軍事用信号(Mコード)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 02:25 UTC 版)
「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の記事における「軍事用信号(Mコード)」の解説
Mコードと呼ばれる新しい軍用信号は、新型GPSシステムの主要改善事項のひとつであり、軍用GPS信号の耐妨害性および秘匿性のさらなる改善を目的として設計された。Mコードは、従来の軍用コードであるP(Y)コードと同様に、L1およびL2周波数を用いて送信される。新しい信号は、その信号エネルギーの大部分がエッジ部分に配置されるようになっている(既存のP(Y)およびC/A搬送波から離隔している)。P(Y)コードとは異なり、Mコードは、自律的に機能する。つまり、利用者は、Mコード信号のみで位置を計算できる。P(Y)コードの受信機は、通常、最初にC/Aコードを捕捉し、その後P(Y)コードを捕捉する必要があった。 Mコードは、広角(フルアース)アンテナに加えて、高利得の指向性(スポットビーム)アンテナからも送信される。「スポットビーム」と呼ばれる指向性アンテナの信号は、特定の領域(直径数百キロメートルの範囲)に指向され、ローカル信号強度を20 dB増加(10倍の電圧場強度、100倍の出力に相当)させる。2つのアンテナがあることの副作用として、スポットビーム内に位置する受信機からは、同じ位置に2つのGPS衛星があるように見える。 フルアース・アンテナのMコード信号はブロックIIR-M衛星でも利用できるが、スポットビーム・アンテナの信号はブロックIII衛星でなければ利用できない。他の新しいGPS信号と同様に、Mコードも、次世代GPS運用制御システム(特にブロック2)に依存しているが、2016年10月に予定されていたそのシステムの運用開始は、2022年までずれ込んだ。さらに、その後の衛星打ち上げの遅れにより、さらなる遅れが見込まれている。 Mコードは、上記のほか、次のような特性を有する。 衛星は、2つのアンテナから2つの異なる信号を送信する。1つは地球全体をカバーするフルアース・アンテナであり、もう1つはスポットビーム・アンテナである。 BOC(binary offset carrier)変調 24MHzの帯域幅を占有する。 新たな測位メッセージは、フレーム化に代えてパケット化されるようになったため、データ・ペイロードの柔軟性が向上している。 有効なデータ・チャネルが4つあり、各周波数および各アンテナから異なるデータを送信できる。 エラー訂正コードを使用したエラー検出ができる。 スポットビームの出力は、フルアース・ビームよりも約20dB強い。 地球表面におけるMコード信号の強度:フルアース・アンテナの場合は最大158dBW、スポットビーム・アンテナの場合は最大138dBW
※この「軍事用信号(Mコード)」の解説は、「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の解説の一部です。
「軍事用信号(Mコード)」を含む「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の記事については、「グローバル・ポジショニング・システム ブロックIII」の概要を参照ください。
- 軍事用信号のページへのリンク