速読術への批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/10 02:30 UTC 版)
速読術は早く読むために一時的に用いる技術という面と、読書力を改善向上させた結果習得される能力という面がある。前者は、必ずしも読書力の向上を意味しない。したがって、読書力の低下が心配されている教育現場では、正確に理解する読解力が育っていない生徒や学生に速読術を教えることには批判的である。 一方、教育現場の中でも受験になると速度を求められるので、受験勉強を指導する塾や予備校では速読術を採用しているところは多い。また、ビジネスの現場では常に事務処理の効率化が求められており、速読力の必要性は一般的に認識されている。このように、速読ないしは速読術については、是と否と両方の考えがある。 研究者の間では批判的見解や研究も少なくない。すなわち、速読では、速く読むにつれて理解度が低下するので意味がないという批判である。アメリカでは、速読とは文字を高速で追う読み(scanning)や拾い読み(skimming)をして大意を把握しようとする読みのテクニックと一般的に受け止められている。速読術についてこのように理解されている中では、上述の批判は的を射ているといえよう。 また速読に関する研究は、人間の知的能力とその活動についての測定や調査である。被験者が速読できるとしても、どのレベルの速読のできる人なのか、そもそも速読能力をどのように評価して測定条件を統一するのか、速読力を発揮できる環境で測定を行なっているのかなど、その研究には難しい課題が多い。このことも速読術への評価を難しくしている。 一方、日本では1987年12月5日にNHKニュースで、「読書は左脳を使っていると思われていたが、速読では右脳も使われていることが分かった」と日本医科大学とNBS日本速読教育連盟との共同研究の結果が報道され、また2002年1月2日にNHKの番組「ためしてガッテン」で、同じくNBS日本速読教育連盟で速読ができた人と普通の人の脳活動の違いと、吉本のお笑い芸人がトレーニングして速読できるようになる様子が報道されたことにより、速読術に対する見解は必ずしも批判一辺倒ではなくなった。このことは、その後もNHK-ETVで繰り返し取り上げられたことや、2010年に再び「ためしてガッテン」のテーマとして取り上げられたことから判断される。また「速読」という言葉が見出し語になかった国語辞典「広辞苑」でも第六版(2008)から、見出し語として採用されるようになった。
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