血縁個体間の相関による推定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/08 08:09 UTC 版)
「遺伝率」の記事における「血縁個体間の相関による推定」の解説
ある表現型に対して血縁個体間の回帰係数と相関係数はどちらも r h 2 {\displaystyle rh^{2}} となり、そのどちらかの係数を求めれば遺伝率を推定することができる。ここでrは血縁係数で、中間親と子では1、片親と子では1/2、全きょうだい(両親が共通)では1/2、半きょうだい(片親のみ共通)では1/4である。ただし中間親と子の相関係数は h 2 / 2 {\displaystyle h^{2}/{\sqrt {2}}} になる。ここで環境が関わる共分散を無視している。 親と子 親と子では、横軸に親、縦軸に子の表現型値をとったときの傾き(回帰係数)から遺伝率を求められる。中間親の場合は傾きがそのまま遺伝率になる。親と子の共通環境による分散が無視できない場合、遺伝率を大きく推定することになる。 きょうだい 全きょうだいでは相関に優性の効果がでるため、遺伝率を過大に推定してしまう。母親による環境相関を除くため、同じ父親と別の母親をもつ半きょうだいの相関がよく用いられる。相関係数は分散計算により求められる。 双子とヒト ヒトでは人為的な交配実験ができず環境の影響を排除しにくいため、環境分散の影響を算出できる双生児法がよく用いられる。分散を遺伝、共通環境、非共通環境に分割することで、遺伝率をより正確に推定できる。ここでは相関係数に対する環境分散の効果を無視しない。 ある表現型に対して、一卵性双生児の相関係数は、全表現型分散に対する共通環境の分散を c 2 {\displaystyle c^{2}} として r M Z = h 2 + c 2 {\displaystyle r_{MZ}=h^{2}+c^{2}} 二卵性双生児の相関係数は r D Z = 1 2 h 2 + c 2 {\displaystyle r_{DZ}={\frac {1}{2}}h^{2}+c^{2}} これより遺伝率は下記のように求まる。 h 2 = 2 ( r M Z − r D Z ) {\displaystyle h^{2}=2(r_{MZ}-r_{DZ})} ここで非相加的遺伝と、遺伝と環境の相関は無視できると仮定している。一卵性、二卵性ともに全きょうだいなので、より正確には非相加的遺伝の影響を無視できず、モデルを修正する必要がある。相加的遺伝、非相加的遺伝、共通環境、非共通環境を考慮するには、一卵性双生児と二卵性双生児の相関だけでは情報が足りないので、非相加的遺伝か共通環境のどちらかを無視することが多い。 ヒトに対しては性格や知能など様々な遺伝率が求められている。性格の遺伝率は性格検査の数値を用いて算出され、知能の遺伝率は知能検査の結果を用いて算出される。精神疾患のように「健康か、病気か」の二分法で考えられる形質に対しても、その背後に潜在的な連続変数があると考え、その変数が閾値を超えると発病するというモデルを用いて、遺伝率が算出されている(閾値モデル)。連続変数は易罹病性(liability)と呼ばれ、正規分布が仮定される。双生児の第1子、第2子の組み合わせで、病気の有有、有無、無有、無無の実数のデータがあれば、前述のモデルから、相関係数(四分相関係数)、遺伝率を算出できる。例えば統合失調症、双極性障害、自閉症などの遺伝率が求められている。
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