電子構造と反応性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/28 20:04 UTC 版)
原子の内部構造は原子核と電子からなるが、他の原子と結合を形成したり反応したりするときには、電子が重要な役割を果たす。そして原子の中の電子はその性質は均一ではなく階層構造を形成している(記事 電子配置に詳しい)。すなわち原子の中の電子は電子殻と呼ばれるグループを形成している。 そもそも電子殻が構成されるのは、電子が量子力学に従う粒子であることが原因である。電子の持つエネルギーの値は階段状の不連続な値をとり、エネルギーの高い電子ほど原子核より遠い位置に存在する。言い換えると、エネルギーの状態が似通った電子が集まって電子殻が構成される。そして電子殻はエネルギーの低いものほど内側に、高いものほど外側に存在する。中でももっともエネルギーの高い、最外殻に存在する電子の一群を価電子と言い、他の原子と結合を形成するときの主役となる。そのため、原子の中で価電子の配置の仕方は元素の性質に直結している。価電子の配置の仕方が同じようであれば、同じような性質を示すことになるのである。 また、価電子よりも内側の電子殻に存在する電子は、よりエネルギーの高い価電子のすべてが他の原子と相互作用してからでないと結合や反応に関与しない。従って、最外殻よりも内側の電子殻は化学的に不活性な状態であり、閉殻と呼ばれる。 さて、さきほど電子のエネルギーは不連続な値をとり、その値の大小で広がり方が大きくも小さくもなると説明したが、エネルギーの値で区別される電子の状態を軌道と呼ぶ。すなわち、電子殻は1つあるいは複数の軌道から構成されている。ある原子は電気的に中性な状態ではその原子番号と同じだけの数の電子を含む。軌道には数字とアルファベットの組み合わせからなる以下に示すような名前が付いている。 K殻 — 1s L殻 — 2s 2p M殻 — 3s 3p 3d N殻 — 4s 4p 4d 4f O殻 — 5s 5p 5d 5f 5g 以降も同様に続く。そしてs軌道は1つ、p軌道は3つ、d軌道は5つ、f軌道は7つのエネルギーの等しい軌道からなる。パウリの排他原理のため、1つの軌道は2つまでの電子しか占めることができない。すなわちs軌道には最大2つ、p軌道には最大6つ、d軌道には最大10個、f軌道には最大14個までの電子が入ることができる。そして電子はエネルギーの最も低い軌道から順に占有していく。 各軌道のエネルギーの高さは低い方からおおまかには次のような順番になっている。 1s | 2s 2p | 3s 3p | 4s 3d 4p | 5s 4d 5p | 6s 4f 5d 6p | 7s 5f 6d 7p | … ここで区切り(|)の位置は比較的エネルギーの高さに大きな差がある位置を示す。ここに示したように1~3つ目までの区切りまでは区切りの中は同じ電子殻の軌道しか存在しない。しかし第4と第5の区切りでは1つ下の電子殻の軌道が含まれる。そして、第6と第7の区切りでは1つ下と2つ下の電子殻の軌道が含まれる。実はこの区切りが周期表の周期を表している。そして、周期表では第4周期で初めて遷移元素が現れ第6周期と第7周期でランタノイド系列とアクチノイド系列とが現れる。遷移元素やランタノイド系列の性質とこの軌道の構成との間には密接なつながりがある。
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