遺伝的分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/04 06:00 UTC 版)
一方でそのような形質がどのように遺伝するかも研究することになる。ただし、この菌は自家不和合性なので、適合する株と接触させなければ有性生殖は行わない。したがって、まず適合する株同士を一つのシャーレに接種することから交配実験は始まる。両者の菌糸が中央で接触すると、両者の菌糸の間で接合が行われ、そこに0.5mmほどの球形の子実体が形成され、その内部に多数の子嚢が作られる。 このカビを含む子嚢菌類では栄養体である菌糸体は単相であり、遺伝子は対立遺伝子をもたない。つまり優性の遺伝子も劣性のものも表現型に現れる。また、彼らの有性胞子である子嚢胞子は、子嚢という細長い袋に八個の胞子が一列に入っている。これは子嚢の内部で二つの核が融合した後、減数分裂を行って四つの細胞となり、さらにそれが一回の体細胞分裂を行うことで形成される。しかもその間に細胞の位置が移動しないため、両端より二個ずつは同一の遺伝子型をもつ。そこで、胞子を端から一個ずつ取り分けて培養すれば、それぞれの形質の遺伝が比較的容易に見分けられる。このように、単胞子培養を行うことで遺伝の様子を正確に知ることが出来る。 たとえば、特定の栄養要求株と野生株を交配した場合、そこで作られた子実体から子嚢を個々に取りだし、中の胞子を順番に取り出して培養すると、それによって得られる8株のうち、半分が野生株、残り半分が栄養要求株となる。そして一端から取り出した順に二個ずつは同じ性質のものとなっている。 なお、このカビには有性生殖とは無関係に菌糸が癒合して二つの菌糸体の核が共存する異核共存体(ヘテロカリオン)を作る場合があり、この現象は遺伝的分析を攪乱しかねない。しかし、逆にこれを利用し、単相の菌体でも複相の生物で見られるような遺伝子間の優劣関係などを見ることも出来る。
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