順序基底と座標系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/20 10:42 UTC 版)
「基底 (線型代数学)」の記事における「順序基底と座標系」の解説
本ページでは簡単のため、主に基底は単なる集合として扱っており、各ベクトルの順序についての概念は含めていない。ただし、専門的な書籍では基底と呼んだ時にベクトルの順序も含めたうえで意味するとが多い。例えば、その場合には(v1, …, vn)と(vn, …, v1)は異なる基底とみなされる。 このような順序を含めた意味での基底を用いなければ、基底の変換と正則行列との対応が取れない。またベクトルを座標表現して扱うとき、「第一座標」・「第二座標」のようなお決まりの表現を用いるには、基底に特定の順序付けがされていないと意味を成さない。有限次元ベクトル空間ならば、最初の n-個の自然数を添字に用いて (v1, …, vn) のようにするのが典型的である。順序の概念を含めているかどうかの誤解を避けるために、順序付けられた基底は、順序基底 (ordered basis)、 標構 あるいは枠 (frame) とも呼ばれる。 V は体 F 上の n-次元ベクトル空間であるものとする。V の順序基底を一つ選ぶことは、座標空間 Fn から V への線型同型写像 φ を一つ選ぶことと等価である。これを見るのに Fn の標準基底が順序基底であることが利用できる。 まず、線型同型 φ: Fn → V が与えられているとき、V の順序基底 (vi)1≤i≤n を vi = φ(ei) for 1 ≤ i ≤ n で与えることができる。ただし (ei)1≤i≤n は Fn の標準基底である。 逆に、順序基底 (vi)1≤i≤n が与えられているとき、 x = x 1 e 1 + x 2 e 2 + ⋯ + x n e n ↦ φ ( x ) := x 1 v 1 + x 2 v 2 + ⋯ + x n v n {\displaystyle x=x_{1}\mathbf {e} _{1}+x_{2}\mathbf {e} _{2}+\cdots +x_{n}\mathbf {e} _{n}\mapsto \varphi (x):=x_{1}v_{1}+x_{2}v_{2}+\cdots +x_{n}v_{n}} で定まる φ: Fn → V が線型同型であることを見るのは難しくない。 これら二つの構成が互いに逆になっていることは明らかであるから、V の順序基底とFn から V への線型同型との間に一対一対応があることがわかる。 順序基底 (vi) によって定まる線型同型 φ の逆写像は V に「座標系」を定める。即ち、ベクトル v ∈ V に対して φ−1(v) = (a1, a2,...,an) ∈ Fn であるならば、各成分 aj = aj(v) は v = a1(v) v1 + a2(v) v2 + ... + an(v) vn と書けるという意味で v の座標を与える。 ベクトル v を各成分 aj(v) へ写す各写像は、φ−1 が線型ゆえ、V から F への線型写像になる。即ちこれらは線型汎函数であり、またこれらは V の双対空間の基底を成し、双対基底と呼ばれる。
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