的レース施設
コース長 4.265 km (2.650 mi)
レース距離 90周 383.850 km (238.501 mi)
決勝日天候 曇のち晴(ドライ)[1]
最高気温: 23.3 °C (73.9 °F)
最大風速: 10.1 km/h (6.3 mph)[2]
ポールポジション
ドライバー ティレル-フォード
タイム 1:31.5
ファステストラップ
ドライバー クレイ・レガツォーニ フェラーリ
タイム 1:32.2 (75[3]周目)
決勝順位
優勝 フェラーリ
2位 フェラーリ
3位 マーチ-フォード

1970年カナダグランプリ (1970 Canadian Grand Prix) は、1970年のF1世界選手権第11戦として、1970年9月20日モントランブラン・サーキットで開催された。

レースは90周で行われ、フェラーリジャッキー・イクスが2番手スタートから優勝した。チームメイトのクレイ・レガツォーニが2位、マーチクリス・エイモンが3位となった。

背景

前戦イタリアGPでのヨッヘン・リントの事故死は、F1の歴史の中で前例のない状況を作り出した。リントは亡くなるまでに45点を獲得し、ジャック・ブラバムジャッキー・スチュワートに20点の差を付けてドライバーズランキングの首位を独走していた。ブラバムとスチュワートに加え、デニス・ハルムクレイ・レガツォーニジャッキー・イクスの3人もリントを上回る可能性がある[4]。特にイクスとレガツォーニのフェラーリ勢はオーストリアGPイタリアGPを制した勢いがあり、既に残り3戦でリントとロータスを逆転してチャンピオンを獲得できる可能性は低かったとはいえ、本レースで1-2フィニッシュを達成できればその可能性も現実味を帯びてくる状況であった[5]。いずれにしても、本レースでリントとの差を18点以内に縮めない限り、リントを上回る可能性はなくなる。しかし、FIAが亡くなったドライバーに対し、実際にチャンピオンを授与するかどうかはまだ決まっていなかった[4]

エントリー

前戦イタリアGPヨッヘン・リントを失ったロータスは、本レースを欠場した。一方、イタリアGPでロータス勢とともに撤退したロブ・ウォーカーは出場し、グラハム・ヒルは改めてロータス・72Cを走らせる[6]オーストリアGPとイタリアGPで連勝したフェラーリは、ジャッキー・イクスクレイ・レガツォーニの2台体制に戻った[5]ティレルは極秘裏に自製F1マシンを制作し、夏に新車001が完成した。今季の残り3戦はエースのジャッキー・スチュワートに001を託し、フランソワ・セベールは従来のマーチ・701を走らせる[7]

エントリーリスト

チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
ティレル・レーシング・オーガニゼーション 2 フランソワ・セベール マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
3 ジャッキー・スチュワート ティレル 001
チーム・サーティース 4 ジョン・サーティース サーティース TS7 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
ブルース・マクラーレン・モーターレーシング 5 デニス・ハルム マクラーレン M14A フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
6 ピーター・ゲシン
8 アンドレア・デ・アダミッチ M14D アルファロメオ T33 3.0L V8
ブルックボンド・オクソ・レーシング/ロブ・ウォーカー 9 グラハム・ヒル ロータス 72C フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
フランク・ウィリアムズ・レーシングカーズ 10 ティム・シェンケン デ・トマソ 505 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
モーターレーシング・ディベロップメンツ・リミテッド 11 ジャック・ブラバム ブラバム BT33 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
アウト・モトール・ウント・シュポルト 12 ロルフ・シュトメレン
ヤードレー・チーム・BRM 14 ペドロ・ロドリゲス BRM P153 BRM P142 3.0L V12 D
15 ジャッキー・オリバー
16 ジョージ・イートン
スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 18 ジャッキー・イクス フェラーリ 312B フェラーリ 001 3.0L F12 F
19 クレイ・レガツォーニ
マーチ・エンジニアリング 20 クリス・エイモン マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
21 ジョー・シフェール
エキップ・マトラ・エルフ 23 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ MS120 マトラ MS12 3.0L V12 G
24 アンリ・ペスカロロ
コーリン・クラッベ・レーシング 26 ロニー・ピーターソン マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
ソース:[8]

予選

フェラーリは最近のレースを支配していたが、F1デビュー戦のティレル・001を駆るジャッキー・スチュワートがフェラーリ勢を退け、ポールポジションを獲得した。フェラーリ勢はジャッキー・イクスが2番手でフロントローを獲得し、クレイ・レガツォーニは3番手で、スチュワートのチームメイトでマーチ・701を駆るフランソワ・セベールとともに2列目を得た。ジョン・サーティースは自製マシンのサーティース・TS7で5番手に入り、クリス・エイモンとともに3列目からスタートする[6]デニス・ハルムはエンジンに問題が発生して15番手、ブラバム勢はハンドリングの問題でロルフ・シュトメレンが18番手、ジャック・ブラバムは19番手に沈み、唯一となったロータス・72を走らせるグラハム・ヒルは最下位に終わった[4]

予選結果

順位 No. ドライバー コンストラクター タイム グリッド
1 3 ジャッキー・スチュワート ティレル-フォード 1:31.5 - 1
2 18 ジャッキー・イクス フェラーリ 1:31.6 +0.1 2
3 19 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 1:31.9 +0.4 3
4 2 フランソワ・セベール マーチ-フォード 1:32.4 +0.9 4
5 4 ジョン・サーティース サーティース-フォード 1:32.6 +1.1 5
6 20 クリス・エイモン マーチ-フォード 1:32.6 +1.1 6
7 14 ペドロ・ロドリゲス BRM 1:32.7 +1.2 7
8 24 アンリ・ペスカロロ マトラ 1:32.9 +1.4 8
9 16 ジョージ・イートン BRM 1:32.9 +1.4 9
10 15 ジャッキー・オリバー BRM 1:33.1 +1.6 10
11 6 ピーター・ゲシン マクラーレン-フォード 1:33.2 +1.7 11
12 8 アンドレア・デ・アダミッチ マクラーレン-アルファロメオ 1:33.2 +1.7 12
13 23 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 1:33.4 +1.9 13
14 21 ジョー・シフェール マーチ-フォード 1:33.5 +2.0 14
15 5 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 1:33.9 +2.4 15
16 26 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 1:34.4 +2.9 16
17 10 ティム・シェンケン デ・トマソ-フォード 1:34.6 +3.1 17
18 12 ロルフ・シュトメレン ブラバム-フォード 1:34.7 +3.2 18
19 11 ジャック・ブラバム ブラバム-フォード 1:35.4 +3.9 19
20 9 グラハム・ヒル ロータス-フォード 1:35.8 +4.3 20
ソース:[9][10]

決勝

スタートでジャッキー・スチュワートがリードし、ジャッキー・イクスが追いかけ、7番手スタートのペドロ・ロドリゲスジョン・サーティースフランソワ・セベールクレイ・レガツォーニを抜いて3位に浮上した。スチュワートはリードを広げ始め、ティレルの新車001が非常に競争力のあるマシンということを証明したが、32周目にスタブアクスルの故障でリタイアした。これでイクスがトップとなり、サーティースがミスファイアでピットインを余儀なくされた後にセベールとロドリゲスを抜いて2位に浮上したレガツォーニに30秒近い差を付け、フェラーリが1-2体制を築いた。クリス・エイモンはセベールを抜いて3位に浮上し、セベールはリアダンパーのトラブルでピットインを余儀なくされた[6]

フェラーリは1-2フィニッシュを達成し、レースを制したイクスは合計ポイントを28点に積み上げてドライバーズランキング2位に浮上したが、首位のヨッヘン・リントは亡くなるまでに45点を獲得しているため、リントのポイントを上回ってチャンピオンを獲得するには、残り2戦で連勝する必要がある[6]。なお、イクス以外のドライバーはこの時点でリントを逆転できる可能性がなくなった。コンストラクターズチャンピオン争いは、本レースを欠場したロータスは50点のまま依然首位をキープしているが[注 1]オーストリアGPからの連勝を3に伸ばしたフェラーリがマーチと同じ43点で2位に順位を上げ、首位ロータスとの差を7点まで縮めた[4]

レース結果

順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 グリッド ポイント
1 18 ジャッキー・イクス フェラーリ 90 2:21:18.4 2 9
2 19 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 90 +14.8 3 6
3 20 クリス・エイモン マーチ-フォード 90 +57.9 6 4
4 14 ペドロ・ロドリゲス BRM 89 +1 Lap 7 3
5 4 ジョン・サーティース サーティース-フォード 89 +1 Lap 5 2
6 6 ピーター・ゲシン マクラーレン-フォード 88 +2 Laps 11 1
7 24 アンリ・ペスカロロ マトラ 87 +3 Laps 8
8 23 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 85 クラッチ 13
9 2 フランソワ・セベール マーチ-フォード 85 +5 Laps 4
10 16 ジョージ・イートン BRM 85 +5 Laps 9
NC 10 ティム・シェンケン デ・トマソ-フォード 79 規定周回数不足 17
NC 9 グラハム・ヒル ロータス-フォード 77 規定周回数不足 20
Ret 8 アンドレア・デ・アダミッチ マクラーレン-アルファロメオ 69 油圧 12
NC 26 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 65 規定周回数不足 16
Ret 5 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 58 エンジン 15
Ret 11 ジャック・ブラバム ブラバム-フォード 57 オイル漏れ 19
NC 15 ジャッキー・オリバー BRM 52 規定周回数不足 10
Ret 3 ジャッキー・スチュワート ティレル-フォード 31 車軸 1
Ret 12 ロルフ・シュトメレン ブラバム-フォード 22 ハンドリング 18
Ret 21 ジョー・シフェール マーチ-フォード 21 エンジン 14
ソース:[11]
優勝者ジャッキー・イクスの平均速度[12]
162.986 km/h (101.275 mph)
ファステストラップ[3]
ラップリーダー[13]
太字は最多ラップリーダー

第11戦終了時点のランキング

  • : トップ5のみ表示。前半7戦のうちベスト6戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ ロブ・ウォーカーグラハム・ヒルがロータスを走らせたが無得点に終わった。

出典

  1. ^ (林信次 1995, p. 132)
  2. ^ Weather information for the 1970 Canadian Grand Prix”. The Old Farmers' Almanac. 2013年11月17日閲覧。
  3. ^ a b Canada 1970 - Best laps”. STATS F1. 2020年1月11日閲覧。
  4. ^ a b c d Canada 1970”. STATS F1. 2020年1月8日閲覧。
  5. ^ a b (アラン・ヘンリー 1989, p. 258)
  6. ^ a b c d Canadian GP, 1970”. grandprix.com. 2020年1月8日閲覧。
  7. ^ (林信次 1995, p. 112)
  8. ^ Canada 1970 - Race entrants”. STATS F1. 2020年1月11日閲覧。
  9. ^ Canada 1970 - Qualifications”. STATS F1. 2020年1月11日閲覧。
  10. ^ Canada 1970 - Starting grid”. STATS F1. 2020年1月11日閲覧。
  11. ^ 1970 Canadian Grand Prix”. formula1.com. 2013年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月22日閲覧。
  12. ^ Canada 1970 - Result”. STATS F1. 2020年1月11日閲覧。
  13. ^ Canada 1970 - Laps led”. STATS F1. 2020年1月11日閲覧。
  14. ^ a b Canada 1970 - Championship”. STATS F1. 2019年3月14日閲覧。

参照文献

外部リンク


前戦
1970年イタリアグランプリ
FIA F1世界選手権
1970年シーズン
次戦
1970年アメリカグランプリ
前回開催
1969年カナダグランプリ
カナダグランプリ 次回開催
1971年カナダグランプリ



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