遺伝学的解析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 03:04 UTC 版)
HPAI A(H5N1) の最初に発見された株はA/chicken/Scotland/59と呼ばれ、1959年にスコットランドで2つのニワトリの群れを病死させた。しかし、この株と現在流行している高病原性株との違いは非常に大きい。 2004年に主に流行したHPAI A(H5N1)は、1999年から2002年にかけてZ genotypeを持つように進化した。これはアジア型HPAI A(H5N1)(Asian lineage HPAI A(H5N1))と呼ばれている。 アジア型HPAI A(H5N1)は抗原性によって2つのクレード(clade)に分けられる。 クレード 1 ベトナム、タイ、カンボジアでのヒトとトリからの分離株、およびラオス、マレーシアでのトリからの分離株。 クレード 2 最初に中国、インドネシア、日本、韓国のトリから分離され、後に中東、ヨーロッパ、アフリカへ広がった。 WHOの発表では、2005年後半から2006年にかけてヒトへ感染したH5N1は主にクレード 2であった。 遺伝子解析により、クレード 2はさらに6つのサブクレードに分けられ、その内の地理的に異なった場所に分布している3つがヒトに感染した。地図 サブクレード 1 - インドネシア サブクレード 2 - ヨーロッパ、中東、アフリカ(英語の頭文字をとってEMAと呼ばれる) サブクレード 3 - 中国 2007年、EMAサブクレードの変異株についての研究が行われた。36の変異株の全ゲノム配列が解析され、現在存在するH5N1の遺伝子の解析が進んだ。この研究が行われる前にも、2004-2006年のヨーロッパの5つの株の全ゲノム配列の解析が行われていたが、中東と北アフリカの株については全ゲノムの解析は行われていなかった。 解析の結果、全てのヨーロッパ、中東、アフリカのサンプルは現代アジアのクレードとは別のクレードに分けられ、共通の祖先が1997年の香港株であることがわかった。図1(リンク先)はHA(ヘマグルチニン)によって分けられた系統発生樹であり、3つの型(lineage)が存在することが示されている。クレードの内2つはベトナムの分離株のみであり、5つの分離株が含まれている小さいクレードはV1、9つの分離株が含まれている大きなクレードはV2と名付けられた。残りの22株はヨーロッパ、中東、アフリカから分離されたものであり、EMAクレードに分類される。
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