量的形質としての競走能力の指標の曖昧さ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 22:47 UTC 版)
「競走馬の血統」の記事における「量的形質としての競走能力の指標の曖昧さ」の解説
血統理論は、一般的にサラブレッドの競走能力の由来を主にその血統に求めるものであるが、競走能力の指標を何によって表すか、客観的で統一された指標が存在しない。 他の分野、例えばイネの収穫量であるとか、果実の糖度であるとか、乳牛の乳量や脂肪量のように、物理的かつ継続的に計測することは不可能である。 収得賞金額、勝利数、所要タイムなどの絶対的な指標を用いることもあるが、競馬の性格上、これらの指標も統一的で普遍的なものとは認めがたい。まず、競馬は、第一義的には到達順位を競うものであって、所要タイムを競うものではない。相手次第で順位や所要タイムが異なってくるため、それらを単純に比較することは難しい。また、騎手や馬主、調教師といった関係者によるレース中やレース前の継続的あるいは一時的な影響によっても競走成績は大きく左右される(騎手の騎乗技術や、出走レースの選択など)。 近年ではフリーハンデやアウスグライヒ、ワールド・ベスト・レースホース・ランキングなどの、ある程度の客観性を持った、一般的に共通の指標が創出されている。しかし、これらの指標も万人に受け入れられたものではないし、あくまでも競走馬の競走能力を相対的に示すものにすぎない。 一方で、主に運動生理学の立場から、サラブレッドの競走能力を構成する心臓や肺などの循環器や、筋肉や骨などの運動器のあり方を明らかにしようとする試みも行われており、一定の成果をあげている。こうした器官の運動性能によって競走能力を数値化することは理論上は可能であるが、現に競走に出走して一定以上の成績を収めているサラブレッドの心臓を取り出して解剖するわけにはいかないので、結局のところこうした運動生理学の観点で競走能力を数値化する試みはほとんど行われないのが実情である。 またこのような生物的な運動能力が必ずしも競走の成績と比例しない事実も経験的に知られている。運動能力以外のサラブレッドの血統に基づく特徴として、「回復力」とか「成長力」とか「馬格」などの抽象的な要素や、「勇敢さ」とか「利口さ」とか「馴致性」といった精神的な要素が知られており、ときには「品位」であるとか「優雅さ」といった競走能力とは関わりが薄いと考えられる要素が取り上げられることもある。これらを指標化することは極めて困難である。
※この「量的形質としての競走能力の指標の曖昧さ」の解説は、「競走馬の血統」の解説の一部です。
「量的形質としての競走能力の指標の曖昧さ」を含む「競走馬の血統」の記事については、「競走馬の血統」の概要を参照ください。
- 量的形質としての競走能力の指標の曖昧さのページへのリンク