衛生兵の国際法上の庇護
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 06:26 UTC 版)
1929年にジュネーヴで傷病兵保護条約(ジュネーヴ条約)が結ばれ、衛生兵などは国際法規により保護されることとなった。第6条から第9条にかけて、保護規定が定められている。衛生部隊及びその施設は交戦者によって保護される(第6条)が、害敵行為は保護資格を失う(第7条)。自己防衛や傷病者保護のために部隊が武装している場合(第8条1項)、武装衛生要員不在時に、衛生部隊等が武装部隊によって警備されている場合(第8条2項)、傷病兵より取り上げた武器が所轄機関に未だ引き渡されていない場合(第8条3項)、獣医機関の人員等が衛生施設等の一部分を構成しないで施設を設置している場合(第8条4項)においても、衛生部隊・要員等は保護されるものとされる。第9条において、傷病者の収容・輸送・治療に従事する人員のみならず、事務・看護・宗教要員も捕虜にはされないとされている。 これは、1949年のジュネーヴ諸条約及び1977年のジュネーヴ諸条約第一追加議定書にも、同等の規定が継承されており、諸条約第1条約の第3章及び第4章、第一追加議定書の第8条から第16条にかけて衛生要員の保護が規定されている。 一般的に従軍中は、自衛の為の武器、たとえばせいぜい拳銃1丁と予備弾以外は持つ必要が無かった。また衛生兵は敵側にも身分を示すように、多くの場合ヘルメットに赤十字のマークが(前後左右に)表示されており、加えて“白地赤十字”章入りの腕章を着装していた。第二次世界大戦のドイツ国防軍などでは、衛生兵であることを強調するために非常に目立つ“白地赤十字”章のゼッケンを着用することさえあった。 しかし、第二次世界大戦後半になると戦闘中の混乱等から、衛生兵であっても攻撃を受けることが出始めた。また衛生兵は高度な専門知識が求められるゆえ補充が利きにくい兵科であり、敵側の衛生兵が欠ければ敵側の生存率は下がるため、誤射を装って意図的に攻撃されることも多かったとも伝えられる。 こうした自己防衛の必要性から、衛生兵であっても小銃や短機関銃、手榴弾などの武器を携帯し従軍する事例もある。とはいえ、本来の任務は傷病兵の救護や治療であり、医薬品・医療器具や包帯などを大量に携帯しなければならず、専用のバックパックやポーチなども必要となる。そのため、自衛目的で武装する必要があってもなお、軽量な拳銃を持つ余裕しか無い場合が多い。
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