被積分関数に関する線型性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 16:01 UTC 版)
有界閉区間 [a, b] 上のリーマン可積分関数全体の成す集合は、点ごとの加法 ((f + g)(x) := f(x) + g(x)) とスカラー乗法 ((αf)(x) := αf(x)) のもとでベクトル空間になり、そのような関数に対して積分をとる操作 f ↦ ∫ a b f d x {\displaystyle f\mapsto \int _{a}^{b}f\,dx} はこのベクトル空間上の線型汎関数になる。これはつまり、ひとつは可積分関数の全体が線型結合をとる操作に関して閉じていること、そしてもうひとつ ∫ a b ( α f + β g ) ( x ) d x = α ∫ a b f ( x ) d x + β ∫ a b g ( x ) d x {\displaystyle \int _{a}^{b}(\alpha f+\beta g)(x)\,dx=\alpha \int _{a}^{b}f(x)\,dx+\beta \int _{a}^{b}g(x)\,dx} のように、線型結合の積分が積分の線型結合として表されることを言っているものである。 同様に、測度 μ を持つ測度空間 E 上の実数値ルベーグ可積分関数全体の成す集合は、線型結合について閉じていて線型空間を成し、ルベーグ積分をとる操作 f ↦ ∫ E f d μ {\displaystyle f\mapsto \int _{E}fd\mu } はその線型空間上の線型汎関数、すなわち ∫ E ( α f + β g ) d μ = α ∫ E f d μ + β ∫ E g d μ {\displaystyle \int _{E}(\alpha f+\beta g)\,d\mu =\alpha \int _{E}f\,d\mu +\beta \int _{E}g\,d\mu } を満たす。 より一般に、測度空間 (E, μ) 上で定義され局所コンパクト位相体 K 上の局所コンパクト完備位相線型空間 V に値を持つ可測関数 f: E → V 全体の成すベクトル空間を考えるとき、各関数 f に対して V の元若しくは記号 ∞ を割り当てる写像 I : f ↦ I ( f ) := ∫ E f d μ {\displaystyle I\colon f\mapsto I(f):=\int _{E}fd\mu } で線型結合と両立する(つまり I(αf + βg) = αI(f) + βI(g) を満たす)ものとして、抽象積分を定義することができる。この状況下で、積分が有限(すなわち割り当てられる値が V の元)であるような関数全体の成す部分空間を考えても、線型性は保たれる。このような形で最も重要な特別な場合が生じるのは、K が実数体 R, 複素数体 C 若しくは p-進数体 Qp の有限次拡大(代数体)かつ V が有限次元ベクトル空間であるときであり、また K = C かつ V が複素ヒルベルト空間であるときである。 線型性に、何らかの自然な連続性と、ある種の「単純な」関数のクラスに対する正規性とを併せて考えることにより、積分の別な定義法を与えることができる。このようなやり方をするものに(集合 X 上の実数値関数の場合の)ダニエル積分があり、またブルバキにより局所コンパクト位相線型空間に値をとる関数にまで一般化されたものがある。積分の公理的な特徴づけについては (Hildebrandt 1953) を参照されたい。
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