舟_(P-MODELのアルバム)とは? わかりやすく解説

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舟 (P-MODELのアルバム)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/09 15:30 UTC 版)

『舟』
P-MODELスタジオ・アルバム
リリース
録音 Studio WIRESELF
Woodstock Studio
ジャンル テクノポップ
アジアン・テクノ
レーベル 日本コロムビア
プロデュース P-MODEL
P-MODEL アルバム 年表
SCUBA RECYCLE
1995年

1995年
電子悲劇/〜ENOLA
1997年
平沢進関連のアルバム 年表
Sim City
(1995年)

(1995年)
計算上のKun Mae
1996年
ミュージックビデオ
夢見る力に - YouTube
『舟』収録のシングル
  1. Rocket Shoot
    リリース: 1996年10月19日
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(ふね)は、日本の音楽グループP-MODELの10枚目のアルバム。1995年12月9日に日本コロムビアより発売された。初回限定版と通常版が存在し、初回限定版はフィルムジャケット仕様で発売された。2009年3月23日にはオンデマンドCDとして、2011年9月21日にはデジタルリマスタリングされた上、1996年に発売されたシングル「Rocket shoot」収録の3曲が追加されて「舟 (+3)」として再発売されている[1]

概要

1994年12月1日平沢進以外のメンバーが「改訂」(メンバーチェンジ)された後のアルバムで、ポリドールから日本コロムビアに移籍してからの初アルバムである。

1995年9月30日に行われたライブ『ENDING ERROR』にて「Welcome」「Fune」「Tide」がアルバム発売に先駆けて演奏された。同日には本作のリミックスである「Corrective Errors〜remix of 舟」がディスクユニオンDIW/SYUNから発売された。

「サイバー・スペースで出会ったメンバーたちが情報宇宙帆船P-MODEL号で旅をする」というコンセプトのもとに製作されたアルバムである[2]。以降、このコンセプトを受け継いでライブツアーやアルバムを発表していく。

「改訂」について

1993年10月、日比谷野外大音楽堂で開催されたライブイベント「ERROR OF INFORMATION"待機"」をもって、P-MODELはメンバーを『改訂』(再編成)するため『待機』状態に入った。このイベント中、当時所属していたレコード会社・ポリドールとの契約を解除するとともに、1年後に再び同会場で『改訂作業』を完了させ、新体制によるライブを行うことを宣言していた[3]

1994年9月、P-MODELの活動再開は「若干のバグが発見された」との理由により延期され、代替として平沢進によるソロライブ「HIRASAWA ERROR ENGINE 平沢三幕三時間」が開催された。

しかし実際には、メンバー再編に際して平沢は新メンバーの選定に難航していた。1993年の「待機」イベント当日、楽屋にて小西健司が自ら参加の意思を示し[4]、1994年には平沢のソロ活動にサポートとして参加していた上領亘にも打診がなされ、合意に至った。その後も4人目のメンバーは決まらないままであったが、小西がインターネットを通じて福間創と知り合い、福間の勤務先を訪れてP-MODELへの参加を打診した[5]。福間は同年9月に開催された「平沢三幕三時間」を観覧し、その場で平沢との面接を経て、正式に加入することとなった[5]

小西の加入について、平沢は「アマチュアからメンバーを選んで新しいP-MODELを作り上げていく苦労はもうしたくなかったから、願ってもないことでした」と述べている[6]

これにより、P-MODELは福間創(System-1)、小西健司(System-2)、上領亘(AlgoRhythm)による新体制となり、『改訂』作業は完了した。なお、各メンバーに付された「System」および「AlgoRhythm」という肩書については、「System」はキーボード全般の担当、「AlgoRhythm」はビート全般の担当を意味している[7]

ただし当時、P-MODELは新たなレコード会社と契約を結んでおらず、活動の空白期間を避ける目的で、先行アルバム『Corrective Errors〜remix of 舟』がリリースされた[8]

この編成について、平沢は「インターネットがあれば非常にさっぱりとした人間関係が作れるんで、このメンバーは長続きするだろうと思っていました」と語っており、改訂P-MODELはバンド史上最長となる6年間にわたって活動を継続した[9][10][注 1]

制作の背景

1983年に初代キーボード担当の田中靖美が脱退して以降、P-MODELは平沢のワンマン的な色合いが強くなっていたが、本作では新メンバーの小西健司による作詞・作曲の楽曲が過半数を占めており、全体として従来のサウンドとは異質のスタイルを構築した[2]。本作では従来以上に電子楽器の比重が高まっているが、前作『big body』まで多用されていたTB-303などのシンセサイザーやシーケンサー主体の楽曲は影を潜めている。その一方で、アナログシンセサイザーや生ドラム、Miburiなどを取り入れ、同時期に制作された平沢ソロ作品「Sim City」と同じく、東南アジア(特にタイ王国)の影響を受けている[11][2]

平沢は、P-MODELと自身のソロ活動における音楽的な差異について「ソロとP-MODELの音楽的な境界線がどんどんなくなってきている」「当然の流れとして、ソロの作風はP-MODELの作風に近づいてきている」と述べている[12]。それでもP-MODELとしての活動を継続する理由については、「ソロ活動での自分のスタイルが、グループの中でどう料理されていくか」「ほかのメンバーとどういう対比を持てるのか」といった点に希望を捨てられないからと語っている[12]

上領によるドラムパターンは、レコーディング時にエディットを施されることを前提としており、単なる「ドラムス」としての役割にとどまらない意味合いが込められている。平沢はこの点について、「上領は、素材になることを厭わない人であることが大きい。ドラム・ソロなんて、そんなカッコ悪いことはないと言って嫌がるんです」と述べている[6]。また、上領自身も「自分の参加の仕方は、やっぱりスタジオに行って、生ドラムを叩いて、それをいじるってことですよね。オレは平沢さんなり、小西さんなりに、どういじってもらってもかまわないっていう考えがあって。やっぱりコンポーザーが、どういうふうにオレのドラムをとらえて、どういうふうに加工していくのか、逆に楽しみになっているところもありますから」と語っている[13]

楽曲解説

Welcome
後に平沢ソロのアルバム名及び楽曲名として使用される「現象の花の秘密」という単語が歌詞中に登場する。
夢見る力に
イントロに平沢ソロの楽曲「山頂晴れて」の逆再生が挿入されている。
石田英範制作のMVが存在するが、そちらでは作詞・作曲の名義がどちらも平沢となっている。MVは2009年にYouTubeに石田本人のチャンネルにより投稿されている。
Fune
本作では平沢・上領、小西・福間で組(ブランチ)を分け、平沢組は東半球、西半球から航海をするというお膳立てが行われた[7]
楽曲の中に登場する「積み荷」とは、平沢組はスピリチュアルな物、小西組はフィジカルな物を運ぶという意味合いとなっている[6][7]
残骸の船Saksit
「Saksit」はタイ語(綴りはศักดิ์สิทธิ์)で「霊験あらたかな、神聖な」という意味[7]
Tide
初披露したライブ『ENDING ERROR』ではアルバム版と異なるアレンジで演奏されている。

収録曲

  • 全編曲:P-MODEL

全形態共通

# タイトル 作詞 作曲
1. Welcome 平沢進 平沢進
2. 夢見る力に(Power to Dream)」 平沢進、小西健司 平沢進、小西健司
3. Fune 平沢進、小西健司 平沢進、小西健司
4. 残骸の船Saksit(Wreckage Saksit)」 平沢進 平沢進
5. Preparation 小西健司
6. Julia Bird 平沢進 平沢進
7. Tide 平沢進 平沢進
8. ソリトン(Soliton)」 平沢進 平沢進
9. Mirror Image 小西健司 小西健司
10. 3/4 [March 4th] 小西健司 小西健司
11. Home 小西健司

「舟(+3)」のみ収録

# タイトル 作詞 作曲
12. Rocket Shoot 平沢進 平沢進
13. http 小西健司 小西健司
14. はじまりの日(The Day of Beginning)」 平沢進、小西健司 平沢進、小西健司

参加ミュージシャン

脚注

注釈

  1. ^ ただし上領は1997年に脱退したため、以降は3人体制での活動となっている。

出典

  1. ^ Inc, Natasha. “P-MODEL“改訂”期のアルバム復刻、当時のCM映像公開”. 音楽ナタリー. 2025年5月10日閲覧。
  2. ^ a b c 舟 (+3) | ディスコグラフィ | P-MODEL | 日本コロムビアオフィシャルサイト”. 日本コロムビア公式サイト. 2025年5月10日閲覧。
  3. ^ KB SPECIAL 1993年9月号 NO.104 p.24(立東社)
  4. ^ 改訂復刻版音楽産業廃棄物 (ブッキング社) p.87
  5. ^ a b 改訂復刻版音楽産業廃棄物 (ブッキング社) p.90
  6. ^ a b c 改訂復刻版音楽産業廃棄物 (ブッキング社) p.42
  7. ^ a b c d KB SPECIAL 1996年1月号 NO.132 p.21(立東社)
  8. ^ J-ROCK Magazine Vol.55(ジェイロックマガジン社)p.100
  9. ^ 改訂復刻版音楽産業廃棄物 (ブッキング社) p.92
  10. ^ index”. web.archive.org (2001年2月24日). 2025年5月10日閲覧。
  11. ^ P-MODELディスコグラフィー・舟|平沢進 Susumu Hirasawa (P-MODEL) Official site”. susumuhirasawa.com. 2025年5月10日閲覧。
  12. ^ a b KB SPECIAL 1996年1月号 NO.132 p.22(立東社)
  13. ^ 改訂復刻版音楽産業廃棄物 (ブッキング社) p.88

外部リンク


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