資金不足、厳しい重量と大きさの制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 03:51 UTC 版)
「ミネルバ (ローバー)」の記事における「資金不足、厳しい重量と大きさの制限」の解説
ローバーの移動機構は決まったが、実際のローバー開発は茨の道の連続となった。ミネルバ(MIcro/Nano Experimental Robot Vehicle Asteroid, MINERVA)と呼ばれるようになった計画にまず立ちはだかったのが、このプロジェクト自体が、あくまで小惑星探査機MUSES-Cの重量に余裕ができた場合のオプションという扱いであり、正式のプロジェクトではないということであった。ミネルバの開発には設計段階から日産自動車の宇宙航空事業部(2000年からはアイ・エイチ・アイ・エアロスペース)が参加しており、資金も提供していた。しかし正式プロジェクトではない日本製ローバーの開発に、MUSES-Cの開発を進める宇宙科学研究所もアイ・エイチ・アイ・エアロスペースも多くの資金を投入できるはずもなく、開発当初から資金難の壁にぶつかることになった。 資金難の中でまず問題となったのが無重力状態での試験であった。まず試作機の作成予算は何とか確保したが、ローバー内蔵モーターのトルクによる移動機構の確認に不可欠である微小重力状態での実験を行う、岐阜県土岐市にあった日本無重量総合研究所の使用料は一回100万円近い費用がかかった。低予算での開発が宿命づけられていたミネルバで、100万円近い実験費用は極めて厳しかった。そこで開発陣は、実際にはローバーが小惑星表面からホップする鉛直方向の動きを水平な面上に置き換えることを考えた。摩擦を極力抑えた水平面を用いた実験装置を作成した開発陣は、高額な日本無重量総合研究所での実験を行う前に試作機の改良に取り組むことができるようになった。 ローバーに必要とされる機能は移動機構だけではない。ローバーを動かすための電源、観測結果などのやりとりを行う通信系、観測機器、ローバー自体の熱制御、各種データの処理など、一つの人工衛星が持つほぼ全ての機能を備える必要がある。小惑星探査機MUSES-Cの重量に余裕ができた場合のオプション計画であるミネルバには、極めて厳しい重量と大きさの制限が課せられている上に、大気のない小惑星表面の過酷な環境下で活動できるローバーを作り上げねばならず、資金難とともにこれらの制約が開発に大きな障害となって立ちはだかった。
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