近代的年代学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 05:35 UTC 版)
年代の記載方法にも大きな前進が見られた。従来の天地創造を基点とした年代記述では、エジプト史、さらに新たに知られた中国史をそのうちに取り込むには困難を伴った上、すでに述べたように典拠とされる聖書によって年代の不一致が生じた。 スカリゲルは太陽暦・太陰暦、さらにローマの税制の基礎となっていたインディクティオを掛け合わせて7980年というユリウス周期を基準とする年代決定法を提唱し、その始まりを紀元前4713年においた(1583年)。このユリウス周期上には一日刻みにユリウス日という単位がおかれ、日食・月食などの天文学的な出来事をその上に配置することが可能で、歴史に残された天文記録に基づく年代考証が可能となった。彼はこれにより聖書に依らない科学的な年代学を確立した。 しかしこの紀元前4713年という時間は従来の聖書解釈に基づく歴史を対象としていたために、エジプト史や中国史が聖書で求められる年代以前にさかのぼることが認識されるようになると、スカリゲルのユリウス周期に歴史事実をおさめることは困難になった。フランスのイエズス会士ペダヴィウスはイエスの生誕年に歴史記述の基点を定めることを実用性という観点から科学的に主張した。彼はイエス以後の年号はどの聖書に基づいても一致し、かつイエス以前についてさかのぼっても比較的近い過去は年代の誤差が少ないことを指摘し、年代記述の基点をイエス生誕の年とすることを主張した。これは今日の歴史学において一般的に採用されている年代記述である。
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