蒸気の利用法別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 17:07 UTC 版)
蒸気の利用方法による分類としては復水式と背圧式の2つに大別できる。 背圧式 復水器を持たずに大気圧より高いタービン排気を蒸気のまま他で利用するか、又は大気へ放出する方式である。復水式に比べるとタービン軸から得られる動力エネルギーは小さくなる。タービン排気を蒸気として他で利用できれば総合的なエネルギー利用効率向上が可能であるため、熱や蒸気を多量に必要とする化学工場などの自家発電用として採用される。大気へ放出する方式では排気が80 - 100m/秒と高速なため騒音防止の消音器が必要になる。 真空式(復水式) タービンから出た蒸気を復水器で冷却して凝縮して水に戻す方式である。気体である蒸気が液体である水になることで復水器内は真空に近づき、タービンの排気を引き込む働きをする。このためタービンの回転駆動力を強めて熱効率も背圧式に比べると大きくなり、真空式は背圧式に比べて1.7倍ほどの出力が得られる。真空に近い排気圧まで低圧段の蒸気を膨張させるとそれだけ車室などの構造を大きくしなければならず、しかも真空近くに保つ必要があるのでさらに強度が要求される。車室の他にも復水器や冷却水などプラントが大掛かりとなるので小型・簡便な蒸気タービンでは採用されず、効率が求められる大型プラントで用いられる。発電用や船舶用で広く用いられている。真空式は復水式とも呼ばれる。 また、タービンに圧力の異なる蒸気が供給される混圧式と呼ばれる方式もある。地熱発電で熱水を減圧して蒸気を得るダブルフラッシュサイクルなどに用いられる。 真空式と背圧式のいずれにおいても蒸気の流路に関して以下の工夫がある。 抽気 抽気とは、タービンの段落の途中から他での利用に必要な分だけ蒸気を取り出すこと、またはその蒸気である。背圧式にはすべての段落を通過したタービン排気を利用する方式があるが、抽気ではタービン排気よりも高温高圧の蒸気を利用する。 再熱 タービンで膨張する蒸気を取出しボイラーで再び加熱するもの。熱効率が向上すると同時に低圧タービン蒸気の湿り度が低下するので翼のエロージョン対策としても有効である。
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