自発的表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 22:24 UTC 版)
五段活用動詞の「未然形+さる」、上一段・下一段活用動詞の「未然形+らさる」で、共通語には存在しない自発的表現となる。一部の特定の動詞で用いられることが多く、「進んでそうしようと思っているわけではないが、状況が自動的にそうしてしまう」という心情を表せる。また、道具を主語に据えた際の道具そのものの性質・状態を表現するという意味では、中間構文としての性質もある。 この本面白くて、どんどん読まさる。 - この本が面白いので、どんどん読んで(読めて)しまう。 この塩辛旨くて、ご飯たくさん食べらさる。 - この塩辛が旨いので、ついご飯をたくさん食べてしまう。 この表現の否定形もよく使われる。正しい活用は「〜(ら)さらない」となるはずだが、こう言うことはまずなく、口語ではほぼ「〜(ら)さんない」と発音される。意味は逆になり「進んでそうしようと思っているのに、状況が悪いのでそうならない」心情を表す。 窓が開(あ)かさんない。 - (開けようとしているのに)(凍っているから)開けられない。 このペン書かさんない。 - (書こうとしているのに)(インクが切れているから)書けない。 このスイッチ押ささんない。 - (押そうとしているのに)(壊れているから)押せない。 共通語の「開けられない」「書けない」では、「しようとしているのに」の補足なしでは、「自分にはできない」という不可能の意味と同じになってしまうが、北海道方言の自発的表現「〜さらない」では「自分が悪いのではなく、対象物が悪い」の意味が内包されているため非常に便利であり、多くの場面にこの表現が当てはめられる。例えば、「この鉛筆、書かさらない」、「電気が消ささらない」。 またその逆に、人に向かって注意を喚起する際、この表現を用いれば「誰が悪いとは言わないが、対象物がそうなっている」という意味合いが出せるため、相手にあまり負担を感じさせずに言うことができる。「あの部屋、誰もいないのに、ストーブ焚かさってるよ。」「この値段、20%引かさってないんですけど。」
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