酸と塩基の共役
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 21:39 UTC 版)
ある物質から水素イオンがひとつ脱離した化学種を、その物質の共役塩基と呼ぶ。反対に、ある物質に水素イオンがひとつ付加した化学種を、その物質の共役酸という。例えば、水 (H2O) の共役塩基は水酸化物イオン (OH−)、共役酸はオキソニウムイオン (H3O+) である。 酸解離定数と塩基解離定数の定義より、ある酸 HA の酸解離定数 Ka と、その共役塩基 A− の塩基解離定数 Kb の間には次式が成立する。 K a K b = [ H 2 s o l + ] [ A − ] [ H A ] m o l L − 1 ⋅ [ H A ] [ s o l − ] [ A − ] m o l L − 1 = [ H 2 s o l + ] [ s o l − ] / m o l 2 L − 2 {\displaystyle K_{\mathrm {a} }K_{\mathrm {b} }={\frac {[\mathrm {H} _{2}\mathrm {sol} ^{+}][\mathrm {A} ^{-}]}{[\mathrm {HA} ]~\mathrm {mol~L^{-1}} }}\cdot {\frac {[\mathrm {HA} ][\mathrm {sol} ^{-}]}{[\mathrm {A} ^{-}]~\mathrm {mol~L^{-1}} }}=[\mathrm {H} _{2}\mathrm {sol} ^{+}][\mathrm {sol} ^{-}]/\mathrm {mol^{2}~L^{-2}} } すなわち、ある溶媒中での Ka と Kb の積は、その溶媒の自己解離定数に等しい。特に水溶液中では水のイオン積(25℃で 10−14 M2)に等しくなるため、常用対数表記では pKa + pKb = 14 が成立する。 酸解離定数と塩基解離定数は溶媒の自己解離定数を媒介とすることで互いに変換可能であるため、文献等には酸解離定数のみが示されていることも多い。 なお、塩基の酸解離定数の値は、その塩基の共役酸の酸解離定数の値である。 代表的な無機・有機化合物の水・DMSO・酢酸中の酸解離定数 酸(共役酸)塩基(共役塩基)pKa (H2O)pKa (DMSO)pKa (AcOH)過塩素酸 HClO4 ClO−4 (強) 0.4 4.9 臭化水素酸 HBr Br− −4.1 1.1 6.1〜6.7 塩酸 HCl Cl− −3.7 2.1 8.6 硫酸 (pKa1) H2SO4 HSO−4 — 1.4 7.2 硝酸 HNO3 NO−3 −1.8 1.4 9.4 トリクロロ酢酸 Cl3CCOOH Cl3CCOO− 0.7 11.5 リン酸 (pKa1) H3PO4 H2PO−4 1.83 ジクロロ酢酸 Cl2CHCOOH Cl2CHCOO− 1.48 6.4 硫酸 (pKa2) HSO−4 SO2−4 1.96 14.7 フッ化水素酸 HF F− 2.67 クロロ酢酸 ClCH2COOH ClCH2COO− 2.88 8.9 酢酸 (AcOH) CH3COOH CH3COO− 4.76 12.6 炭酸 (pKa1) H2CO3 HCO−3 6.11 リン酸 (pKa2) H2PO−4 HPO2−4 6.43 2,4-ペンタンジオン 8.8 13.3 シアン化水素 HCN CN− 9.1 12.9 アンモニア NH+4 NH3 9.25 10.5 6.4 炭酸 (pKa2) HCO−3 CO2−3 9.87 ニトロメタン CH3NO2 CH2NO−2 10.2 17.2 エチルアミン (C2H5)NH+3 (C2H5)NH2 10.63 11 トリエチルアミン (C2H5)3NH+ (C2H5)3N 10.72 9.0 9.5 ジエチルアミン (C2H5)2NH+2 (C2H5)2NH 10.93 10.5 リン酸 (pKa3) HPO2−4 PO3−4 11.46 アセトン 19.3 26.5 ジメチルスルホキシド (DMSO) 33 35 メタン CH4 CH−3 49 56 エタン C2H6 C2H−5 50.6
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