非強勢母音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 08:08 UTC 版)
非語頭音節の母音の存在は制限されており、ただ、非広母音と広母音の二路の対立のみが議論の余地なく再構可能である。実際のこの対立の実現は議論の対象となっており、ある見解はこれを母音調和ごとに [æ ɑ]・[i ɯ] の4つの異音で実現されていた二つの原音素母音 //a// と //i// であるとかんがえている。非広母音は、ほとんどの語派で弱化母音 [ə] として写映しており、ただ二つの語派のみが特別な形を見せる。 フィン諸語は母音調和に依存して /e/ または /ɤ/ をみせ、語頭では /i/ になる。 サーミ諸語では写映形の多様性を見せるが、これらの写映形はサーミ祖語の音素 *ë にさかのぼり、これはウラル祖語の *i と *ü の強勢母音中での写映形でもある。 母音弱化は普通の音韻変化である一方で、フィン諸語は具体的にはバルト諸語や早期ゲルマン諸語のような知られた弱化母音を持っていない言語群の傍層的(adstrate)影響があることで知られており、[ə] の音価は既にウラル祖語に可能性を残している。 これらの三つもしくは四つの語幹の形式はウラル祖語の中で確実に目立ったものであるが、他にもさらに珍しい形式が同様に存在している。これらは例えば「義理の妹/姉(“sister-in-law”)」のような親族名詞を含み、これらは *kalü としてフィン祖語とサモイェード祖語の両方で再構されている。Janhunen (1981) と Sammallahti (1988) はこれにかわりに *käliw のように、語末の両唇渡り音を再構している。 一般的なウラル祖語の非強勢母音の再構の困難さには多くのウラル諸語における強い弱化と消失が存している。特にウゴル諸語とペルム諸語においては、非強勢母音のほとんどの痕跡が基礎語の語根に残存していない。原初の二音節語根の構造は北西部のフィン諸語や西部のサモイェード諸語というさらに周辺的な集団によく保存されている。主要な非強勢母音のこれらでの対応を以下に示す。 ウラル祖語の非強勢母音の写映形ウラル祖語サーミ祖語フィン祖語サモイェード祖語備考*-a*-ē [eː] *-a [ɑ] *-å [ɒ] *-ä*-ä [æ] *-ä [æ] *-ə*-ë [ɤ] *-e ∅ 原初の狭母音の後 *-ə 原初の狭母音の後 モルドヴィン諸語とマリ語での発展はさらに複雑である。前者では、ウラル祖語の *-a と *-ä は通常は *-ə に弱化する。しかし *-a は語の最初の音節が *u を含んでいるときに一般に保存される。ウラル祖語の *-ə は他の一部の環境と同様に通常、開音節の後で消滅する。
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