高加減速車の試験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/03 08:57 UTC 版)
「阪神1001形電車」の記事における「高加減速車の試験」の解説
こうして一度は試験車としての役目を終えた1130であるが、今度は普通列車用の大型高性能車の試作車として、1956年に再改造された。台車、モーター、電動発電機といった主要機器は東芝製及び住友金属(台車)東洋電機製造(電装品)の2セットを用意し、途中で取り替えて比較した。また、この時は両側に電気ブレーキ撤去改造を施した1017・1018を組み込んで3連で試験が実施された。改造内容については以下のとおり。 制御器を東芝MC-1Aに換装。この制御器は前年からシカゴで長期試験中のゼネラル・エレクトリックMCM電動カム軸式制御器のライセンス生産品で、直並列制御、弱め界磁つきで発電ブレーキを常用し、強制通風方式を採用して主抵抗器と一体化することにより、制御器と主抵抗器の小型軽量化を図った。同時にブレーキ装置はHSC-Dに換装されている。 台車は、東芝製はTT-7、住友製はFS-204・FS-205で、これら3種を交換しながら試験した。東芝製のTT-7は高抗張力鋼板を使用した全溶接製の台車で、吊りリンクおよび揺れ枕なしで枕ばねの横剛性とオイルダンパによって揺動を吸収する構造になっており、一目でわかる特徴的な外観となっていた。住友製の台車はアルストムリンク式の軸箱支持機構を採用し、従来軸受にあったペデスタルをなくした。車輪径はどちらも低重心化を図るため、760mmとなった。 主電動機は東芝製がSE-524、東洋製がTDK-857Aで、いずれも端子電圧300V時1時間定格出力75kWで、これを高減速度のハイポイドギアで伝達する直角カルダン駆動方式であった。ただし、定格回転数が両者で異なるため、歯数比は東芝製が7.17、東洋製が8.17であった。なお、電動発電機は東芝製がCLG-310F、東洋製がTDK-343Aである。 パンタグラフを増設して2基搭載した。 1130と編成を組む1017・1018も制御器が日立MMC・L-50に換装された。ブレーキ装置も1130同様、HSC-Dに換装された可能性が高い。 試験は1957年にかけて実施され、このとき得られたデータは翌年登場した5001形 (初代)「ジェットカー」の製造に関して貴重なデータを提供した。台車や電装品の一部が5001形(初代)に転用されたほか、その際に住友製台車は空気バネに改造された。 こうして2度にわたる試験車としての大任を果たした1130は1957年8月に復元改造が実施され、パンタグラフは1基に戻り、台車及びモーター、ブレーキ装置も他の1121形と同じものに復元されたほか、制御器はPM-2Bに換装された。しかし、蛍光灯はそのまま使用された。1017・1018も同時に復元改造を実施されている。
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