色彩変異に関して
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/08 02:45 UTC 版)
「イオウイロハシリグモ」の記事における「色彩変異に関して」の解説
上記のように、この種の色彩は非常に変異にとむ。だが、これらはかつて別種と考えられていた。この属で日本産の標本を元に記載された種名は20あるのに対して、現在認められているのは11種であるが、無効とされた名の多くはこの種関連のものである。 特に厄介なのは、中央を濃い褐色、側方に縦走する白い帯状斑紋を持つ型であった。この型の斑紋を持つものは、標準と考えられた全身茶色の型とは見かけが違いすぎる。しかも、同じ型の斑紋を持つ明確な別種も存在し、そのような斑紋を持つものが別種であって何の不思議もなかったのだ。ただ、種を分類する際に重視される生殖器の形などでもさほど明確な違いを示せず、これらが同種ではないかとの疑問も上がってはいたようだ。 この時点で、以下のような近縁種が挙がっていた。八木沼健夫による初期の図鑑ではイオウイロ・スジブト・スジボケが図示されていた。 D. sulfureus :イオウイロハシリグモ D. hercules :スジボケハシリグモ D. angustivfirgustus :スジボソハシリグモ D. pallitarsis :スジブトハシリグモ D. ohsiditia :オオスジチャハシリグモ 他にイオウイロハシリグモそのものの同物異名がいくつかあるが、それは割愛する。 この問題が大きく方向を変える契機となったのは、中平清の交配と飼育の実験的研究である。彼は八木沼の『イオウイロハシリグモとスジボケハシリグモは同種ではないか』という示唆の元、スジボケハシリグモの持つ卵嚢から孵化した幼生を育て、そこからスジボケ型と共にイオウイロ型の個体を得たのである。更に彼はそれらを野外から採集した個体と交配させ、それらの色彩が個体変異であることを証明した。 このことから再検討が始まり、八木沼は彼の蜘蛛類図鑑の改訂の際に以下のような判断を下した。 上記スジボケ・スジボソ・オオスジチャについてはイオウイロの色彩変異の範疇で、同一種であること。 それまでスジブトとされていたものにはイオウイロの色彩変異個体が含まれているが、スジブトはイオウイロとは別種として存在すること。 ところが21世紀になって改めて見直しが行われた結果、この判断はさらに覆ることになった。その結論は以下の通り。これに関しては、分子系統の情報でも確認されている。 スジボソは独立種。 イオウイロのスジボケ型とスジボソに紛れ、隠蔽種となっていたもう1種が発見された。これは D. fotus ババハシリグモと命名された。 ちなみに、その後同様に色彩変異に関わる分類の混乱とその対応が同科の別属であるキシダグモ属のアズマキシダグモに関しても持ち上がった。これについては該当項を参照。
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