角膜内リング挿入法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 16:47 UTC 版)
角膜移植に代わる方法として、近年、角膜実質内に輪状の薄片を挿入する方法が行われている。角膜の周辺部に小さな切開を入れ、角膜実質中に二枚のポリメチル・メタクリレート製の半弧状薄片を挿入する。挿入部位は瞳孔の両側である。挿入後切開部を閉じる。二枚の薄片は角膜を押し出す形になり、円錐状になった角膜頂上部の曲率が緩和される。この手技は局所麻酔下に外来で行うことができ、眼球の組織を除去しないので可逆的であり、かつ場合によっては薄片の交換もできる点で優れている。(訳注: Intrastromal Corneal Ring Segments (角膜実質内リング片)のアクロニムからICRS、INTACS、ICR、または単に角膜内リングとも呼ばれる。INTACSは商品名。) 二種類の角膜内リングがあり、それぞれ Intacs、Ferrara rings の商品名で知られている。 後者はプリズム状であり、前者はより扁平でより角膜中央部から離れて挿入される。Intacsは近視治療用として初めて1999年にアメリカ合衆国FDAから承認を受けた。2004年7月にはFDAにより適用範囲が円錐角膜まで拡大され。Ferrara rings の円錐角膜への適用は現在FDAの承認待ちである。同じコンセプトを発展させ、角膜実質に通路を開け、そこに透明な合成ゲルを注入することも考えられている。ゲルが重合硬化すると、予め成形された輪状薄片と同様の性質をもつことになる。 角膜内リングの有効性に関する臨床研究は端緒についたばかりである。全層角膜移植術と同じく、施術後もハードコンタクトレンズないし眼鏡によるある程度の矯正が必要なことがある。角膜内リングは現在日本で保険適応となっておらず、自由診療においてのみ受ける事が可能であり、角膜移植よりも高額の費用がかかる。角膜内リングにありうる副作用として、挿入時に誤って前眼房に穿孔してしまう事故がありうる。また、術後の角膜感染、薄片の迷走や脱出もありうる。この方法は他の方法では管理が難しい症例で視力を改善するための一つの方法だが、まだ保証された方法ではなく、悪化もありうる。
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