遺伝子改変系による機能改良
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/21 03:05 UTC 版)
「リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ」の記事における「遺伝子改変系による機能改良」の解説
RuBisCOは上述したように、リブロース1,5-ビスリン酸へのカルボキシラーゼ反応という特有の反応を触媒するが、同時にオキシゲナーゼ反応も担うという酵素的な欠点も抱えている。また、比活性も低くカルビン-ベンソン回路の律速段階となっている。RubisCOのこうした欠点を克服することは主要作物の増産や地球温暖化防止の点においても極めて大きな影響を与えると考えられ、大腸菌を用いた遺伝子の突然変異法などによりその機能の改良が試みられてきた。 近年のRubisCOの改良に関する総説によると、求められるべきPerfect RubisCOとは以下の条件を満たすものである。 CO2への高い比活性および低いミカエリス・メンテン定数を有すること(具体的な数字として kcat/Km = 108 M−1s−1) ただし、CO2のミカエリス-メンテン定数は葉緑体ストロマにおけるCO2よりも高い値 (>8 μM) を示すこと(ストロマ中におけるCO2濃度が一定に保たれ常に最大速度を示すため) O2に対するCO2の特異性が無限大に大きいこと(オキシゲナーゼ活性が発生しないように、Sc/o = ∞) 現実のRubisCOは紅色非硫黄細菌 Rhodospirillum rubrum の場合、比活性が高いもののミカエリス-メンテン定数が高く、高CO2濃度に適応している。一方、タバコのRubisCOは比活性は低いが、ミカエリス-メンテン定数が低いため、低CO2濃度に適応している。この結果、現状で最も1.の条件を満たしているRubisCOはタバコとなりその値は kcat/Km = 3.2 × 105 である。タバコRubisCOのミカエリス-メンテン定数 (Km = 10.7 μM) を参考にした場合、逆算されうるPerfect RubisCOの比活性は1070 s−1となり、既存のRubisCOの100倍以上である。 2006年にシアノバクテリア Synechococcus PCC7492のRubisCO遺伝子の大量のランダム変異体を獲得し、大腸菌内でRubisCOが機能する場合にのみペントースリン酸経路の一部を用いたカルビン-ベンソン回路によって発現宿主が生育可能になる系にて優れたRubisCOの選抜を行なった報告がある。本系では、RubisCO遺伝子の変異のみで発現量が野生型の約15倍あるいは比活性が5倍になるRubisCO変異体が得られている。このような、発現量の増大や比活性の向上が見られる理由は構造生物学的に明らかになっていないが、RubisCO自身の安定性に寄与している変異が導入されている事が一因と考えられている。本系を上手く応用することにより、今後さらに優れたRubisCO変異体が得られるのではないかと期待されている。
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