誘導指標とフロベニウス相互律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/26 17:47 UTC 版)
「指標理論」の記事における「誘導指標とフロベニウス相互律」の解説
詳細は「誘導指標(英語版)」を参照 この節で議論される指標は複素数値であると仮定する。H を有限群 G の部分群とする。G の指標 χ が与えられたとき、χH でその H への制限を表す。θ を H の指標とする。ファルディナンド・ゲオルグ・フロベニウスは今ではフロベニウスの相互律(英語版)と呼ばれるものを用いて θ から G の指標を構成する方法を示した。G の既約指標たちは G の複素数値類関数の空間の正規直交基底をなすから、次の性質を持つ G の類関数 θG が一意的に存在する:G の各既約指標 χ に対して ⟨ θ G , χ ⟩ G = ⟨ θ , χ H ⟩ H {\displaystyle \langle \theta ^{G},\chi \rangle _{G}=\langle \theta ,\chi _{H}\rangle _{H}} (左辺の内積は G の類関数に対するもので、右辺の内積は H の類関数に対するものである)。G の指標の部分群 H への制限は再び H の指標であるから、この定義は θG が G の既約指標の非負線型結合でありしたがって実際 G の指標であることを明らかにする。それは θ から誘導される G の指標と呼ばれる。フロベニウス相互律の定義式は一般の複素数値類関数に拡張できる。 H の行列表示 ρ が与えられたとき、フロベニウスは後に G の行列表現を構成する明示的な方法を与え、ρ から誘導される(英語版)表現と呼ばれ、同様に ρG と書かれる。これは誘導指標 θG の別の記述を導いた。この誘導指標は H のどんな元とも共軛でない G のすべての元上消える。誘導指標は G の類関数であるから、H の元での値の記述だけが必要である。G を H の右剰余類の直和として G = H t 1 ∪ ⋯ ∪ H t n {\displaystyle G=Ht_{1}\cup \dotsb \cup Ht_{n}} と書けば、元 h ∈ H が与えられると、 θ G ( h ) = ∑ 1 ≤ i ≤ n , t i h t i − 1 ∈ H θ ( t i h t i − 1 ) {\displaystyle \theta ^{G}(h)=\sum _{1\leq i\leq n,\ t_{i}ht_{i}^{-1}\in H}\theta \left(t_{i}ht_{i}^{-1}\right)} となる。θ は H の類関数だから、この値は剰余類の代表元の選び方に依存しない。 誘導指標のこの別の記述により H の G への埋め込みについての比較的小さい情報から明示的な計算ができることがあり、特定の指標表の計算にしばしば有用である。θ が H の自明指標であるとき、得られる誘導指標は(H の剰余類上の)G の置換指標 (permutation character) と呼ばれる。 指標の誘導の一般的な技術と後の精密化は有限群論と数学のいたるところに多数の応用があり、フロベニウスの後にもエミール・アルティン、リチャード・ブラウアー、Walter Feit(英語版), 鈴木通夫のような数学者によってなされた。
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