通信の秘密の限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 10:23 UTC 版)
通信の秘密の保障にも一定の内在的制約があることは一般に承認されている。 犯罪捜査のための郵便物等の押収犯罪捜査のために郵便物を令状押収することは日本国憲法第35条の要件を満たす限り問題はない。 通信の秘密の制約として、刑事訴訟法は、郵便物の押収(100条、222条)、接見交通にかかる通信物の検閲、授受の禁止、押収(81条)を認め、郵便法が、郵便物の開示を求めることができるとし(40条、41条)、関税法が、郵便物の差押を認めている(122条)。 このうち刑事訴訟法100条の郵便物の押収については、通信機関の保管・所持する郵便物などにつき、「被告人から発し、又は被告人に対して発した」もの(100条1項)および「被告事件に関係があると認めるに足りる状況のあるもの」(100条2項)であれば差し押えうるとして、通常の差押えの場合の「証拠物又は没収すべき物と思料するもの」(99条)でなくともよく要件が緩和されている。この規定については郵便物の中にも証拠物が含まれている蓋然性が強いことから合憲とする学説がある一方、必要以上に広範な押収を許すことになり違憲の疑いが強いとする学説もある。 犯罪捜査のための通信の傍受犯罪捜査のための通信の傍受についても学説は厳格な許可条件のもとであれば憲法上許されていると解している。 日本では1999年に犯罪捜査のための通信傍受に関する法律が制定された。ただし、法的な問題点も指摘されている。 最高裁は「電話傍受は、通信の秘密を侵害し、ひいては、個人のプライバシーを侵害する強制処分であるが、一定の要件の下では、捜査の手段として憲法上全く許されないものではない」と判示し、憲法上許される要件を、「重大な犯罪に係る被疑事件について、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、電話傍受以外の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存する場合において、電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続きに従ってこれを行うことも憲法上許される」としている(最判平成11年12月16日刑集53巻9号1327頁)。
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