血痕鑑定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 16:20 UTC 版)
「弘前大教授夫人殺し事件」の記事における「血痕鑑定」の解説
一方、那須のもとから押収されたズック靴と白シャツを巡っては、さらなる混乱があった。この2つの物証は後に多くの鑑定人の元を行き来することになるが、それらの鑑定を松木に次いで受け持つことになったのが、弘大医学部に包括されながら併存していた青森医専の法医学教室教授、引田一雄であった。那須の逮捕直後の8月24日に医専に持ち込まれた物証について、引田はまずズック靴に対して鑑定を行ったが、松木の鑑定結果に反して血痕は発見されなかった(下表参照)。引田がこの結果を市警に伝えるや、市警は残りの物証を引田の元から引き揚げてしまった。そのため引田は白シャツに関しては肉眼での検査しか行えなかったのだが、その際にシャツに見たのは褪せた灰暗色の汚点で、仮に血であるとしてもかなり古いものであったという(下表参照)。 引田の元から引き揚げられたズック靴と白シャツは、次に国警青森県警本部科学捜査研究所(科捜研)に渡った。しかし、科捜研が9月12日に提出した鑑定書ではまたしてもズック靴から血痕は見つからず(下表参照)、白シャツからはABO式血液型でB型の血液が検出されたものの、これだけではSの血液とも那須の血液とも判別できず、決め手とはならなかった(下表参照)。この間に那須の精神鑑定留置で作られた時間を利用し、地検は再び松木に物証の鑑定を依頼した。松木はある市警技術吏員(鑑識官)を共同鑑定人として10月半ばにズック靴と白シャツの鑑定を行い、両者からはそれまでの鑑定では触れられなかった多数の血痕が新たに発見された(下表ズック靴鑑定・白シャツ鑑定参照)。そして、松木・鑑識鑑定とほぼ同時に、東北大学医学部法医学教室助教授の三木敏行によっても白シャツの鑑定が行われ、この鑑定でもやはり白シャツからは血液が検出された(下表参照)。 決定的であったのは、それらの鑑定で白シャツからQ式血液型でQ(ラージ・キュー)型の血液が発見されたことであった。Sと那須の血液型はABO式でB型、MN式(フランス語版)でM型という点までが共通していた。しかし、Q式ではSがQ型で那須がq(スモール・キュー)型と食い違い、これによって白シャツの血痕はSの返り血であると判断された。
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