阿川大樹とは? わかりやすく解説

阿川大樹

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/29 18:17 UTC 版)

阿川 大樹
誕生 1954年
日本 東京都
職業 小説家推理作家コラムニスト随筆家
国籍 日本
活動期間 1999年 -
ジャンル 推理小説随筆
主な受賞歴 第16回サントリーミステリー大賞優秀作品賞
第2回ダイヤモンド経済小説大賞優秀賞
第9回エキナカ書店大賞
デビュー作 天使の漂流
公式サイト 阿川大樹公式サイト
ウィキポータル 文学
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(あがわ たいじゅ、1954年12月1日[1] -)は、日本小説家推理作家コラムニスト随筆家ジャーナリスト作曲家日本推理作家協会会員。神奈川県横浜市在住。

経歴

誕生から学生時代

東京都で商社マンの家に生まれ、子供の頃は親の転勤により引っ越しが多かったと語っている。中学生の頃から小説家を夢見ていた[2]

東京都立戸山高等学校卒業。高校時代には演劇部に所属し、同部後輩の井坂聡 (映画監督) とはOBとして知り合いになる[3] 。高校2年 (1971年) の文化祭 (戸山祭) では、演劇部公演として、『狂人とピエロの唄』という創作劇の脚本を執筆。これは謡曲隅田川』を題材としたミュージカルであった[4]。また、生徒会にて制服の廃止を主導したと語っている[5]

東京大学教養学部基礎科学科卒業[6]。在学中、当初は東京大学演劇研究会に所属していた。1975年夏の公演用に脚本を執筆したが、野田秀樹の書いた脚本『白馬童子』と競り合い多数決で負けるという苦い思いをする[7]。1976年に同会を母体として野田秀樹や高萩宏らと共に劇団夢の遊民社」を旗揚げし、同劇団の座付き作曲家となる[8][9]。『ゼンダ城の虜〜苔むす僕らが嬰児 (みどりご) の夜』の初演(1981年10月1日~14日、於 駒場小劇場、ヒロイン「赤頭巾」役=伊藤蘭)、『愛の嵐~親不知篇』(1977年12月、於 上智小劇場)、『快盗乱魔~亭主と間男の共存できる家族制度を求めて』 (1978年6月、於 上智小劇場・駒場小劇場、1979年3月30日~4月1日、於 渋谷パルコ裏テント)、『走れメルス~少女の唇からはダイナマイト』(1981年6月12日~7月12日、於 新宿もりえーる) での挿入歌作曲などを手掛ける[10][11][12][13][14][15]

会社員時代

大学卒業後、日本電気 (NEC) にコンピュータ技術者および半導体集積回路技術者[16]として勤務。1987年、株式会社アスキーの半導体集積回路部門の責任者となり、テクニカルジャーナリストおよび起業家の道に進む。1990年、半導体関連のベンチャー企業を他6人の創業者と共にアメリカ合衆国カリフォルニア州のいわゆるシリコンバレーに設立[17][18][19]したが、同社は1998年3月に解散登記完了した[20]。阿川は先行する1996年に会社を辞め[2]、著作活動を再開[21]、専業小説家志望者となる。

専業小説家時代

1999年、『天使の漂流』で第16回サントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞[22]

2002年、第3回小学館文庫小説賞に『海の始まる場所』で応募するが、惜しくも「佳作」が不在での次点「優秀作品」となり出版されず。2003年に再び、第4回同賞に『ウィリアム・マッカラムを知らない?』で応募するが、やはり次点の「優秀作品」にとどまり出版を逃す[23]

2005年、『覇権の標的(ターゲット)』(応募時の表題は『スピリット・オブ・サイエンス』)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞優秀賞を受賞[24]し、同作にて小説家デビュー。

2007年、『D列車でいこう』が『本の雑誌』2007年上半期ベスト10に選出される[25]。阿川は、誰もが「必要だ」と共感できる題材として鉄道を選んだと語っている[26]

2009年から2021年までの間、横浜市中区黄金町京急本線高架下にある元特殊飲食店を執筆場所とし[27][2][28]、黄金町エリアマネジメントセンターのアーティスト・イン・レジデンス(AIR)の一員であった[29]。2014年6月に、同町の変貌を描いた長編小説『横浜黄金町パフィー通り』を上梓。同作の発売に合わせて合唱曲『地図をつくろう(黄金町の歌)』を作詞・作曲。同地域の混成合唱団『コールなでしこ』により、7月13日の出版記念パーティや7月14日の第7回国際シニア合唱祭「ゴールデンウェーブin横浜」[30]などで披露された[31][32][33]。また2015年には同長編小説が、同じく黄金町に拠点を置く田口浩一郎主催の「劇団!王子の実験室」により舞台化された[34]

2009年、作家デビュー以前からmixiで知り合いの[35][3]山田あかね原作・監督の映画『すべては海になる』に台詞無しのエキストラとして出演[36]。冒頭の書店シーンにて客として写っている。手には発売されたばかりの自著「フェイクゲーム」を持っている[37]

2017年2月に『終電の神様』シリーズの第一弾を発売。同作で2017年7月にエキナカ書店大賞受賞[38]。同シリーズは翻訳され、韓国と台湾で順次発売されている。2025年6月のシリーズ5冊目の発売までに、シリーズ累計55万部を売り上げるベストセラーとなる[39]

2018年9月、マンガ『終電ちゃん』とのコラボ企画「終電エピソード大賞」を開催。公募エピソードを阿川大樹/原作・藤本正二/作画でマンガ化[40]週刊モーニング2019年7号に『終電ちゃん 第43話 高崎線の終電ちゃん』として掲載された[41]

2019年、黄金町でつながりのあった韓国のPOPグループ「Kyly」(カイリー)に宛て、『Sakura Storm』を作詞した[42]。同曲は、Kyly のEPアルバム『Signal』の6曲目に収録されている[43]

人物

趣味はヨットとギター[44]

ヨットの購入費用を捻出するために、サラリーマンを辞めて起業家に転身したと語っている[45]。しかし作家としての道は厳しく、売れていない時代の収入はサラリーマン時代の10分の1程度だったが、「やりたいことができているので幸せ」と語っている[2]。2019年3月より、ヨットとモーターボートの専門誌である月刊「Kazi」に『物書きセーラーの独り言』というエッセイを書いている[46]

ギターは、エレキギターを中心に、2016年現在までに生涯で15本購入したと語っている[47]

アマチュア無線局 (JR1FLD) を開設しており、日本アマチュア無線連盟QSLビューロー経由でのQSLカード交換を行っている[48]

専業小説作家志望者時代の2002年、サッカー 2002 FIFAワールドカップのIMC横浜 (International Media Centre YOKOHAMA) でボランティアを務めた。この時の縁で、フットサル サークルに加入しているが、現在は飲み会専門要員となっている[49]

作品リスト

小説

エッセイ(本)

連載エッセイ(雑誌等)

  • 月刊ふれいざー 『窓を開ければ港も見える』(Fraser Journal Publishing, Canada)1997年7月号~
  • 月刊Kazi (舵社) 『活字の海の羅針盤』1997年4月号~ 2000年12月号
  • (同)       『物書きセーラーの独り言』隔月:2019年3月号~

技術書

脚注

  1. ^ 誕生日 68歳になる”. 阿川大樹 公式ウェブサイト (2022年12月1日). 2025年7月20日閲覧。
  2. ^ a b c d タウンニュース 舞台化されることが決まった小説、『黄金町パフィー通り』原作者の 阿川大樹(たいじゅ)さん”. タウンニュース社 (2015年6月4日). 2025年7月11日閲覧。
  3. ^ a b 「犬に名前をつける日」(監督:山田あかね)”. 阿川大樹 公式ウェブサイト (2015年11月25日). 2025年7月23日閲覧。
  4. ^ 『府立四中都立戸山高百年史』百周年記念事業実行委員会、1988年3月、411頁。 
  5. ^ https://x.com/agawataiju/status/1919969503133225303
  6. ^ 統合自然学科”. 統合自然科学科の卒業生たち(旧基礎科学科、旧生命・認知科学科の卒業生を含む). 東京大学教養学部統合自然学科 (2021年). 2025年7月11日閲覧。
  7. ^ 演劇人インタビュー 高萩宏”. NeSTA (2017年10月3日). 2025年7月25日閲覧。
  8. ^ 「すべては海になる」上映館 情報、5月19日(水) ゲスト”. スモールホープベイプロダクション (2010年4月26日). 2025年7月11日閲覧。
  9. ^ 小説作家 阿川大樹氏による分かりやすい講義開講”. コンピュータ時代の小説執筆環境. PRナビ/東京工芸大学 (2009年9月18日). 2025年7月11日閲覧。
  10. ^ 『ゼンダ城の虜 ー苔むす僕らが嬰児の夜ー』白水社、1981年10月2日、269, 270頁。ISBN 978-4560033708 
  11. ^ 野田秀樹『ゼンダ城の虜・走れメルス 野田秀樹戯曲集2』角川文庫、1984年3月1日、291, 292頁。 ISBN 978-4041517024 
  12. ^ 野田秀樹『定本・野田秀樹と夢の遊眠社』河出書房新社、1993年7月15日。 ISBN 978-4309261881 
  13. ^ 原田 大三郎 著、劇団 夢の遊民社 編『夢の遊眠社 : 写真集』講談社、1986年6月10日。 ISBN 978-4062024761 
  14. ^ 劇団夢の遊眠社第16回公演 ゼンダ城の虜-苔むす僕らが嬰児の夜”. RANPAGE (2017年1月14日). 2025年7月22日閲覧。
  15. ^ 劇団「夢の遊眠社」の黎明期”. 阿川大樹 公式ウェブサイト (2013年2月27日). 2025年7月22日閲覧。
  16. ^ H. Nakazato et al. (1986). “1.4ns Gate Arrays with Configurable RAM and High Testability”. ESSCIRC '86: Twelfth European Solid-State Circuits Conference (Delft, Netherlands): pp. 53-55. doi:10.1109/ESSCIRC.1986.5468284. 
  17. ^ “オールド・アイアンサイド通り5000番地”. Design Wave Magazine 2000年2月号 (CQ出版) (No. 27): pp. 138-140. (2000/1/1). https://www.cqpub.co.jp/dwm/contents/0027/dwm002701380.pdf. 
  18. ^ The Comeback of Japanese Software Entrepreneur Kay Nishi”. WIRED (1993年5月1日). 2025年7月19日閲覧。
  19. ^ ASCII 会社案内 1993-1994”. 西和彦 公式ウェブサイト. pp. 6, 14 (1993年11月1日). 2025年7月19日閲覧。
  20. ^ Business Search”. California Security of State (1998年3月30日). 2025年7月22日閲覧。
  21. ^ 覇権の標的(ターゲット)”. 著者紹介. ダイヤモンド社. 2025年7月11日閲覧。
  22. ^ サントリーミステリー大賞 受賞作 候補作 一覧”. P.L.B. による非公式サイト (2016年4月9日). 2025年7月12日閲覧。
  23. ^ 小学館文庫小説賞受賞作・候補作一覧”. P.L.B. による非公式サイト (2020年10月9日). 2025年7月19日閲覧。
  24. ^ 城山三郎経済小説大賞 受賞作 候補作 一覧”. P.L.B. による非公式サイト (2015年2月8日). 2025年7月12日閲覧。
  25. ^ D列車でいこう”. 徳間書店. 2025年7月19日閲覧。
  26. ^ >【趣味を広げる】 小説で「鉄道気分」!”. PHPオンライン (2011年3月26日). 2025年7月23日閲覧。
  27. ^ 阿川大樹と『横浜黄金町パフィー通り』 – 人と作品”. 有隣堂 (2014年9月10日). 2025年7月31日閲覧。
  28. ^ 黄金町の再生描く小説「横浜黄金町パフィー通り」-作家・阿川大樹さん”. ヨコハマ経済新聞 (2014年7月17日). 2025年7月19日閲覧。
  29. ^ AIR アーティスト > 阿川 大樹”. 黄金町エリアマネジメントセンター (2021年3月). 2025年7月11日閲覧。
  30. ^ 第7回国際シニア合唱祭 『ゴールデンウェーブin横浜』”. NPO法人ゴールデンウエーブ事務局 (2014年4月). 2025年7月19日閲覧。
  31. ^ 「横浜黄金町パフィー通り」出版記念パーティーで初披露された「地図をつくろう 黄金町の歌」”. ヨコハマ経済新聞 (2014年7月7日). 2025年7月19日閲覧。
  32. ^ みなとみらい大ホールで「地図を作ろう(黄金町の歌)」”. 阿川大樹 公式ウェブサイト (2014年7月14日). 2025年7月7日閲覧。
  33. ^ 黄金町の再生描く小説「横浜黄金町パフィー通り」”. LOCAL GOOD YOKOHAMA (2014年7月22日). 2025年7月19日閲覧。
  34. ^ 小説「横浜黄金町パフィー通り」を舞台化 地元アーティストと演劇人が連携、ヨコハマ経済新聞、2015年5月27日
  35. ^ “[カラダの野性と出会う https://akane-yamada.hatenablog.com/entry/2005/05/31/035105]”. 山田あかねの一喜一憂日記. はてなブログ (2005年5月31日). 2025年7月24日閲覧。
  36. ^ ジャック&ベティで映画「すべては海になる」-柳楽優弥さん主演”. ヨコハマ経済新聞 (2010年5月14日). 2025年7月23日閲覧。
  37. ^ 映画「すべては海になる」”. 阿川大樹 公式ウェブサイト (2009年12月9日). 2025年7月23日閲覧。
  38. ^ エキナカ書店大賞 受賞作 エントリー作 一覧”. P.L.B. による非公式サイト (2019年12月14日). 2025年7月12日閲覧。
  39. ^ 終電の神様 夜明けの行進”. 実業之日本社 (2024年6月6日). 2025年7月11日閲覧。
  40. ^ 「終電ちゃん」×「終電の神様」終電の思い出大募集、大賞はモーニングでマンガ化”. コミックナタリー編集部 (2018年9月17日). 2025年7月22日閲覧。
  41. ^ 終電エピソード大賞 結果発表”. 実業之日本社 (2018年12月6日). 2025年11月22日閲覧。 エラー: 閲覧日が未来の日付です。(説明
  42. ^ Sakura Storm[M/V] by Kyly”. YouTube (2019年4月8日). 2025年7月22日閲覧。
  43. ^ signal”. Spotify (2019年). 2025年7月22日閲覧。
  44. ^ 阿川大樹”. 日本推理作家協会. 2025年7月11日閲覧。
  45. ^ コットンマム横浜店閉店”. 阿川大樹 公式ウェブサイト (2008年2月8日). 2025年7月11日閲覧。
  46. ^ Kazi7月号(2025年6月5日発売)”. 舵社 (2025年6月5日). 2025年7月11日閲覧。
  47. ^ エレキギターを買う”. 阿川大樹 公式ウェブサイト (2016年4月7日). 2025年7月11日閲覧。
  48. ^ JR1FLD”. QRZ (2024年8月15日). 2025年7月20日閲覧。
  49. ^ 阿川大樹 (2016/03). “最後かもしれないフットサル”. 月刊ふれいざー (Fraser Journal Publishing (Canada)) (No. 223): 33. https://www.thefraser.com/pdfs/gekkan-fraser-2016-03.pdf. 

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