計時器具
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 10:56 UTC 版)
「イブン・シャーティル」の記事における「計時器具」の解説
「時計の歴史」も参照 「花嫁のミナレット」という通称があるダマスクスの大モスクの北壁に付設されたミナレットには、イブン・シャーティルが制作した日時計が設置されている。21世紀現在、そこに置かれている物は19世紀末に設置された精密なレプリカであるが、オリジナルはダマスクス国立博物館(英語版)の中庭にある。イブン・シャーティルがウマイヤ・モスクのミナレットにこれを設置したのは、1371年のことだと伝わっている。 イブン・シャーティルの日時計は、幅2メートル、奥行1メートルの方形の大理石であり、複数の曲線が大理石表面に彫られている。中央に設置されたグノーモンは、ダマスクスにおいて天の極の方向と平行になるような角度がつけられており、その影が指す位置をムワッキトが上記曲線を頼りに読むことによって、定時法で時刻を知ることが可能になっている。かつて、グノーモンが天の極を指す日時計はヨーロッパ人の発明であると信じられていた時代があったが、イブン・シャーティルの日時計は、そのようなヨーロッパ優越史観をくつがえす客観的証拠の一つになっている。 また、アレッポには「宝石箱」(ṣandūq al‐yawāqīt)という通称を持つ、イブン・シャーティルによって制作されたもう一つの日時計が保管されている。この日時計は、12センチメートル角の大きさで、シリア地方における、おおよそのズフルとアスルの礼拝(午前と正午過ぎの礼拝)の時間を示す。さらに、方位磁針を有し、シリア地方における大まかなキブラもわかるようになっている。 中東地域の天文学史の専門家、デイヴィッド・A・キング(英語版)によると、サファディー(英語版)という同時代の年代記作家が、イブン・シャーティルの制作した「アストロラーブ」について記述している。キングによるとサファディーの記述は曖昧かつ難解であるが、おおむね次のようなことが書かれている。「サファディーがイブン・シャーティルの家を訪ねたところ、ムワッキトは自分が制作した『アストロラーブ』を見せてくれた。それはアーチ状の長さ35センチメートル程度のもので、壁に設置されており、可動部が1日で一周する。さらに、定時法と不定時法の両方で時を報せる。おそらく機構部は壁の裏にあると思われる」。アストロラーブというよりは時計と思われるこの機械は現存せず、この機械に関するサファディーの難解な記述以上の情報は存在しない。
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