複素数体上の楕円曲線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 22:40 UTC 版)
楕円曲線の複素射影平面(英語版)の中のトーラスの埋め込みとしての定式化は、ヴァイエルシュトラスの楕円関数の不思議な性質から自然に導かれる。これらの関数と関数の一階微分は、公式 ℘ ′ ( z ) 2 = 4 ℘ ( z ) 3 − g 2 ℘ ( z ) − g 3 {\displaystyle \wp '(z)^{2}=4\wp (z)^{3}-g_{2}\wp (z)-g_{3}} により関係付けられている。 ここに、g2 と g3 は定数であり、℘(z) はΛを周期とするヴァイエルシュトラスの楕円関数で、℘'(z) はその微分である。(複素数上の)楕円関数の形の中でこの公式は明らかであろう。ヴァイエルシュトラスの楕円関数は二重周期関数である。つまり、周期の基本対(英語版)の観点から周期的であり、本質的には、ヴァイエルシュトラス関数は、自然に、トーラス T = C/Λ の上で定義される。このトーラスは、写像 z ↦ [ 1 : ℘ ( z ) : ℘ ′ ( z ) ] {\displaystyle z\mapsto [1:\wp (z):\wp '(z)]} により、複素射影平面の中に埋め込まれる。 この写像は群同型であり、トーラスの自然な群構造を射影平面へ写す。この写像は、リーマン面にも同型であり、従って、位相的には、楕円曲線が与えられるとトーラスのように見える。格子 Λ が、非零な複素数 c による掛け算により、格子 cΛ へ写されると、対応する曲線は同型となる。楕円曲線の同型類はj-不変量により特定される。 同型類は同じ方法で理解することができる。定数 g2 と g3 は、j-不変量と呼ばれ、トーラスの構造である格子により一意に決定される。しかしながら、複素数の全体は、実係数多項式の分解体を成し、楕円曲線は y 2 = x ( x − 1 ) ( x − λ ) {\displaystyle y^{2}=x(x-1)(x-\lambda )} と書くことができる。 以上のことから、 g 2 = 4 1 / 3 3 ( λ 2 − λ + 1 ) {\displaystyle g_{2}={\frac {4^{1/3}}{3}}(\lambda ^{2}-\lambda +1)} であり、 g 3 = 1 27 ( λ + 1 ) ( 2 λ 2 − 5 λ + 2 ) {\displaystyle g_{3}={\frac {1}{27}}(\lambda +1)(2\lambda ^{2}-5\lambda +2)} であることが分かり、このモジュラー判別式は Δ = g 2 3 − 27 g 3 2 = λ 2 ( λ − 1 ) 2 {\displaystyle \Delta =g_{2}^{3}-27g_{3}^{2}=\lambda ^{2}(\lambda -1)^{2}} である。 ここに λ はモジュラーラムダ関数(英語版)と呼ばれることもある。 注意すべきは、一意化定理は、種数 1 の全てのコンパクトなリーマン面は、トーラスとして実現することができることを意味していることである。 このことは、楕円曲線上の捩れ点を容易に理解することができる。格子 Λ が基本周期 ω1, ω2 ではられると、n-ねじれ点は、0 から n − 1 までの整数 a と b に対し、次の形の(同型類の)点である。 a n ω 1 + b n ω 2 . {\displaystyle {\frac {a}{n}}\omega _{1}+{\frac {b}{n}}\omega _{2}.} 複素数上に、どの楕円曲線も九個の変曲点を持っている。これらの点のうちの二つを通るどの直線も、三つ目の変曲点を通る。九つの点と12の直線はこのようにしてヘッセ配置(英語版)を成す。
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