脂肪酸の動員
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 07:39 UTC 版)
生物がエネルギーを取り出すために利用する脂肪酸やグリセロールは、脂肪細胞に貯蔵されたトリアシルグリセロールなどのエステルから得る。トリアシルグリセロールは細胞中に脂質滴として凝集しているため、細胞質の浸透圧を上げることなく存在でき、また水和もされない。また同じ質量のたんぱく質や糖質の2倍以上の完全酸化エネルギー(有機物を二酸化炭素と水まで酸化したときに得られるエネルギー)を持っている。このようにエネルギー貯蔵物質としては極めて優れているが、その水に対する極端な不溶性は酵素によって代謝される際に障害となる。脂質滴のトリアシルグリセロールをエネルギー生産のために各組織(骨格筋、心臓、腎皮質など)に運ぶ際は次の手順が踏まれる。 ホルモン感受性リパーゼが脂質滴の表面に移動する。 リパーゼによりトリアシルグリセロールが加水分解され、脂肪酸が遊離する(リン脂質はホスホリパーゼにより加水分解される) 血液中に出た脂肪酸が、可溶性タンパク質である血清アルブミンと結合し、不溶性が打ち消される。 血流に乗って筋組織などに運ばれ、血清アルブミンから遊離した脂肪酸が脂肪酸トランスポーターから細胞内に取り込まれる。 このように各細胞に取り込まれた後、脂肪酸の活性化、β酸化を経て、アセチルCoAが生成されるのである。
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