速度における時間の遅れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 16:06 UTC 版)
「時間の遅れ」の記事における「速度における時間の遅れ」の解説
詳細は「特殊相対性理論#時間(時刻の隔たり)の伸び」および「en:Time dilation of moving particles」を参照 特殊相対性理論では、基準となる慣性系内の観測者から見ると、観測者に相対して動いている時計は、観測者の基準系内で静止している時計よりも時間の進みが遅くなって観測されることを示している。相対速度が速ければ速いほど時間の遅れは大きくなり、光速 (299,792,458 m/s) に近づくにつれて時間の進み方がゼロに近くなる。これにより、光速度で移動する質量のない粒子が時間の経過の影響を受けないということになる。 静止している観測者の時間の刻み幅を Δ t {\displaystyle \Delta t} とすると、運動体の時間の刻み Δ t ′ {\displaystyle \Delta t'} は、光速を c {\displaystyle c_{}^{}} 、運動体の速さを v {\displaystyle v_{}^{}} として、 Δ t ′ = 1 − ( v / c ) 2 Δ t {\displaystyle \Delta t'={\sqrt {1-(v/c)^{2}}}\Delta t} となる。これは、時間と空間を合わせて座標変換をしないと、電磁気学の法則に現れる光速 c {\displaystyle c} の意味が説明できない、という理論的な要請から導かれたローレンツ変換による帰結である。この事実は、宇宙から飛来する素粒子(宇宙線)の寿命が地上のものより長いことなどから確認されており、現代の素粒子論や場の理論は、特殊相対性理論を基礎に構築されている。 以下の説明では単純化するため加速・減速を考えず、等速直線運動を前提とする。宇宙船が光速の90%の速度で航行しているとき、船外の静止している観測者が1年間を測定する時間は、宇宙船の中では上式より Δ t ′ = 0.436 Δ t {\displaystyle \Delta t'=0.436_{}^{}\Delta t} となり、宇宙船の時計の刻み幅は静止系の約0.44倍である。つまり宇宙船内の時計では、まだ0.44年、即ち5ヶ月半しか経過していない。 この現象を利用すると、光速に近い宇宙船で宇宙を駆けめぐり、何年か後、出発地点に戻ってきたような場合、出発地点にいた人は年を取り、宇宙船にいた人は年を取らないという現象が生じ、宇宙船は未来への一方通行のタイムマシンの役目を果たすことになる。ピエール・ブールの『猿の惑星』はこのアイデアに基づいたものであり、オリオン計画はこのアイデアに向けた試みであった。なお、宇宙船から静止系を見ると、静止系は相対的に運動していることになるが、時間の遅れが生じるのは宇宙船側である。詳しくは双子のパラドックスの項を参照のこと。 なお、この現象は光速に近い速度でなくとも、日常生活における速度でも極く僅かではあるが生じている。現に航空機に載せた原子時計の進みがごく僅かに遅れる事が実験によって確認されている。ただし宇宙船や人工衛星の場合は、速度の影響のみならず重力場の有無による影響もある事に注意する。
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