高階差分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/13 01:46 UTC 版)
微分の有限差分近似と対応して、高階微分の有限差分近似が得られる。例えば、中心差分の式を f'(x+h/2) と f'(x−h/2) に対して考え、f' の微分の中心差分近似に適用すれば、f の二回微分の近似式として 二階中心差分 f ″ ( x ) ≈ δ h 2 [ f ] ( x ) h 2 = f ( x + h ) − 2 f ( x ) + f ( x − h ) h 2 {\displaystyle f''(x)\approx {\frac {\delta _{h}^{2}[f](x)}{h^{2}}}={\frac {f(x+h)-2f(x)+f(x-h)}{h^{2}}}} が得られる。同様にほかの差分公式を繰り返し適用すれば 二階前進差分 f ″ ( x ) ≈ Δ h 2 [ f ] ( x ) h 2 = f ( x + 2 h ) − 2 f ( x + h ) + f ( x ) h 2 . {\displaystyle f''(x)\approx {\frac {\Delta _{h}^{2}[f](x)}{h^{2}}}={\frac {f(x+2h)-2f(x+h)+f(x)}{h^{2}}}.} なども得られる。より一般にn-階前進、後退、中心差分はそれぞれ n-階前進差分 Δ h n [ f ] ( x ) = ∑ i = 0 n ( − 1 ) i ( n i ) f ( x + ( n − i ) h ) , {\displaystyle \Delta _{h}^{n}[f](x)=\sum _{i=0}^{n}(-1)^{i}{\binom {n}{i}}f(x+(n-i)h),} Δ n [ f ] ( x ) = ∑ k = 0 n ( n k ) ( − 1 ) n − k f ( x + k ) ( for h = 1 ) . {\displaystyle \Delta ^{n}[f](x)=\sum _{k=0}^{n}{\binom {n}{k}}(-1)^{n-k}f(x+k)\quad ({\text{for }}h=1).} n-階後退差分 ∇ h n [ f ] ( x ) = ∑ i = 0 n ( − 1 ) i ( n i ) f ( x − i h ) , {\displaystyle \nabla _{h}^{n}[f](x)=\sum _{i=0}^{n}(-1)^{i}{\binom {n}{i}}f(x-ih),} n-階中心差分 δ h n [ f ] ( x ) = ∑ i = 0 n ( − 1 ) i ( n i ) f ( x + ( n 2 − i ) h ) {\displaystyle \delta _{h}^{n}[f](x)=\sum _{i=0}^{n}(-1)^{i}{\binom {n}{i}}f\left(x+\left({\frac {n}{2}}-i\right)h\right)} で与えられる。上記において、(ni) は二項係数である(各 i に対する係数はパスカルの三角形の各行で与えられる)。 中心差分においては n が奇数のとき h が非整数倍されることに留意すべきである。これは離散化の幅を変えることになるため、しばしば問題になる。この問題は δn[f](x − h/2) と δn[f](x + h/2) との平均をとることで除くことができる。 数列に前進差分を施すことを、その数列の二項変換(英語版)と呼ぶことがあり、組合せ論的に興味深い様々な性質がある。前進差分をネールント–ライス積分を用いて評価することができる。このような種類の級数に対する積分表現は、積分が漸近展開や鞍点法で評価されることがしばしばあり、重要である(対照的に前進差分級数は、大きな n に対しては二項係数が急速に増大するため、数値的に評価することが極めて難しい)。 これら高階差分と微分との関係はそれぞれ直接的に d n f d x n ( x ) = Δ h n [ f ] ( x ) h n + O ( h ) = ∇ h n [ f ] ( x ) h n + O ( h ) = δ h n [ f ] ( x ) h n + O ( h 2 ) {\displaystyle {\frac {d^{n}f}{dx^{n}}}(x)={\frac {\Delta _{h}^{n}[f](x)}{h^{n}}}+O(h)={\frac {\nabla _{h}^{n}[f](x)}{h^{n}}}+O(h)={\frac {\delta _{h}^{n}[f](x)}{h^{n}}}+O(h^{2})} となる。高階微分はより良い近似を構成するためにも利用できる。上で述べたように、一階差分近似は h のオーダーの項を除いて一階微分を近似するものであるが、高階微分を組み合わせた Δ h [ f ] ( x ) − 1 2 Δ h 2 [ f ] ( x ) h = − f ( x + 2 h ) − 4 f ( x + h ) + 3 f ( x ) 2 h {\displaystyle {\frac {\Delta _{h}[f](x)-{\frac {1}{2}}\Delta _{h}^{2}[f](x)}{h}}=-{\frac {f(x+2h)-4f(x+h)+3f(x)}{2h}}} は f'(x) と h2 のオーダーの項しか違わない。これを示すには、先述のようにテイラー級数展開してもよいし、後述のように有限差分の汎函数計算を用いてもよい。 必要ならば、前進・後退・中心差分を混合して任意の点を有限差分の中心にすることができる。
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